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社是とは?社訓・経営理念との違いや事例を紹介

2022/10/06(最終更新日:2022/11/10)

#インナーブランディング #コミュニケーション #ビジョン #事業承継 #会社経営

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社是とは?社訓・経営理念との違いや事例を紹介

目に見えない企業の資産を重要視する経営の在り方が注目されている背景もあり、「社是を作り、組織改革につなげたい」と考える経営者の方も多いのではないでしょうか。社是の定義を今一度見直して、企業の利益につながるものを作ることは、より良い組織を育成するための重要な一手になります。

当記事では、社是の定義と作る際のポイントを解説します。作った社是を有効に活用して職場の活性化を図る方法も紹介するため、時代の流れに即した経営を実現したい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

 

社是・社訓とは?

社是(しゃぜ)とは、企業を経営していく上での基本方針や主張を示すためのツールです。「是」は「正しい」「道理にかなった」などの意味を持つ文字であるため、社是には、企業として「正しい」と考える方針や主張を含みます。

社是の類義語は、ミッションです。ミッション・社是はいずれも従業員の精神的な拠り所として機能し、より良い組織作りや働きがいの創出に貢献するツールと言えます。

一方の社訓とは、従業員の行動規範や働く上でのモットーを示すためのツールです。「訓」は「教える」「さとす」などの意味を持つ文字であるため、社訓は、従業員に対する創業者や経営者の教訓・戒めとしての役割を果たします。

なお、業種や事業形態によっては社是や社訓を以下の言葉に置き換えることも可能です。

  • 店舗:店是・店訓
  • 事務所:所是・所訓
  • 教育機関:校是・校訓
  • 医療機関:院是・院訓

いずれの言葉を使用する場合にも、根本的な概念は同様です。業種や事業形態に応じて適切な言葉を選択し、社是や社訓を作りましょう。

社是や社訓は時代や扱う商品・サービスの変化に合わせて、見直し・変更されることもあります。 社是や社訓の見直しと合わせて組織改革を実施し、時代の需要に沿う経営を目指すとよいでしょう。

 

社是・社訓と経営理念の違い

社是と社訓は、メッセージの対象が異なります。社是は、従業員・社外関係者(外部ステークホルダー)の両方に向けて発信するメッセージです。一方の社訓は、従業員に向けたメッセージとして作ります。理念を重視した経営を実践するにあたって欠かせない「経営理念」は従業員に向けたメッセージであるものの、社是とは、異なる特徴を持つ概念です。

下表は、社是・社訓・経営理念の主な違いを示します。

⚪︎社是

対象
  • ・従業員
  • ・ステークホルダー
特徴
  • ・社内外に向けて企業としての理想の在り方を示すことが目的
  • ・多くの場合は箇条書きなどを使用して、コンパクトに作成

⚪︎社訓

対象
  • ・従業員
特徴
  • ・社内に向けて従業員の行動規範などを示すことが目的
  • ・多くの場合は「せよ」「すべきだ」などの命令形で作成

⚪︎経営理念

対象
  • ・従業員
  • ・ステークホルダー
特徴
  • ・社内外に向けて企業活動の目的や社会における存在意義を示すことが目的
  • ・表現方法は企業によってさまざま

社是・社訓・経営理念には細かな違いがあるもののいずれも、社内外に向けたブランディングをサポートする企業の資産として機能します。ブランディングとは、企業そのものや行っている事業が「なぜ社会に対して必要か」を明確に示し、世の中に広く認知させることです。

社内外に向けたブランディングについてより詳しく知りたい方は、以下のセミナーへの参加もぜひご検討ください。

ブランディングセミナーの詳細はこちら

ブランディングとは?事例やメリットを分かりやすく解説!

 

有名企業の社是5選

「社是を作りたい」と考える経営者の中には完成形を具体的にイメージできず、悩む方も多くいます。社是の完成形をイメージするためには、有名企業の創意工夫をこらした事例からヒントを得る方法がおすすめです。

以下では、社是を作る際に参考にできる事例5つを紹介します。

 

セブン&アイ・ホールディングス

セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニ・総合スーパー・銀行など、暮らしに根付くさまざまな製品・サービスを扱う企業です。セブン&アイ・ホールディングスでは以下の社是を作り、お客様に対する誠実さをアピールします。

◆セブン&アイ・ホールディングスの社是

私たちは、お客様に信頼される、誠実な企業でありたい。
私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。
私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい。

引用:セブン&アイ・ホールディングス「社是」引用日2022/09/07

セブン&アイ・ホールディングスの社是には、従業員に対する企業の行動方針も含まれる点が特徴です。セブン&アイ・ホールディングスでは社是に基づく活動として、女性活躍支援やワークエンゲージメントの向上施策に取り組みます。

 

日本経済新聞社

日本経済新聞社は新聞事業を中核として、雑誌・電子メディア・映像などによる情報発信も手掛ける総合メディアカンパニーです。以下は、日本経済新聞社の社是を示します。

◆日本経済新聞社の社是

中正公平、
わが国民生活の基礎たる経済の
平和的民主的発展を期す

引用:日本経済新聞社「ブランド」引用日2022/09/07

日本経済新聞社の社是は、戦後の時代の経営者が作ったものです。「中立公平」の言葉には「事実に基づく合理的な視点を持って報道し、経済の発展に貢献する」ことに対する使命感が込められており、企業の指針として機能しています。

 

ライオン

ライオンは、オーラルケア・ビューティケア・リビングケア用品や薬品などを手掛ける企業です。ライオンでは「今日を愛する」の企業スローガンのもと、消費者のより良い未来につながる習慣づくりを応援するため、さまざまな商品の開発・販売を行っています。

◆ライオンの社是

わが社は、「愛の精神の実践」を経営の基本とし、
人々の幸福と生活の向上に寄与する。

引用:ライオン「アニュアルレポート2018」引用日2022/09/07

ライオンの社是は「わが社」から始まっており、「人々の幸福・生活の向上を支援しよう」という企業文化を明確に示しています。

 

三菱重工業

三菱重工業は世界的なものづくり企業として、民間航空・輸送・機械・インフラ産業などをリードする企業です。以下は、三菱重工業の社是を示します。

◆三菱重工業の社是

一、顧客第一の信念に徹し、社業を通じて社会の進歩に貢献する
一、誠実を旨とし、和を重んじて公私の別を明らかにする
一、世界的視野に立ち、経営の革新と技術の開発に努める

引用:三菱重工業「経営理念・ビジョン」引用日2022/09/07

三菱重工業の社是は第4代経営者の考えをベースとして、企業の基本方針と理想とする将来像・従業員のあるべき心構えを凝縮した内容です。「経営の革新と技術の開発に努める」の言葉には、「時代の変化に対応しつつ常に前進していきたい」という想いが込められています。

 

キユーピー

キユーピーは、「良い商品は良い原料から生まれる」という考えのもと、豊かで安全な食生活と健康づくりを応援する企業です。キユーピーでは以下の社是により、企業として追求する目標を示します。

◆キユーピーの社是

楽業偕悦

引用:キユーピー「理念」引用日2022/09/07

楽業偕悦とは、「仲間とともに仕事を楽しみ、結果として得られた成果を分かち合う」精神を重視した創業者の言葉です。キユーピーでは社是をもとに労働環境を整備しており、従業員が連携しやすく多様な働き方が認められる組織作りに挑戦しています。

 

有名企業の社訓2選

社訓には従業員に向けたメッセージが含まれているため、いくつかの事例を見ることで、社是を作る際のヒントを得られるでしょう。また、有名企業の社訓を見ると、仕事との向き合い方を改めて検討するためのきっかけを得ることが可能です。

以下では、社是を作る際の参考にできる有名企業の社訓2つを紹介します。

●ワタミ

ワタミは外食・宅食事業を中心として、農業や環境事業も展開する企業です。近年ではワタミは宅食のテレビショッピングなど、革新的な事業にも取り組んでいます。

◆ワタミの社訓

  • 一、笑顔で元気よく挨拶せよ
  • 一、約束を守れ、嘘はつくな
  • 一、全てに感謝せよ
  • 一、常に謙虚なれ
  • 一、恥ずかしいと思うことはするな
  • 一、努力を継続せよ、あきらめない努力は、信用を生み、信用は奇跡を生む
  • 一、他人の喜びや悲しみを共有せよ

引用:ワタミ「ワタミグループの理念」引用日2022/09/07

ワタミの社訓は創業者の想いをもとに従業員に対し、「地球でもっとも多くの感謝をもらえるグループになる」といった趣旨のスローガンを達成するための行動指針を示しています。

●ヤマトホールディングス

ヤマトホールディングスは日本で初めて宅配便を開始し、運送業界をリードしてきた企業です。

◆ヤマトホールディングスの社訓

  • 一、ヤマトは我なり
  • 一、運送行為は委託者の意思の延長と知るべし
  • 一、思想を堅実に礼節を重んずべし

引用:ヤマトホールディングス「グループ企業理念」引用日2022/09/07

「ヤマトは我なり」は従業員に対して、企業を代表してお客様と接していることを自覚し、責任ある行動を取るように促す言葉です。「思想を堅実に礼節を重んずべし」は常に周囲に配慮して行動し、自己啓発に励むことを促しています。

 

社是を作る際のポイント3つ

ただ闇雲に社是を作っても、企業の利益にはつながりません。意識すべきポイントを正しく把握した上で社訓を作ることが、社是を有効に機能させるためのコツとなります。

ここからは、世の中に響く社是を作るために意識したい、重要なポイントを3つご紹介します。

 

特に重視している会社の価値観を軸にする

社是はさまざまな事業を進行する上での軸になるものであるため、企業として特に重視している価値観や考え方を反映し、作ることが基本です。企業として特に重視している価値観などを絞りかねる場合は、以下の項目に関する回答を書き出して整理しましょう。

  • 何のために企業を経営しているのか
  • 将来的にはどのような企業に成長したいか
  • 企業として社会に提供できる価値は何か
  • 企業に所属する従業員は何のために働くのか

すでに経営理念がある企業では普遍的かつ重要な項目のみを取り出し、社是を作る方法もおすすめです。取り出した企業理念の文章が長い場合はより端的な表現を検討し、見る人が記憶しやすい社是を作りましょう。

 

1つにまとめる

極端に長いもしくは複雑な社是は、見る人の心に響きません。心を動かす社是を作るためには企業の価値観や考え方が凝縮された表現を使用し、1つにまとめる方法がおすすめです。

社是を1つにまとめることには、以下のメリットも期待されます。

  • 時代が変化しても普遍的なものとして、継承されやすくなる
  • 従業員や社外関係者の安心と信頼につながる

シンプルな言葉で想いを継承することにより、社内外から安心・信頼を得られる可能性が高まります。結果として社是を、ビジネスをより良い方向へ導くための原動力として機能させることが可能です。

企業によっては1〜2文字の漢字によって、企業としてもっとも重視している価値観や考え方を表現します。価値観の似ている企業からシンプルな言葉でまとめる社是のヒントを得て、作る作業を進めることもよいでしょう。

 

外部への発信も意識する

作った社是は、企業の玄関・会議室に掲げたりホームページ・会社案内に掲載したりすることで外部に発信します。そのため、社是を作る際には社外への発信も意識して、内容や表現を決めることが大切です。

投資家の中には社是を読み、企業の信頼度を図る人もいます。金融機関の融資担当者にとって社是は、経営者の人間性や企業の信頼度を把握するための重要な資料です。社是を作る際には外部ステークホルダーが意思決定を行う際の資料として機能するものであることを意識して、表現や内容を検討しましょう。

 

社是を浸透させる3つの方法

どれほど良い社是を作っても従業員に浸透させなければ、企業の利益につながりません。社是を浸透させるためには必要性・具体性・継続性を意識して、訴求していくことがポイントです。以下では、社是を浸透させるための訴求方法をポイント別に詳しく解説します。

(1)必要性の訴求

研修で従業員を教育する際には「なぜ社是を作ったか」背景から説明し、共感させることが重要です。そして、従業員が日頃から社是の必要性を意識できる環境を整備し、前向きな行動を促しましょう。以下は、社是の必要性を意識させるために行える環境整備の例です。

  • 社内アンバサダーをつくる
  • 社是を理解する研修や勉強会を行う
  • 部署ごとに社是に即した行動ができているか集計する
  • 社是を記載したカードや手帳を携帯させる
  • 社是の必要性や意味を盛り込んだパンフレットを作成して、配布する

作成後はまず、経営者自ら社是の意図や重要性を説明する場を設けることが必要です。

(2)具体性の訴求

社是の必要性をどれほど訴求しても仕事へのいかし方が分からなければ、従業員は、具体的な行動を起こせません。経営者自らが手本となる行動を取り、企業としての方向性や理想とする従業員の働き方を具体的に示す取り組みが必要です。

(3)継続性の訴求

社是を浸透させるためには従業員に対して、企業として重視する価値観や考え方に沿う行動を継続してもらう必要があります。従業員の行動を継続的に変化させるためには、現状の人事評価制度を見直し、社是の内容に連動するものへとブラッシュアップを図りましょう。周囲の手本となる従業員を表彰する制度を策定することも、職場のモチベーションアップにつながり、継続性の訴求に役立ちます。

 

まとめ

社是とは社内外に対して、企業として重要視する価値観や考え方を明確に示すツールです。社是を作る際には外部へ発信することも意識しつつ、創業者や経営者がもっとも重視する価値観や考え方を、1〜2文字の漢字や四字熟語などで表現する必要があります。

なお、社是を作って浸透させ、より良い組織を育成するためには、ブランディングの概念を理解しておくことも大切です。社内外に向けたブランディングについて深く知りたい方はぜひ、イマジナの無料セミナーにご参加ください。

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