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事業譲渡による従業員への影響|退職金の取り扱いも解説

2022/06/08(最終更新日:2022/06/14)

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事業譲渡による従業員への影響|退職金の取り扱いも解説

事業譲渡を行う場合、事業の売却と同時に従業員も譲渡先会社に転籍させ、手放すことになります。事業譲渡は行いたいものの、これまでともに働いてくれた従業員の行く末や処遇が気になるという方も多いでしょう。

この記事では、事業譲渡によって起こる従業員との関係性の変化や、従業員への影響を解説します。また、事業譲渡の際に重要となる従業員への退職金についても併せて触れます。事業譲渡と従業員への影響について把握し、譲渡元会社・譲渡先会社・従業員の三者にとってよりよい事業譲渡を行うための準備を進めましょう。

 

事業譲渡に伴う従業員との関係性の変化

事業譲渡とは、会社の一部もしくは全部を他者に売却することで譲り渡す方法です。事業譲渡はM&Aの一種であるものの、合併・株式譲渡・会社分割などによる他のM&Aとは異なり、会社の権利義務は包括的には承継されません。会社の権利義務の中には、資産や負債だけでなく、人的資源である従業員も含まれています。

事業譲渡の場合、従業員との契約についても承継されないので、譲渡先の企業は譲渡元の従業員と転籍承諾書を取り交わし、個別に契約を結び直すことが必要です。そのため、事業譲渡の場合は合併などとは異なり、従業員全員が確実に譲渡先で働くとは限りません。譲渡先に転籍するのは自然な形ではあるものの、従業員が転籍を拒否する可能性があります。譲渡元会社への愛着や労働条件への不満など、拒否する理由はさまざまです。

事業譲渡によって従業員と譲渡先会社が契約を結び直す際には、従業員の処遇について3つのパターンが考えられます。

 

譲渡先に転籍して働く

譲渡先会社・譲渡元会社・従業員の三者から合意が得られた場合、従業員はそのまま譲渡先に転籍して働くことになります。譲渡先・譲渡元会社の間で合意が取れていても、従業員が拒否すると転籍は成立しません。

人的資源である従業員が転籍を拒否すると譲渡先会社の価値が落ちる可能性があります。また、場合によっては人材の流出によって事業譲渡そのものが失敗する恐れもあるので、譲渡先会社としては可能な限り従業員に転籍してもらうのが望ましいでしょう。

転籍の場合、一般的には譲渡元会社と同様の労働条件で雇用契約を結びます。ただし、契約から一定期間経過後、従業員の能力などを鑑みた上で労働条件の見直しを行う方法が多くの企業で取られています。

 

譲渡元で継続して働く

事業譲渡を行っても、譲渡元会社はなくなりません。譲渡先会社での労働条件を飲めない場合、従業員は転籍を拒否した上で、譲渡元会社に残って働くことも可能です。

ただし、事業譲渡後には企業の規模が縮小されているケースや、当該従業員がもともと働いていた部門と類似した部門が存在しなくなるケースもあります。そのため、残留を選んだ従業員の経験を生かした仕事ができなくなる場合や、給与・待遇などの労働条件が変わる場合があります。配置換えなどの対処法を取ることは可能なものの、対処が根本的な問題解決につながらない場合も少なくないでしょう。

譲渡元での契約を継続する場合、契約内容を入念に説明した上で従業員の合意を得ておき、不満の原因を解消することが重要です。

 

会社を退職する

従業員には、譲渡先でも譲渡元でも契約を結ばず、会社を退職するという選択肢もあります。会社側から従業員に退職を促す場合、希望退職を募る方法と会社都合の退職、つまり解雇を行う方法がありますが、解雇はあまりおすすめできません。事業譲渡の場合、解雇の際の手続きは譲渡元で行います。解雇には手間や時間がかかる上、解雇予告手当を支払う必要があり、譲渡元の負担が増大します。

希望退職を募る場合は、退職金の増額といった条件を提示し、従業員に自発的な退職を促す方法が主流です。ただし、希望退職を募る場合も、極端な条件を提示すると実質的に解雇したとみなされることがあるので、転籍や退職の条件設定は慎重に行いましょう。

 

事業譲渡に伴う従業員への影響

従業員の転籍が成立するかどうかにかかわらず、事業譲渡は従業員を取り巻く状況にさまざまな変化をもたらします。いずれも、従業員の今後のキャリアを左右する変化ばかりです。ここでは、事業譲渡に伴う従業員への影響について、主なものを解説します。

●労働条件の変化

転籍が成立した場合、従業員は新しい条件のもとで働くことになります。新しい条件と言っても、譲渡元と同条件で契約が結ばれることが多い一方で、一定期間の経過後に改めて労働条件が変更されることも少なくありません。給与が下がる場合もありますが、譲渡元の経営状態がよくない場合、転籍することで条件が好転する可能性もあります

譲渡元に残留した場合も事業譲渡によって譲渡元の状況も変化しており、従業員が事業譲渡前と同様の労働条件で働くことは難しくなるでしょう。

●職場環境の変化

譲渡先に転籍すると、従業員はそれまでとは社風・企業文化・人間関係などが異なる環境の中で働くことになります。職場環境の変化が及ぼす影響は、職場と従業員の相性にもよります。

新しい職場に馴染めない従業員はモチベーションが低下する恐れがあり、場合によっては退職につながることも考えられるでしょう。反対に転籍先の職場環境がよい場合には、転籍前より能力を発揮できるケースもあります。

譲渡元に残った場合も当該従業員が元いた部門がなくなるなど、職場環境は少なからず変化しています。環境の変化に影響を受けずに働くのは難しいでしょう。

●キャリアパスの変化

転籍・残留・退職のいずれであっても、事業譲渡によって従業員のキャリアパスは変化します。譲渡元でも譲渡先でも、それまでとは従業員を取り巻く組織のあり方が大きく変わるためです。転籍した譲渡先が大手企業の場合、キャリアパスが広がり、キャリア形成がしやすくなるケースも見受けられます。

 

事業譲渡の際に従業員への退職金で注意するべき点

事業譲渡の際に問題となるのが、従業員への退職金に関する規定です。ここでは、事業譲渡を行う際に退職金にかかわる注意点を紹介します。

●退職金の精算規定

従業員が譲渡先会社に転籍した場合でも、退職金の精算については譲渡先ではなく譲渡元の規定を適用します。債務を譲渡先が引き受ける場合でも同様です。

●勤続年数に応じた所得税の控除金額の違い

退職金にかかる所得税は控除を受けられますが、勤続年数によって控除金額が変わります。控除金額の計算式は以下の通りです。

勤続年数 計算式
20年未満

40万円×(勤続年数)

ただし、80万円に満たない場合は80万円とする

20年以上 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

(出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

 

控除金額は勤続年数が長くなるほど大きくなるものの、事業譲渡で転籍すると勤続年数はリセットされます。たとえば勤続30年の場合、控除金額は「800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円」です。ところが同じ勤続30年でも、譲渡元で15年働き、その後転籍した譲渡先で15年働いた場合、勤続年数は15年とカウントされます。勤続15年の場合は「40万円×15年=600万円」となり、勤続30年の場合と比べると控除金額が大きく下がります。

●勤続年数の取り扱い

勤続年数が転籍によってリセットされると、従業員にとっては不利になりがちです。ただし、「所得税法第30条に係る所得税基本通達30-10」に基づいた対応を行うことで、転籍の前後の勤続年数を通算できるようになります。勤続年数を通算するためには、譲渡先の退職給与規定で転籍前の勤続年数をカウントする旨を定めなければなりません。

(出典:国税庁「法第30条《退職所得》関係」

 

まとめ

事業譲渡を行う場合、譲渡対象の部門で働く従業員には、譲渡先会社に転籍して働く・譲渡元に残留する・退職するという3つの選択肢があります。いずれの選択肢が取られた場合も、労働条件や職場環境などの変化が従業員に対して少なからず影響を与えます。

特に、転籍した場合の退職金や勤続年数に関する決まりは複雑です。退職金や勤続年数を考慮せずに事業譲渡を行った場合、退職金の支払い時などに従業員が不満を持ってしまう恐れがあります。これまで働いてくれた従業員を保護するためにも、譲渡先会社と入念に協議を行い、必要な措置を講じましょう。

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