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環境問題をブランディングにつなげた花王の取り組み

2020/08/27(最終更新日:2020/11/24)

#ブランディング事例

ブランディング

環境問題に対する取り組みが世界で活発になっているが、日本企業はまだこれからという印象をうける。その中でも花王は特別な取り組みを行い、ブランドを形づくっている。日本企業の環境問題への向き合い方を、花王を例に考えていきたい。

あらゆる業界で進むサステナブル・シフト

今年7月1日より、全国でプラスチック製買物袋の有料化がスタートした。スーパーやコンビニをはじめとした小売店において、レジ袋がすべて有料化された。
政府の広報サイトを見ると「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。」とある。とても身近な観点での改革であるため、すでに多くの人がその変化を体験しているのではないだろうか。
今、日本に限らず、世界中で環境問題を考えた取り組みが盛んになっている。政府の取り組みもそうであるし、企業も様々な活動を行っているのだ。
これは消費者に身近なブランド、すなわちBtoCブランドがより熱心に行っているかもしれない。自動車業界ではEV車をはじめとして「脱ガソリン」が近年のテーマであるし、ファッション業界もエコをテーマに事業活動を行っている傾向にある。
グッチやサンローランを傘下に収めるフランスのケリングのCEOはメディアで、「ラグジュアリー・ファッション業界のサステナビリティとイノベーションへの転換は、資源に限りのあるこの世界において必要なことというだけでなく、絶好のビジネスチャンスであるとも考えています」と述べている。
大量生産大量消費が常識の業界であるため、環境問題に関しては消極的かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。先進企業ほど、この機会をチャンスと捉えているようだ。

課題の多いものの、伸びしろが多くある日本の現状

「サステナブル・シフト」とも言われるこの世界の潮流のなか、日本はどうだろうか。率直に言うと、まだこれからのような印象を受ける。
ドイツのベルテルスマン財団と、「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」という組織は、今月6月末、各国の国連持続可能な開発目標(SDGs)達成状況を分析したレポート「SDG Index and Dashboards Report」の2020年版を発行した。
これによると、日本は166ヶ国中17位。昨年は15位で、2017年の11位から下落傾向にある。
いくつかの指標があるなか、特に日本の課題として挙げられているのは、気候変動、海洋・陸上の持続可能性といった項目だ。先進国の中では決して高い順位とは言えず、また下落傾向にあるため、決して良い状況にあるとは言えないだろう。
世界では今、グローバルに活動を行う企業であればあるほど、環境を考えていない、すなわちサステナビリティをないがしろにする企業に対して厳しい目線が向けられている。しかし反対に言えば、独自の活動を行うことでプラスのイメージを醸成でき、ブランドを形づくることができると言える状況なのだ。

日本古来の価値観を、ESG戦略の根幹に据えた花王

誰もが知る花王は、そういった意味において先進企業である。花王は人間と環境を考える取り組みとして、昨年2030年に向けたESG戦略「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を発表した。
「キレイ」というから国内だけの取り組みと思いきや、そうではない。「キレイ」とは外面だけでなく、内面も含めた清潔感、秩序のある、こころの豊かな生活を表す。それは一人ひとりの気持ちのありようだけでなく、環境も含めた地球全体の「キレイさ」を追求するための取り組みでもあるという。
「キレイ」という言葉を選んだ理由は、ここ数年、多く欧米人が東洋哲学魅力を感じるようになっていることが背景にある。「キレイ好き」といった言葉に表されるように、日本人は自然との絶妙な距離感を保ちながら、環境と自分自身を大切にしている。そういった文化とも言える側面をESG戦略の真ん中に置き、ブランド戦略を実施しているのだ。
環境問題は、企業にとっては追加の予算をとって取り組んだり、活動を制限しながら行ったりするイメージがあるが、花王の場合はそうではない。日本古来の価値観を、現代の環境問題に結びつけて自社のブランドにまで昇華しているところに深い戦略性がある。これは素晴らしいアイディアであるとともに、日本企業だからできる環境問題へのアプローチ方法を示唆しているのではないか。

まとめ

環境問題は多くの企業にとって重荷になりがちな問題であるが、避けては通れない。そんななか花王のアイディアは、多くの企業にとって参考になるのではないか。日本だからできる対策があるし、日本だからブランドに変えることもできる。私たちだからできる解決策を、積極的に見つけていきたい。

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