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企業活動において、その企業に合った適切なビジョンを据えている企業は、従業員の行動の方向性が一致するため、未来の成長確率もより高まるでしょう。
- ビジョンの言葉の意味や、ミッション・バリューとの違いがあまり分かっていないから理解したい
- ビジョンをメンバーに浸透させる方法や、ビジョンの作り方が知りたい
- 企業がビジョンを掲げる意義はそもそも何なのか?
本記事では上記のようなお悩みをお持ちの方に向けて、主にビジネスの場で使用される「ビジョン」に関して、その意味や重要性などをご説明いたします。
ビジョンとは?
「ビジョン」という言葉は、様々な場面・語法で使用されますが、ビジネスシーンにおける「ビジョン」について、精選版 日本国語大辞典では以下のように定義されています。
ビジョン
将来に対する見通し。未来像。理想像。展望。構想。
(引用:精選版 日本国語大辞典「ビジョン」)
基本的には、将来に向けてのありたい姿・あるべき姿を、明文化したものがビジョンと言えます。企業単位・個人単位、ともに使用される言葉ですが、どちらも行動の方向性を定めるステートメントとして活用されることが多いです。
個人のビジョンと組織のビジョン
個人のビジョンは、「自分自身がどう成長していきたいか」「自分の価値観を元に、どういう人間になっていきたいか」という部分に焦点が当てられることが一般的です。現在は働き方が多様になっており、キャリア形成の方法も幅広いことから、自分の核となるビジョンを持っておくことは非常に重要と言えます。
一方で組織のビジョンは、会社の経営理念や存在意義とともに語られる・設定されているケースがほとんどです。企業のビジョンは、社外に対して企業の目指す未来を明示でき、対社内においても行動や考え方の方向性を示すことができるため、企業規模を問わず、どの会社も設定することが好ましいと言えます。また一度定めて終わりではなく、社会の変化に合わせてアップデートすることも、時には重要です。
企業理念・経営理念との違い
企業理念(経営理念)は、創業者や経営者の価値観・思いが込められているもの、といった意味合いで使用されることが多い傾向です。一方でビジョンの場合は、創業者や経営者など個人の理念ではなく、「会社全体の方向性」によりフォーカスして設定されることが多くなっています。
ただし、企業理念とビジョン(もしくは後述する「ミッション」)は、似ている言葉ではあるものの、明確な違いがあるわけではありません。実際に、企業理念とビジョンのどちらかを掲げる会社・企業理念をビジョンの意味合いで掲げる会社もあれば、両方を掲げている会社もあります。
【参考例(ソフトバンクグループ)】
経営理念
情報革命で人々を幸せに
ミッションとの違い
ミッションは、「任務・使命」といった言葉が示す通り、その企業の存在価値・社会的使命を指すことが一般的です。基本的には、ミッションを達成するための下位概念として「ビジョン」が設定されることが一般的となっているものの、企業によっては「ビジョン→ミッション」といった流れで設定されているケースもあります。
企業が活動する・存在する意味を示したステートメントとして、多くの企業が採用している考え方です。
【参考例(メルカリ)】
ミッション
新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る
(引用:メルカリ「私たちについて」)
バリューとの違い
バリューは、「価値」「価値観」という意味合いの言葉です。ミッション・ビジョンを達成するための、より具体的な行動ベース・価値観ベースで記されることが一般的となります。
ミッションやビジョンが1つ(ないしは数個)であるのに対し、バリューは複数設定されている企業も多いです。
【参考例(合同会社ユー・エス・ジェイ)】
OUR VALUES(私たちの姿勢)
SAFETY FIRST 安全を最優先します
TEAM PLAYERS チーム一丸となります
DO THE RIGHT THING 正しいことをします
INNOVATORS 新しいことに挑戦します
DRIVE RESULTS 結果を出します
VALUE OUR COMMUNITY 社会に貢献します
MAKE AN IMPACT 相手の心を動かします
HAVE FUN! とことん楽しみます!
ビジョンを掲げる重要性
企業活動において、ビジョンを掲げることはインナーブランディング・アウターブランディングを成功させる上でも非常に重要です。ただし、ただ掲げるだけでは効果を成しませんので、社内にビジョンをしっかり浸透させることが大切です。
社内にビジョンを浸透させるための施策についてもっと知りたい方はぜひ無料のブランディングセミナーへ
ここでは、ビジョンを掲げる重要性を「会社の進む方向性を示せる」「行動・決断の判断軸になる」という2軸から解説します。
会社の進む方向性を示せる
ビジョンを掲げることで、会社の進む方向性を社内・社外に対して明確にすることが可能です。
対社内向けのメリットとしては、社員のコミットメントを向上させたり、今持っている業務に対しての意味付けが行いやすくなったりすることが挙げられます。特に自分自身のビジョンと、企業のビジョンが重なっていれば、その分日々のモチベーション向上にも繫がりやすいでしょう。
対社外においても、お客様の印象が向上したり、投資家における投資先選定の判断軸になったり、採用活動において求職者に向けてもポジティブな影響を与えられたりと、様々なメリットが挙げられます。
行動・決断の判断軸になる
ビジョンがあることで、経営判断から現場レベルの細かい業務まで、行動や判断に迷った際において、「ビジョン」が一つの判断軸となります。例えば従業員を指導する際にも、ただFBするだけでなく、「この行動は、会社の~~というビジョンに反してしまう行動だよね」といったようにビジョンと紐づけて伝えることで、より説得力のあるものに変わります。
ビジョンが企業の中での共通認識・共通言語となっていくことで、より円滑なコミュニケーションに繫がり、社内折衝の際にもポジティブに働くでしょう。
ビジョンを浸透させるためのプロセス
ビジョンは経営層が発信することはもちろん、社員に浸透させ、社員自身がそのビジョンを体現・発信できるように整えていくことが重要です。これは、スタートアップの会社から老舗企業まで、全企業に共通して言えることとなります。
ビジョンを社内に浸透させることを目的として、【理解→共感→具体化→実践→協働】といった流れを意識し、具体的な計画を練ってみましょう。
理解
まずは、従業員に対してビジョンの存在を認知させ、理解を深めてもらうことが大切です。特に規模が大きい会社の場合は、どうしても他人事になってしまう従業員も少なくないですが、自分事として考えられるような工夫を行うとよいでしょう。
経営トップからメッセージを出したり、部署ごとの朝礼でこまめに周知するなど、露出機会を多くすることも大切なポイントです。
共感
従業員にビジョンの存在を認知・理解させると同時に、そのビジョンに「共感」してもらえるように働きかけていかねばなりません。
その際、ただステートメントだけを浸透させるのではなく、ストーリーに落とし込んで伝えることが重要となります。従業員が納得感を持てるように、ビジョンが設立された背景や、経営層の思い・お客様への思いなど、イメージしやすい内容と併せて浸透させましょう。
具体化・実践
ビジョンを、日々の業務に落とし込む・関連付けるために、具体的な行動ベースに落とし込んでいくことが大切です。形式的なもので終わってしまうと、「でも、結局今の仕事は何も変わらないよね。」といったように、掲げるだけのビジョンになってしまいます。
従業員がビジョン達成に向けて行動・実践しやすくなる一番オーソドックスな方法は、評価項目・評価指標と連動させることです。評価がミッション・ビジョン・バリューと紐づいていることで、各従業員の業務・行動が自然と同じ方向を向いていくようになるでしょう。
協働
しっかりとビジョンが浸透し、従業員それぞれがビジョンに基づいた行動ができるようになると、社内の協働意識がより高まっていきます。このフェーズになれば、例えば従業員からロールモデルを募集し、対社内・対社外に向けて共に発信していくことも有効です。
ビジョンを体現している人を評価したり、社内報に取り上げたりと、他部署を巻き込んだ協同方法で、より強固なインナーブランディング・アウターブランディングを進めていきましょう。
ビジョンマップとは?
インナーブランディングを進めるにあたって、社長や経営層が「ビジョンマップ」を創ることも有効です。
ビジョンマップとは、「未来図」のようなイメージで、まずは社長が青写真を描き、そこに役員・社員の思いを加えながら、一枚の絵にまとめていく方法です。マップのようにデザインとして可視化されているため、描いた未来を実現するために「何が必要で何が不足しているか」「社長と社員の思いにギャップはあるかどうか」といったことが明確になります。
実際にイマジナでは、企業様のインナーブランディングを支援する際に、最初に未来像を描くことから始めてもらっています。ビジョンの策定や、ブランディングに悩まれている際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
企業のビジョンの事例
最後に、企業のビジョンの事例を具体的に紹介します。
ビジョンの中には「社会や世の中から求められていること」を含めることが大切です。その上で、社員がワクワクできるようなストーリーまで落とし込めたら、ビジョンの達成可能性はより高まるでしょう。
dentsu
an invitation to the never before.
ここは、多様な人々がオープンに集まる場所。
誰もが、どこからでも、イノベーションを起こすことができる場所。
創造力と実現力を融合することで、無限の可能性が生まれる場所。
そして、まだ誰も見たことがない景色を、見ることができる場所。
さぁ、起業家精神あふれる世界中の挑戦者とともに。
未知の世界へ、ようこそ。
an invitation to the never before.
(引用:dentsu「About Us ビジョン&バリュー」)
dentsuのビジョンは、スローガンのような文体で定められています。日本の大手広告代理店として、イノベーション溢れる仕事を創出していく、といった内容がしっかりと伝わるビジョンです。
このビジョンを達成すべく、dentsuでは「WHY]「WHAT」「HOW」、および「The 8 ways to the never before」と名づけられた「行動指針」も設定されています。
三井物産
Mission
世界中の未来をつくる
大切な地球と人びとの、豊かで夢あふれる明日を実現します。
Vision
360° business innovators
一人ひとりの「挑戦と創造」で事業を生み育て、社会課題を解決し、成長を続ける企業グループ。
(引用:三井物産「三井物産について 経営理念」)
三井物産のビジョンは、社会に対して自社がどう貢献していくか、どういう企業でありたいか、といった内容がシンプルに定められています。また、「360° business innovators」とキャッチーに表現されていることで、社内・社外にも浸透しやすいことが考えられます。
また、バリューとして4つの価値観も設定されており、企業の経営理念としても王道な「ミッション・ビジョン・バリュー」の形態を採用していることが特徴です。
IKEA
「より快適な毎日を、より多くの方々に」というイケアのビジョンはお客さまに向けたものですが、イケアのコワーカーやサプライヤーとして働く人々にも向けられています。
(引用:IKEA「ビジョンとビジネス理念」)
IKEAのビジョンは、「イケアの存在理由を伝えるもの」として明示されています。また、それを達成すべき目標として「ビジネス理念」も、以下のように定められています。
「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々にご購入いただけるようできる限り手ごろな価格でご提供すること」
ビジネス理念のほうは、ビジネスに落とし込んだより具体的な内容となっていることが特徴です。「手ごろな価格」を実現すべく、保管コストや輸送コストを下げるために企業努力を行っていることが分かります。
マイクロソフト
Our Mission
地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする
マイクロソフトは、モバイル ファースト&クラウド ファーストの世界におけるプラットフォームとプロダクティビティのリーディング カンパニーで、「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとしています。
日本マイクロソフトは、この企業ミッションに基づき、“Transform Japan, Transform Ourselves” を掲げています。
お客様に寄り添いながら、日本の社会変革に向けたデジタルトランスフォーメーションを推進し、日本経済の再生や日本社会の活性化に貢献します。
(引用:マイクロソフト「Mission & Culture」)
日本マイクロソフトの場合は、親会社と連動したミッションが設定されています。「ビジョン」としては明示されておらず、「Mission & Culture」として構成されている点が特徴です。
企業の理念を定める際は、必ずしも「ミッション・ビジョン・バリュー」の形式に沿っていなくても構いません。特にマイクロソフトの場合は、5つのカルチャーが分かりやすく一言で設定されており、数も5つとそこまで多くないので、従業員にも浸透しやすいことが考えられます。
中小企業の例
中小企業の例として、大阪市にある健康雑貨・美容雑貨等の企画製造卸を事業としている「株式会社アルファックス」では、ビジョン(経営理念)として、「プロとしての創意工夫を発揮して開発した商品を通じて、人々に夢と便宜を供して社会に貢献し、会社の継続的な発展と社員の生活の向上を目指す。」
と定めています。この会社では、「会社の基本方針」として「信条」「社是」「経営理念」の3つを設定している形です。
また、福井県でアルミ外装建材の製造販売などを行う「井上商事株式会社」では、ビジョンを「人を大切に、独自の優れた製品やサービスを創造し顧客満足を追求し続ける事で、人財成長ナンバーワン企業になる。」
と定めています。この会社では、「経営理念」「ビジョン」「品質方針」「行動指針」が公開されています。
(引用:井上商事株式会社「会社案内」
このように、会社の経営理念やビジョンの内容、および構成は多種多様です。自社に合った構成で、自社らしいビジョンを設定していくことが大切と言えます。
まとめ
ビジョンは、企業が創造していきたい未来を指します。ミッションやバリュー、企業理念、経営理念と似たような用語は多々ありますが、基本的にはミッションを達成するためのものとして掲げるケースが多いです。
社長や企業経営者の方は、会社の未来像をしっかりと社員に伝えなければなりません。ビジョンがしっかりと浸透し、社員と共有できることで、結果的に企業文化の醸成にも繫がります。
現在の仕事だけに注力することがないよう、未来を描くという大切な試みもしっかりと行っていきましょう。