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カゴメ・ヤッホーブルーイングの取り組みから考える、「ブランディングには共感が大切」の、本当の意味

2021/05/13(最終更新日:2021/09/10)

#ブランディング事例 #ブランド構築

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ブランディング

先日、カゴメのある決断が話題となった。それは企業経営に必ずしもプラスにならない判断であったが、多くのファンを創出することにつながっている。

今、消費者は何を見ているのか。時代が大きく変化する中で求められるブランディングを、カゴメとヤッホーブルーイングの例から考えてみたい。

消費者を味方につけた、カゴメの勇気ある決断

先日、ケチャップなどトマト関連商品を扱うカゴメの発表が話題となった。それは、製品の原料であるトマトに関して、中国ウイグル自治区で生産・加工されたものは使用しないと明言したのだ。

カゴメはソース類の原料に使うため、トマト生産量世界1位の中国から、ウイグル自治区で生産・加工されたペーストを輸入している。しかしウイグル人への人権侵害への批判が世界で高まっている現状を受け、2020年中に輸入を停止。輸入済みの原料も2021年中に使用を終えるという。

政治問題に関して、このような形で企業が意見を表明するのは珍しい。安いトマト加工品が使えなくなるのは原材料の高騰を招き、最終価格の値上がりにつながる可能性があるが、SNS上では「カゴメの判断を支持します」「きちんと自分たちの意見を表明したのはすごい」といった好意的な意見が見られた。

興味深いのは誰も「カゴメの価格が上がりそうで嫌だ」とは言っていない点にある。消費者自身にマイナスの影響を与えるかもしれない判断を、ポジティブに受け止めたのだ。

 

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企業としての姿勢や思想が、いっそう重要になっている

この現象を見て、時代は変わっていると改めて感じた。

これまで消費者が気にしていたのは「どれだけのものが、いくらで手に入るか」という商品の質と価格であった。言い換えれば、商品の質と価格に関係ないファクターは、消費者は購入の判断軸にいれない(商品を購入する時に、経営者がどんな顔をしているとか、新卒採用で毎年何人採用しているかといった情報はまず気にしない)。

 カゴメがウイグル自治区の問題をどう捉えているかは、商品の価値にまったく関係がないため、消費者にとっては本来は不要な情報である。しかし今回の一件で、カゴメを支持する人や、わざわざSNSにカゴメの商品を購入すると書き込む人が現れたのだ。

 これは自分たちが手に入れる商品そのものの価値を見ているのではなく、企業としての姿勢や思想を見ていることの証左となるだろう。とても大きな変化ではないだろうか。企業がどのようなことを考えているのか。何を目指しているのか。そのような情報をもとに、消費者が商品を吟味する時代になったのだ。

「トータルに支持できる」ブランドをつくっているか

例えば最近では、環境問題への関心が日本全体で高まっており、アパレルをはじめとした生活雑貨や消費財の分野では、「サステナビリティ」「エシカル」といった言葉を使うケースが増えてきた。これは消費者が「環境のことを考えている企業から商品を買いたい」と思っているからである。

一昔前までは、大量生産・大量消費が是とされ、どれだけ様々な機能をつけられるか、どれだけ安くできるかといった指標が大切にされていた。

しかし、今は違う。消費者の意識が大きく変化し、「みんなが欲しがる商品」は幻想となり、各々がバラバラの価値観を持つ時代となった。

そのような時代において、消費者が見ているのは企業の姿勢であり、想いなのだ。もちろんこれは、商品の品質が担保されている前提の話なのだが、どんなに品質がよくとも企業や商品のブランドイメージが悪ければ購入されないこともある。このような現象はよく「共感」といった言葉で表されるが、生産から販売まで、トータルに企業のブランドを支持できるか(支持したいと思えるブランドか)が、本当に大切になっているのだ。

 

【人が集まる企業には訳がある。集まる理由をつくるブランディングについてもっと知りたい方はこちら

ブランディングとファンマーケティグで成長する、ヤッホーブルーイング

「共感」を軸に飽和市場で成長を続ける企業に、「よなよなエール」や「水曜日のネコ」などのクラフトビールを製造するヤッホーブルーイングがある。同社は味があったり、デザインや名前が可愛かったりと個性的なビールを創出しているが、実はそのブランディングの根幹には「共感」がある。

コーポレートサイトを見ると、「画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出することでビールファンにささやかな幸せをお届けしたい。それがヤッホーブルーイングのミッションです」とある。

面白いのは、メーカーでありながらも、エンドユーザーと積極的に交流を図っているところだ。同社が開催する「よなよなエールの超宴」では、ビールを味わいながらビール文化に触れ、スタッフやファン同士で交流する。2015年に約500人でスタートしたが、2018年には5,000人規模にまで拡大したというから驚きだ。

ビールといえば大手市場が独占し、趣向の多様化や少子化で縮小市場というイメージがある。しかし、「新たなビール文化を創出したい」というミッションを歓迎する人々も存在するのだ。ヤッホーブルーイングのブランディングは、まさに企業の姿勢に共感する人々に支えられているといってもいい。人々の想いや気分をうまくすくい上げ、企業の姿勢に反映することで、成長を実現しているのだ。

おわりに

品質だけでは差別化できない時代である。これは言い換えれば「結果」だけでは差別化できない時代である、といってもいいだろう。

「共感」や「ファンを作る」といった言葉は当たり前のように使われているが、それは「過程を大切にする」ということでもある。消費者は企業の姿勢、商品が生まれる過程を大切にしているのだ。

時代は大きく変化している。ブランディングの基本は企業の姿勢や想いにあることを、今一度思い出したい。

弊社では、「ブランドは社員からつくられる」という考えのもとインナー・アウターの両面へのブランディングを手がけている。『社員も顧客も魅力的に感じるブランドづくり』について学べる無料ブランディングセミナーを対面とオンラインで定期的に開催しているため、ぜひお越しいただきたい。

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