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従業員満足度(ES)とは?
従業員満足度(Employee Satisfaction=ES)とは、待遇や福利厚生、マネジメント、職場環境、働きがいなどの要素で計測される従業員の満足度のことです。従業員満足度は離職率や生産性などに影響を与えます。社会全体で働き方改革への機運が高まるにつれて、社員から自社へのまなざしも厳しくなっており、従業員満足度はますます重要な考え方となっています。
従業員満足度を高める要素
従業員満足度は以下の要素で高めることができます。
- 企業ビジョンへの共感
- 評価制度への納得
- やりがい・貢献度
- 職場環境の快適度合い
企業によってすでに実現できている要素、できていない要素はそれぞれ
あるはずです。自社に足りないものは何かを思い浮かべながら、読み進めていくと良いでしょう。
企業ビジョンへの共感
企業ビジョンへの共感がある社員は、会社に対する帰属意識が高いです。企業のビジョンを社内で共有すれば、会社への帰属意識が強まり、日々の業務も「やらされている」と感じず、自発的に貢献しようとする気持ちが湧いてきます。
ただし、ビジョンの押しつけは満足度低下の原因となるため注意が必要です。あくまで従業員の自発的なコミットメントを促すように意識しましょう。場合によってはビジョンを見直す必要があります。企業の掲げるビジョンは、その企業の社会提供価値や存在意義を軸に、周りが共感し応援したくなるものに設定します。
評価制度への納得
どれだけ企業ビジョンに共感を示し、内発的動機付けによって業務に取り組んでいても、正当な評価が得られなければせっかくの自発性も挫かれてしまいます。しかし評価制度に納得していれば、会社に貢献した見返りが期待でき、働きがいも生まれます。そして、呼応するように従業員満足度も上昇します。
企業の掲げるビジョンと評価制度に矛盾があってはいけません。ブランドを形にし、ビジョンが明確になったら、それを評価制度に反映させていく必要があります。例えば、会社が何か大きな挑戦をすると決めたのに、評価制度で社員の挑戦を評価できていなければ、社員はビジョンを体現できません。
ビジョンに向かう行動をとっている人が、きちんと評価されるような制度設計にしていくことが、企業にとって重要になります。
やりがい・貢献度
「自分の仕事が社会に貢献できている」と感じられれば、仕事に意義を見いだすことができます。そのため社員に仕事と社会の接点を感じてもらうために、一人ひとりの仕事が、顧客からどのような印象を持たれているのか、社会にどのような価値を提供しているのかを可視化する仕組みをつくりましょう。
職場環境の快適度合い
職場環境には、福利厚生やライフワークバランス、職場の人間関係などが含まれます。福利厚生の充実やライフワークバランスの実現は私生活での満足度を高め、結果として会社に対する評価がアップし、従業員満足度の向上につながります。
給与や待遇などの金銭的報酬だけでは社員の一時的な満足度にしかつながりません。日々の業務に対するやりがいなどの非金銭的報酬によって、長期的な視点での社員満足度向上が達成できるのです。
また、お互いに刺激しあい、学びを得られるような良好な人間関係を社内で構築することによって、従業員満足度を上げることができます。
従業員満足度を高めるメリット
従業員満足度を高めると以下のようなメリットにつながります。
- 離職率の低下
- 従業員定着率の向上
- 業務生産性の向上
- 顧客満足度・業績アップ
ポイントは従業員満足度を高めることによって、中長期的なメリットを享受できることです。たとえば従業員定着率が向上すると、教育体制が安定し、優秀な人材育成される好循環が生まれます。
では、以上の点を踏まえた上で、それぞれメリットを詳しく解説していきます。
離職率の低下
内閣府が2017年に行った「子供・若者の意識に関する調査」によると、初職の離職理由は1位の「仕事が自分に合わなかった」に次いで、「人間関係が良くなかった」「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかった」が上位でした。
先に見たとおり、良好な人間関係やワークライフバランスの実現など職場環境の快適さは、従業員満足度に大きく影響します。したがって職場環境の快適さを高め、従業員満足度を向上させることは、離職率低下に直結するのです。
従業員定着率の向上
離職率が低下すれば、従業員定着率は向上します。従業員が安定して定着するようになると、人材採用のコストや教育コストが削減できるため、その分全体の生産性も高まります。また、優秀な人材の流出を抑えることによって、会社の業績の安定化にもつながります。
業務生産性の向上
従業員満足度が向上すると、仕事へのモチベーションも高まります。モチベーションが高い従業員は効率的に業務に取り組むため、生産性が高いです。またモチベーションが高い従業員同士はコミュニケーションも活発なので、連携が強化され、業務生産性に相乗効果を与えます。
顧客満足度・業績アップ
従業員満足度が高い企業の社員は、会社に対する愛着や自社製品・サービスへの理解度も高いです。そのような社員は会社の顧客を大事にし、自社製品の説明にも説得力が生まれます。結果として顧客満足度も向上するのです。
さらに三菱UFJ リサーチ&コンサルティングが2016年に行った研究報告(厚生労働省委託)によると、評価制度の見直しやワークライフバランス実現のための取り組みを早くから行っている企業ほど、業績が増加傾向にあることが分かりました。
以上のように、一見業績とは関係なさそうな従業員満足度ですが、中長期的な視点に立つと盤石な会社づくりを下支えする重要な要素なのです。
従業員満足度の調査方法
従業員満足度の調査は主にアンケートを通して行われます。具体的な流れは以下の通りです。
- 調査目的を明確にする
- 質問項目の設計
- 回答を依頼
- 回答の集計・分析
- 経営層へ報告
- 社員へフィードバック
- 向上に向けた施策の実行
- 定期的な調査
1~8は必ずしも一方通行的なステップではありません。「8.定期的な調査」によって施策がうまくいっていないことが明らかになれば、「4.回答の集計・分析」や「2.質問事項の設計」に立ち戻る必要があります。
それでは各手順を詳しく見ていきましょう。
調査目的を明確にする
まずは調査目的を明確にしましょう。何のために調査するのかがはっきりしていなければ、調査結果の有効活用が行われず、ただアンケートを採っただけという状況になってしまいます。さらにアンケート調査が職場改善に反映されていないと分かると、社員の不満を増長しかねません
質問項目の設計
質問項目は最初のステップで定めた調査目的に対応したものを用意しましょう。調査目的と質問事項に対応関係がない場合、どこをどう改善すれば良いのかがぼやけてしまいます。そのような事態を避けるためにも、質問事項の設計の際は「この質問は何のために行うのか」「質問項目同士に関係性はあるか」といったことを吟味しましょう。
また、「不満があるところを教えてください」というような質問の仕方ではなく、「どうすればもっと良くなると思いますか?」というようなポジティブな印象を与える表現にした方が効果的です。ネガティブな質問は、それだけで従業員に自社のネガティブなイメージを想起させてしまうからです。
回答を依頼
質問事項の設計を終えたら実際に回答を依頼します。いきなり回答してもらうのではなく、あらかじめ「アンケートを実施すること」や「調査目的は何か」「どのように活用していく予定か」といったことを説明しておくことが重要です。
おそらく誰でも、アンケートに適当に答えたという経験があるでしょう。モチベーションが無ければ当然です。だからこそ、事前説明によってアンケートに答えるモチベーションを引き出す必要があります。十分な動機付けによって行われた回答は有効性が高く、調査結果もより実態に近いものとなるのです。
回答の集計・分析
回答期間が終了したら、集計・分析を行います。アンケートの集計・分析法は大きく分けて以下の3つです。
- 単純集計
- クロス集計
- 満足度構造分析
単純集計は設問ごとに集計を行います。会社の強みなどを把握できる点は便利ですが、具体的な改善策を練るのには大雑把すぎます。
課題を浮き彫りにするにはクロス集計が役に立ちます。クロス集計では回答者の属性(性別、年代、部署、役職など)に分けて集計を行うため、性別による満足度の違いや、役職ごとのギャップを把握できます。部署ごとに満足度の差が激しい場合、部署間連携に問題があるのではないかと課題が見えてくるでしょう。
満足度構造分析は満足度の度合いごとに、設問間でどのような相関関係があるのかを分析します。たとえば「総合的に満足度が高いグループの回答にはどのような一般傾向があるのか」を調べることによって、従業員満足度を高めるための手がかりを掴むことができます。
経営層へ報告
分析結果とそれに基づいた施策が決まったら、経営層に報告します。そして、施策実行の是非の確認を取るようにしましょう。
社員へフィードバック
経営層への報告を終えたら、次は社員にもフィードバックを行います。集計結果や分析によって明らかになった課題点、今後の大まかな方針などを周知しましょう。
せっかく社員にアンケートに答えてもらって、集計したのにもかかわらず、その結果や改善施策を社員に報告することを怠ってしまうと、社員からの印象が悪くなってしまう可能性があります。
向上に向けた施策の実行
従業員満足度向上のための施策は、調査からあまり時間をかけずに実行に移しましょう。会社の状況は刻々と変化しているので、対策が遅れてしまうとアンケート実施時点とは別の問題点が生じている可能性があるためです。調査・分析により導き出した施策の効果を最大化するためにも、迅速な行動が欠かせません。
定期的な調査
施策を実行に移したあとは、実際に効果を上げているのかを定期的に調査する必要があります。なお再調査の際は、記述式の質問事項を用意して社員のリアルな声を集めると良いでしょう。施策の浸透度がより明確になります。
期待していた成果が得られなかった場合は、分析に問題があるか、質問事項の設計ができていない可能性があります。会社独自で行っていたのならば、外部リソースを利用することも検討しましょう。
従業員エンゲージメントとはどう違うのか?
従業員満足度と混同しやすい言葉に、「従業員エンゲージメント」と呼ばれるものがあります。従業員エンゲージメントとは、従業員の自発的貢献の度合いや、会社にどれだけ愛着を抱いているかを示す指標です。
従業員満足度と従業員エンゲージメントはどちらも、「離職率の低下」や「業績アップ」につながる点で共通しています。しかし両者は、アプローチの仕方に違いがあります。つまり同じメリットを追求するとしても、従業員エンゲージメントでは「会社と社員の結びつきの強化」を通じて行い、従業員満足度では「満足度アップ」によって行われるのです。
アプローチの仕方の違いは、アンケートの質問項目に顕著に表れます。両者の特徴的な質問例は以下の通りです。
【従業員エンゲージメント調査の質問例】
- 仕事を探している友人や知人、親族に自社を勧めたいですか?
- 仕事をしていると時間が経つのを早く感じますか?
- 組織全体における戦略目標を理解していますか?
【従業員満足度調査の質問例】
- 昇進や昇級の頻度は適切だと感じますか?
- コンプライアンスは守られていますか?
- 勤務時間や残業時間は適切だと感じますか?
取り上げた質問以外では、重なるものもあります。しかし、待遇や労働条件に関する質問は、従業員満足度調査の方が多く見られます。対して従業員エンゲージメント調査では企業との関係性を問う質問が多いです。
従業員エンゲージメントについてより詳しく知りたい方は、「従業員エンゲージメントとは?重要性や高める方法について解説」の記事を参考にしてください。
まとめ
従業員満足度を向上させると、「離職率の低下」や「業績アップ」など多くのメリットを享受できます。そのため社員定着率が低かったり、業績が伸び悩んでいたりする企業は、従業員満足度向上に取り組むべきだと言えます。
とはいえ、目先の利益にばかり囚われていけません。従業員満足度の向上は、あくまで社員によりよい職場を提供することに主眼を置くべきです。「社員と向き合うこと」を怠った会社は、結果としてうまくいきません。
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