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ブランディングにUXデザインという視点を-三和交通の事例から考える

2021/04/23(最終更新日:2021/04/23)

#ブランディング事例 #ブランド構築

ブランディング

コロナ前後で消費者行動は大きく変化している。このような状況下において、リアル・デジタルを問わず、ブランドを高めていく上で大切なことは、体験の前・中・後のすべてを含めて「UXをデザインする」ことではないか。三和交通の事例を踏まえ、これからの時代のブランディングについて考えていきたい。

消費者行動に、明確な変化が生じている

 3月からオリンピックの聖火リレーが始まったが、開催が延期になった昨年とは、世の中の情勢や経済環境は大きく変化している。リモートワークが定着し、自宅で仕事をすることが当たり前になり、オンラインショッピングを活用していなかった人は活用するようになった。リアルの消費行動においては、体験型のサービスが活況になっているのも見逃せないだろう。

 例えばANAは、昨年末から自宅で旅行気分を味わえるオンラインツアーを始めた。このツアーに申し込むと、事前に地方の名物や地元の日本酒などが送られてきて、当日には地方の観光地のライブ中継を見ながら擬似旅行ができる企画だ。

 またオンラインツアーとは別だが、国際線のエコノミークラスで提供している機内食のネット販売を始め、すぐに完売となったのも記憶に新しい。この企画は予想をはるかに上回る注文があり、これまでに26万4000食を販売し、3月時点で約2億円の売上となったというから驚きだ。

 あえて機内食を注文するということが、アトラクションなのだろう。食の体験をエンターテイメント視点で捉えている好個の例だと思う。

リアルの世界でも“UX”が重要になってきた

 このような状況を見ると、今後はオンラインで買えるものはオンラインで、リアルでしかできないことはリアルで、という棲み分けがより強くなっていくように思う。感染症への警戒とEコマースの発展により、消費者は時間とお金の配分に思考を巡らせながら行動するようになる。

 そのときに大切になるのが、“UX”のデザインである。UXとは、「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略称で、「ユーザー体験」と訳されることが多い。

人々の消費が「モノからコトへ」と言われて久しいが、UXを考える作業は、このコトを考える作業に近い。ここ数十年で、日本はモノで溢れかえり、モノ自体の魅力では差別化がしづらくなった。その頃から重要視され始めたのが、「モノをとりまくコト全体」の価値だ。

 UXはデジタルマーケティングやIoTの文脈からでてきた言葉なので、スマホの画面をはじめとしたユーザーとの接触面を表す“UI(ユーザーインターフェース)”と同列で扱われる場合が多い。

 しかし、UXは体験と訳される通り、包括する意味範囲がUIよりはるかに広い。Webサービスやスマホアプリにおいては、使いやすさ、使い心地の良さのみを取り出してUXと言うことがあるが、これは厳密には間違いである。UXはサービスの利用前・中・後までを包括するものだからだ。

 ディズニーランドを例に考えてみる。ディズニーランドは、来園前からワクワクし、訪問中は楽しく、訪問後は「行って良かった」と、その余韻に浸る。体験の前・中・後のあらゆる場面で高得点を叩き出すため、ディズニーランドはUX的に非常に優れたコンテンツだと言えるだろう。

 これまで「サービスの質を上げる」というと、利用中の状況のみがフォーカスされてきた。しかし消費行動の変化に伴い、体験の前・中・後、つまり全体の体験がより重要視されていくものと考えられる。UXをどうデザインするのかが、ブランドイメージと売上を変えるのだ。

逆転の発想でブランディングを行う三和交通

 このUXの発想をサービスに取り入れ、ブランディングに活用している事例がある。三和交通のタートルタクシーというサービスだ。

 タートルタクシーとはなんと、「遅く走るサービス」である。「ゆっくり」ボタンを押すと、運転手にその旨が伝わり、ゆとりを持って走るという形になっている。

 タクシーの乗客は例外なく急いでいるのでは?と思うが、アンケートをとると意外にも約7割の乗客が「別に急がなくてもいい」と考えていたそう。そこからヒントを得て生まれたのが、本サービスだ。

 ゆっくり走ることはエコドライブにもつながる。早く動くという「ムダ」を削減し、心にゆとりを持ち、エコに貢献する体験ができるのだ。乗客は単にタクシーに乗ったという事実以上の余韻が残るから、まさにUX思考を取り入れていると言えるだろう。

 この他にも三和交通は、タクシードライバーが黒子の格好で業務をする「黒子のタクシー」や、多摩地区の新選組のゆかりの地を探る「THE 新選組ツアー~多摩編~」といった企画を催したり、YouTubeでの動画配信やニコニコ生放送などを行っている。

 この話を聞くと、タクシーを使うときは予約をしてでも三和交通にしたいと思う人もいるのではないだろうか。タクシーに乗るという行動は、絶対にオンラインに置き換えられない究極の「リアル」。三和交通は、リアルの体験を充実した「コト」に昇華することで、ブランドを作っているのだ。

まとめ

 体験の充実と言ってしまえば簡単だが、UXの発想は、これまでのような「おもてなし」とは異なる。これからはおもてなしの枠を超えて、三和交通のような発想が、すべての企業に求められるのではないか。

 この発想の転換は、自社にも応用できる。自社のサービスをどうすれば魅力的にできるのか。考えて行動することが、ブランド価値の向上につながっていく。

 弊社では、「コト」という付加価値をどう「モノ」につけていくのか、というブランドづくりをしている。コロナ禍で社内に向き合う時間が増えたからこそ取り組むべき、『社員も顧客も魅力的に感じるブランドづくり』について学べる無料ブランディングセミナーを対面またはオンラインで定期的に開催しているので、ぜひお越しいただきたい。

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