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言葉を伴わない「音」を企業のグローバルブランディングの核にする

2015/04/27(最終更新日:2021/12/20)

前回は、4月から音と色が日本でも商標として認められるようになったという話から、日本と海外のブランディング要素の違いを文化や地政的違いという面から考えてみた。

 

その中で、今回は「音」を使ったブランディング、それも歌のように言語つきの音ではなく、言語を伴わない音について考えてみたい。

不思議なもので、言葉を伴わない「音」というのは個人の文化的バックグラウンドによらずかなり共通の「感覚」を人々にもたらすようである。例えば、何かをフライパンで調理するときにでる「ジュ―ッ」という音を耳にすれば、アメリカ人でも日本人でもフランス人でも、おそらく多くの人が「何かおいしそうな音がする」と感じて、何かしら楽しい気分になる(あるいは楽しい気分を思い起こす)であろうし、黒板を爪で「キーッ」と擦る音は、実際聞かずに想像しただけでも国籍問わず多くの人が身の毛のよだつような感覚を持つはずだ。

 

また、「音」を使うと後天的、かつ意識的に、ある音を耳にしたときの「感覚」を脳に植え付けることができる。これは、餌を与える前にベルの音を犬に聞かせることを続けると、その犬はそのうちそのベルの音を聞いただけで涎を出すようになる、というあの有名な話を想像すれば理解できるであろう。

 

もちろん視覚に対しても、文字、色、絵、デザイン、写真などで同様の「感覚」を人に与えることは可能だが、「体感」できる感覚として「音」のパワーは視覚的な感覚のパワーを上回ることがある。

 

言語を伴わない音が商標として認められてきた海外のブランディング例を見てみると、マクドナルドのCMの最後に流れるメロディー、ウィンドウズを立ち上げたときに流れる効果音、Intel搭載のハードウェアのCMの最後の効果音(日本では「インテル入ってる」という言語音声を伴うが、本国アメリカでは画面に文字はでてくるとはいえ、言語は発せられず効果音しか流れない。)など、多くのみなさんご自身のなかに文字通り浸透しているものばかりではないだろうか。

また、上記のような「音楽的」な音でなくとも、たとえば(どこまでが商標として認められるかは別として)、「高級車のドアを閉める音」、「ビール瓶の栓を開ける音」、「たこやきの焼ける音」など、文字通りの「音だけの音」は言語を超えたグローバルなブランディングの強力なツールになる。

 

企業独自のブランディングのために開発した「音」を耳にした者は、文化的背景(人種、言語、年齢、国籍など)に関わらず、共通にその音から発信者である企業を連想することができるようになる。まだ言葉がわからない赤ちゃんの時から継続してそのブランド特有の「音」を刷り込むことも可能だ。CMソングのようにアーティストのブランドイメージが先行したり、歌の内容とブランドに全く連動がないということもなくなる。結果として企業と音との一対一対応を伴う市場におけるブランド認知・浸透が可能だ。

 

日本でも商標登録が認められたこの機会に、日本企業は全世界のマーケットにおいて統一した「音」を今まで以上にさらに意識的に採用し、多様なバックグランドをもつ世界の消費者のみならず、自社の海外拠点の社員に対しても、自社ブランドをさらに効果的に発信・浸透させていくことが、日本企業が業績と企業価値をグローバルレベルで今後大きくアップさせていくことが必要になってくる。

 

次回はもう一つの重要なブランディング要素である「香り」について考えてみたい。

筆者プロフィール
野田大介
コンサルタント

 

略歴 
神奈川県生まれ 神奈川県立七里ガ浜高等学校
立教大学 理学部 数学科卒。
The University of Alabama MBA
経営大学院修了

 

14年半の米国在住後帰国。MBA修了後、米国にて建設会社でプロジェクトマネジャー、化粧品会社にて米国支社長、帰国後マーケティングリサーチ会社勤務。

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