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東ティモール紹介レポート『東ティモールで女性が活躍する理由』

2015.07.06

#Hot HR ニュースイマジナインターン責任編集

【特集】東ティモール紹介レポート 『「女性が一家の大黒柱?」ー東ティモールで女性が活躍する理由』

このレポートは21世紀最初の独立国である東ティモール(※1)において著者が所属する学生団体HaLuz(※2)が実施したプロジェクトや生活の中で学んだ現状をご紹介するシリーズである。今までのバックナンバーは下記リンクにて紹介している。

 

→東ティモール紹介レポート バックナンバー ←

 

この連載を見ていただければわかる通り、筆者は東ティモールにおいて活動を行ってきている。そんな中、昨年の夏東ティモールで一ヶ月ほどの生活を送った中で印象に残っていることがある。それは、女性の社会進出がかなり進んでいるということだ。そこでは校長先生や村長、そして、国際NGOの代表など様々な活躍する女性に出会ってきた。また、国会議員に占める女性の割合も38.5%(IPU「Women in national parliaments」)と国際的にも高い数値であるなど、数字で見ても東ティモールにおける女性の社会進出が進んでいることがわかる(日本は9.5% )
日本にだって、女性の市長や経営者、政治家はいる。しかし、これほど女性の社会進出を謳っているがあまり進んでいかない日本と、独立後13年の時点で順調に女性が社会進出している東ティモールでは何が異なり、何がその理由となっているのか、今回はこれらの点について考察していきたい。

 

▼女性の活用が重要な理由
そもそも、なぜ女性の社会進出が必要なのであろうか。それは人の権利という側面の理由はもちろんあるが、例えば企業などにとっては優秀な人材の確保のための母集団を増やすことや家庭の支出の74..2%が女性の意志であること(経済産業省経済産業政策局 平成26年「成長戦略としての女性活躍の推進」)からより有効なマーケティングをできることが理由となってきていると予測される。それでは、なぜ女性の社会進出が重要と認知されていながらも実際にはうまく進んでいかないのだろうか。

 

▼ポジション奪い合い説と固定された男女観
まず、日本の社会において考えられる理由に、企業の役職や選挙の当選などのポジションが限られているものにおいて、女性の進出を進めると今までその地位に立ってきた男性が自分の居場所を奪われる可能性が高くなるためである。日本の管理職に占める割合をみると女性の割合は11.2%であり、これは米国43.4%(独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2015」)と比べると大変低い(なお、東ティモールではそもそも民間企業の数が少ないため、そのような調査が存在しない)。
女性が管理職に選ばれない理由の一つとして、結婚や育児で女性は退職するという固定されたイメージから役職選定において女性に対して不利になっており、さらにその裏には「男性が働いて、女性は家事・育児をする」という古いイメージが存在していると考えられる。成長期の日本においては、経済成長および企業の成長や生活費と賃金の関係により、これらの男女観で困ることはなかった。しかし、現代では男性一人では家計を賄えないため、収入を支えるために女性が働くようになるという傾向が見られる。そんな中で、実際は多くの女性が働き始めるようになったのにも関わらず、男女観が変化しないままであるために、このようなアンバランスさを生んでいるのだ。
日本では教育に関しては女性も多くの権利を得てきた。この結果として女性の高等学校等への進学率は96.9%であり、構造的に万人が享受することができるこのような権利に関しては数値は高いものの、数が限られた性質を持つ地位のような問題になると急に女性の進出が阻まれてしまう。このポジションを巡る女性の進出度合いについて東ティモールの高い女性の進出が見られる政治において考察すると、日本では選挙権がもともと男性のみに認められ、その後婦人運動を経て1945年にやっと参政権を認められるというプロセスを経てきたのに対し、東ティモールは最初の選挙から投票権をもってきた。このため、既得権益があまり発達しなかったため(またクオータ制※3が導入されていた)、当初より女性の進出が果たされていたと考えられる。

▼解決のために企業ができること
現状の状態で女性を企業などにおいて、社会進出させるためには男女観を刷新し、家事等と仕事の負担を男女で分割することが重要になる。現状の男子の家事参加時間は67分(うち育児参加時間39分)であり、これを解決するためには、意識を変えることだけでなく家事・育児に参加する時間を作ることが必要になる。
また、女性が働けるための環境も同時に必要となる。例として、保育施設や補償制度のような社会インフラは企業に変えることはできないが、フレックスタイム制度や在宅勤務制度を導入することは企業にも取り組めることである。現状は5.3%の日本企業がフレックスタイム制を導入しており(厚生労働省 平成26年「就労条件総合調査」)、今後も割合を増やしていく必要がある。
このような制度を活かすためには、成果も時間に対するものではなく、目標達成に対して評価していくようにしなければならない。目標達成とは言い換えると貢献度であるが、貢献度に評価していくことは働く時間から成果に重点を移し働く人々の柔軟性を増すと言うだけではなく、その達成自体で女性の尊厳を高め、社会進出を進めるものであると考えられる。
その理由として東ティモールでは、女性は男性に比較しても家計や社会・コミュニティーに対する貢献度が高いことが、現地の人々とともに生活をする中でわかった。例えば、東ティモールでは8割の家庭は自作農により食物を得ており基本的には金銭収入を得ていない人々が多い、また1日あたり$1.25で生活する人が49.9%(UNDP調査)となっている。企業や公的機関に勤める人は数少なく、また首都部に限られている。
現地の労働法にて定められている最低賃金は一ヶ月$115程度であり、それらの仕事に就けない男性の多くは地方の場合はコーヒーのような現金収入につながる農作物の栽培に関わり、首都部ではタクシーの運転手になったりして家計を助ける。そんな中、タイスという伝統的な綿織物を織る女性が、昔よりはかなり減ってしまったが今も存在する。この織物は従来結納品や儀式用の織物として重要なものであり、ほとんどの女性が織ることができたが、今は一部の女性しか織れないため、儀式等でタイスを必要とする人に販売したり、観光客にお土産として販売したりする。製造費は糸の種類やサイズによるが、$30~50程度(織り機代を抜く)であり、これを観光客に対しては$150前後で販売をする。筆者も過去にこの織物の保全事業に関わっており、大きなタイスを折るには1週間以上かかるものの、結果として1日の売り上げで$300~500を売り上げることも珍しくはないのだ。
もちろん、タイスを織れる女性はかなり減っており、これほどの売り上げを得ている人は一部となっているが、コーヒーの生産等においても女性は活躍している。
経済的に貢献度が高い分、家庭などのミクロの面では発言力を持ち、またマクロの面では選挙で男性と対等に戦い当選する女性が多数出てくるという社会ができているのだ。
家族やコミュニティーを支える東ティモール女性へのインタビューから、仕事をすることも魅力的ではあるが、どちらかというと仕事をしたい想いより家計を支えたいという想いに近いと考えていることがわかった。これは本当に働くことを愛する女性はいるものの日本の女性にも一部当てはまるのではないか?

 

▼今後の進むべき道
以上のことから、女性の進出を願う想いと実際に与えられた権利や男女観には現在大きな隔たりがあることがわかった。これらを解決するためには①(生産性・賃金をあげ)働くことを望む女性以外は働かずにすみ、家事・育児に専念できる社会を作る。②時間に対する評価から目標達成による評価に再構築し、女性の貢献度をあげることによって女性の権利をあげていく仕組みを作る&男性が働きながらも家事・育児に関わること就業構造的に補助し、男女で負担を分け合う。
という二つの手段が考えられる。
一つ目の選択肢は実際は現代社会では考えられないものであり若干の冗談ではあるものの、東ティモールの一部の地域やその他世界に未だ存在する伝統的社会社会では、男性が狩猟を行い家族全員を食べさせ、女性は家事に専念するためそれぞれの役割が明確であり、女性にも尊厳や権利というものが明確に存在するのだ。
日本にとっては二つ目の選択肢の方が現実的であるが、より「管理職の◯割」といった義務的な数字によるものではなく、経営戦略や理念に沿った本質的な対策をとることが今後求められる。
セクシャル・ハラスメントやドメスティックバイオレンスなど、女性が差別を受けるということは、世界中でも起こっている(特に東ティモールはインドネシアの占領時、女性に対する暴力が多く独立後も問題となっており、2010年ドメスティックバイオレンスに関する法律がたてられた)が、女性の管理職が少ないということや役員が少ないということが話題になることは日本の珍しい点である。昔ながらの男女観というものにより、優秀な女性を活用できずに外部に流出してしまわないためには、逆に「男だから」、「女だから」という男女観を捨ててしまうことが重要なのかもしれない。

 

※現在東ティモールにおける多方面での支援を企画中です。もし社会貢献事業などを考えられている企業様がございましたらぜひご連絡ください。
ご連絡先:keitakatoh1115@gmail.com

 

※1 東ティモールについて

正式名称は東ティモール民主共和国。

 

東南アジアに位置する人口120万人程度の島国。東経123~127度,南緯8~10度に位置し日本との時差はない。南側に位置するオーストラリアとの間にはティモール海があり、石油・天然ガスの埋蔵地となっている。

 

LDC(後発開発途上国)に指定されている世界最貧国の一つ。

 

16世紀以降ポルトガルの植民地であったが、1975年にポルトガルからの独立を果たした。しかし、隣国インドネシアによって不法な占領を受け、完全な独立(主権回復)は2002年5月20日となっている。また、第二次世界大戦中である1942~1945年の期間には日本軍による占領も受けていた。

 

※2 学生団体HaLuzについて
著者が2015年1月まで代表を務め、現在も所属している学生団体。法政、早稲田、東京などの大学からメンバーが集まっている。東ティモールにて活動を続けており、関連団体を含めると12年の活動歴を持つ。

 

活動詳細はこちら↓
https://www.facebook.com/haluz2014/info

 

※3 クオータ制について
政治や企業役員において男女平等を実現するために、一定数を女性に割り当てる制度。quota=割り当て

編集長プロフィール
加藤啓太(かとうけいた) 法政大学キャリアデザイン大学3年生。
1年間大学を休学し、2013年6月からイマジナにてインターンとして活動。2014年4月から復学している。イマジナでは主に資料作成やHotHRメルマガの記事を作成している。学生としてアジア最貧国の一つである東ティモールの支援を行う学生NGOで活動を行っており、「タイス」という現地伝統の織物を生産するコミュニティーの支援活動やiPadを用いた教育事業、両国若者間の交流活動を行う。他にもWAFUNIF、HCR+などの団体でも活動を行っている。

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