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海外人材の登用はそれ自体が企業「ブランディング」である。

2015.10.19

#ブランディング・レビュー

日本の化粧品会社の元祖、かつ、長年にわたり国内化粧品シェアトップを誇る資生堂が、グローバルブランドである「SHISEIDO」ブランドのクリエイティブディレクター(CD)としてフランス人女性を雇用したことが話題となっている。

 

ご存知のとおり、資生堂はかなり前から「グローバル化」を旗印として掲げており、「全社の売上の6割」を海外で上げるということを目標にしている。そのために人事の「グローバル化」を以前から推進してきており、今年3月で退任したフィッシャー氏の取締役登用に始まり、昨年6月からは、「日本コカ・コーラ」の社長・会長を務めるなど、「グローバル」を絵に描いたような魚谷氏が、資生堂の歴史始まって以来の生え抜き以外の社長に就任した。

 

100年以上の歴史があるコテコテの日本の「文化」を持って発展してきた資生堂が「グローバル化」を推進するには、外部、しかも「外資畑」から人を入れるというだけでは殆ど効果は無い。むしろ、外資の文化と日本の文化が「衝突」し、「外資派」と「反外資派」という派閥が生まれ、結局それらが融和しないまま、会社の中の足並みが著しく揃わなくなり、却って悪い結果を生み出すことにもなりかねない。実際、フィッシャー氏の登用以降は、その足並みが揃わない現象が顕著となり、資生堂の業績そのものは落ち込んだ。

 

今回のフランス人CDの登用は、資生堂がもつ「和」の味わいに、フランス人がもつ「洋」のテイストを加えることによるエキゾチックなデザインによるブランディングを推進するということが目的であろう。化粧品とは少し話が変わるが、フュージョン料理という分野においては、このような和の味わいに洋のテイストをミックスして新しいブランディングを創生するという手法が長く使われてきている。ニューヨークで有名になった「NOBU」等のいわゆるジャパニーズフュージョン料理の高級レストランなどがその例である。

 

ただ、少なくとも料理の分野においては、このフュージョンという手法、ブランディングは場所を問わず意外と長続きしない。ジャパニーズフュージョン料理については、本国の日本人からするとどうしても「まがいもの」の域を脱しないので、最初は物珍しく感じたとしても、味から見た目まで「本物」の良さを感じられない。結局、それが時系とともに日本人以外にも理解されてくる。つまり、日本人から直接得る情報はもとより、メディアの情報や実際に日本に出張・旅行した経験から、「掘りごたつの居酒屋で好き勝手につまみを食べながらワイワイ飲み食いするか、もしくは静かな料亭等でじっくりと食事を味わうのが本来の日本食文化」だということがわかってくるため、フュージョン料理は、料理そのもの(味、見た目)はもちろん、レストランの内装を含め、結局は「文化の融合」どころか「何だかよくわからない」ものになってしまい、ブランドの訴求力を維持できずに途中で疲弊してしまうのである。

 

これは料理に限った話ではなく、どんな商品、組織であっても「外国の人やモノ」を取り入れさえすれば良くなるとは限らない。むしろ、外国のテイストを注入することで、基幹となる日本従来の良さまでがなくなってしまい、ブランディングとしては逆効果になることもある。

 

企業における「異文化融合」は、単に「外の人やモノ」を登用するだけでなく、クリエイティブデザインに代表される企業全体の「ブランディング」として推進される必要がある。つまり、外資のやりかた、日本のやりかたそれぞれについて、どちらのどこが良い、悪いという観点のみから単なる「融合」を図る以前に、経営幹部・社員一人ひとりが努めて「意識を変えること」、つまり、「外資人材から幹部を登用すること」自体が自社の「グローバル化に伴うブランディング」そのものであると理解することが絶対的に必要だ。そうしないかぎり異文化はいつまでたっても互いに相容れず、ブランド価値を上げることもできない。

 

老舗であればあるほど、それまで確立された企業文化に異質なものが入ってくることについてはかなり大きな「抵抗」が生まれる。それが当然だ。その中で異文化を融合していくには、上手く行くとしてもかなり長い「時間」がかかる。会社、そしてブランド自体がその「時間」に耐えられるか、それとも途中で疲弊してしまうかは、結局のところ社員一人ひとりが自身の意識を「変えられるかどうか」にかかっている。

 

料理の素材の意識を変えることは(おそらく)出来ないが、企業の素材である経営幹部・社員の意識は変えようと思えば変えることができる。日本企業の中でも老舗中の老舗である資生堂の今後の動向が楽しみである。

筆者プロフィール
野田大介
コンサルタント

 

■略歴
神奈川県生まれ 神奈川県立七里ガ浜高等学校
立教大学 理学部 数学科卒。
The University of Alabama MBA 経営大学院修了

 

14年半の米国在住後帰国。MBA修了後、米国にて建設会社でプロジェクトマネジャー、化粧品会社にて米国支社長、帰国後マーケティングリサーチ会社勤務。

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