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ブランド価値向上に不可欠な、無形資産への理解

2019.09.19

#イマジナ・ブランディングニュース

「無形資産」という言葉をご存知だろうか。言葉を調べると、「企業などが有する資産のうち、物質的実体を持たないが、権利などの形で売買したり、合併などの企業結合により移転したりということが可能な資産。特許や商標、著作権などのような知的資産、熟練工の持つ技能や知識のような人的資産、企業文化や生産、経営管理プロセスのような企業の基盤的資産などがある」とある。不動産や工場、またそこで生産をしている製品といった有形のものではなく、その企業のみが持つ情報や知的財産、また人材や企業文化などが主たる無形資産である。これらから分かる通り、無形資産は企業のブランド価値を表す指標でもあるのだ。

 

経営において、この無形資産がこれまで以上に大切な要素となりつつある。先日、日経新聞の記事に「無形資産投資、米欧はGDP比10%超も 日本出遅れ」というタイトルの記事が掲載された。
そこには、「データや知的財産などの無形資産は先進国を中心に経済での比重が高まっている。米国やスウェーデンなどの欧州諸国はすでに国内総生産(GDP)比で10%を超え、機械や設備など物的資本への投資額を上回っている」とある。

日本では工場やそこに据え付ける設備などの有形資産、すなわち「目に見えるもの」への投資は積極的だが、目に見えないもの、すなわちITを含め、自社しか持っていないような情報、会社の文化、また会社の文化や人的資源といった無形の資産に関しては投資割合が低い。すなわち、価値向上を目指す動きが少ないというものだ。

 

モノがあふれ、機能での差別化が難しい時代。先進国を中心に、この無形資産の価値、すなわちその企業しか持たないブランドの価値向上は、ますます重要になっていくだろう。無形資産は有形資産に比べて管理コストが安く、大きな付加価値を生み出す可能性を秘めている。情報化社会において、この無形資産を勘定に入れて経営を捉えることは、組織の将来を左右するといっても過言ではない。

無形資産をうまく活用して成長している企業の代表格はAppleだ。Appleはご存知の通り、Macintoshというハードウェアを提供しており、デザイナーなどのクリエイターから熱烈な支持を受けている。Windowsなどと比べて、かつては機能的優位性が存在したが、現在は性能に差はない。しかしながら現在でも、「アップルでなければ良い仕事をすることができない」と考えるデザイナーは多い(性能に差がなければ、互換性に優れているWindowsの方が実際は利便性が高い)。

そして、あまり知られていないことだが、現在は売上の比率の中心をMacintoshやiPhoneといったハードウェアから、コンテンツなどのソフトウェアに移行しつつある。築いてきた有形資産をプラットフォームとして捉え、その上で展開される無形のサービスにより売上を向上させているのだ。ブランド力と戦略をかけ合わせて付加価値を提供しているのがAppleだと言えるだろう。

先ほど、日本は無形資産への理解が遅れているという記事を引用したが、国内の事例においても、うまく無形資産を活用した例は存在する。意外に思われるかもしれないが、そのなかのひとつが、「2020年のオリンピック開催場所の招致」に関する取り組みだ。ご存知の通り、来年での東京開催が待望されるオリンピックだが、この招致は非常に入念かつ戦略的に行われたものだった。
2013年に開かれたIOC総会の最終プレゼンテーションで、候補のマドリード、イスタンブールを大きく超える票数を獲得した日本。これまでこうした国際的プレゼンテーションに日本は弱いとされてきたが、そのようなイメージを払拭する素晴らしいプレゼンテーションであった。
例えば安倍首相のスピーチ。オリンピック開催というと、それで得られる経済効果やメダルの獲得数などに注目がいきがちだが、そもそもそれは自国中心の考え方である。オリンピックの精神の中には経済効果やスポーツの優劣はない。
首相はその点をうまく抑え、「Sports for tomorrow」という日本政府が主導している国際スポーツ普及プログラムについて言及。オリンピックの精神をきちんと捉え、それに日本は貢献できることを一貫したストーリーで伝えた。また身振り、また発音も非常に丁寧かつ正確に行ったことから、非言語の文脈においても好印象を与えることに徹底したことが見て取れる(マドリード、イスタンブールはこの点が弱かった)。

そして極め付けは、滝川クリステル氏のプレゼンテーションだろう。特に「おもてなし」の言葉と身振りは大きな話題になった。滝川クリステル氏という国際性を感じさせる容姿の人材が、日本独自のブランドといってもよい無形資産を訴求(これも明らかな戦略である)。「おもてなし」発言の後には、「日本旅行で落し物をしても、落した物が戻ってくる」といった非常に身近かつ素朴な話題で日本の良さを端的に伝え、おもてなしの精神があるから良質な体験を提供できると締め括った。スピーチ時間はわずか2分半。しかし、とても印象的なものであった。

 

考えてみればスポーツ大会は、どこで開催しても大差はない。それに対してどれだけの付加価値をつけることができるかが重要になる。開催候補地の無形資産をどれだけ見つけ、訴求できるかが勝敗を喫するのだ。開催まで1年を切ったが、東京オリンピックを成功させ、それをテコに日本ブランドの再構築を行うことを、切に願っている。

 

早足で、無形資産、そしてそこから派生する組織のブランド価値を見てきた。日本は長年、これらに対する投資が弱いと言われてきたが、そろそろそれは終わりにしたい。グローバル化が進む時代に無形資産の価値に目を向けなければ、あっという間に国内外のライバルに大きく水をあけられてしまうだろう。無形資産をうまく活用し、ブランド力向上を行なっている企業は多くある。その活かし方を様々な事例から学び、自社だからこそできることを行っていきたい。

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