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企業を形づくる「不変」の思い

2016.06.13

#イマジナ・ブランディングニュース

スノーピークという企業がある。同社は1964年に創業。2015年12月に東証一部に上場した、新潟県に本所を置くアウトドアレジャーメーカーだ。同名のアウトドアブランドを展開している同社だが、製品の製造、販売という枠にはおさまらず「ライフスタイルを提案する先進企業」として世界中で今注目されている。その人気と知名度、そして注目度は、Appleの社員が視察に訪れるほどだ。

同社のブランドは強い。実はスノーピークの製品は、業界内で比較すると高価格帯のハイエンドブランドに属する。しかしその金額感、またアウトドアという市場の中では異質と言っていいほどファン層は広く、愛好家からアウトドアを趣味としない一般の方まで、多くの人々に利用されている。特に最近では、一般ユーザーが同ブランドの製品を買い、休日には公園でテントを広げ、家族でピクニックをして過ごすといった様まで見られる。業界の常識では考えられないような使い方をする例が増えてきているのだ。事実、筆者も都内の公園でたくさんのテントが並ぶ光景を見たことがあるが、どれもロゴはすべて同じ。スノーピークを所有し、用い、一家団欒の時を過ごすのが、あらたな休日の過ごし方として定着しつつあるのかもしれない。

なぜこれほどまでに愛されているのだろうか。ブランド名を知っていても、その理由を知る人は恐らく少ないだろう。アウトドアブランドを超えた魅力を放ち続ける同社の強さは、一体どこからくるのだろうか。

実は、スノーピークの前身は金物問屋である。初代社長の山井幸雄氏が登山を趣味としていたのだが、同氏は当時の登山用品の使い勝手の悪さに不満を持っていた。そこで自らオリジナル登山用品や釣り具を開発し始めるのだが、これが事業のスタートとなった。後に社名を変更し、金物問屋から事業転換。アウトドアレジャーメーカーとして拡大を目指す。その後、1986年に長男の山井太が社長に就任。同時に社名をスノーピークに変更。オートキャンプの需要拡大とともに新製品を市場へ投入することで、成長を実現していく。

しかし90年代前半に入ると状況は一変。オートキャンプブームの収束とともに売上が低迷し苦しい時期が続いたが、状況を打開すべくあらたな施策を次々に打ち出す。
商品ラインナップのテコ入れはその最たる例だろう。地面でのたき火が禁止されたキャンプ場でも使用可能なたき火台をリリースする等、それまで市場にはなかったアイテムを発表。特にこちらはロングセラー商品となり、販売体制の改善とともに独創的な製品を開発することで苦境を脱した。

その後も既存事業と並行しながらも、直営キャンプ場を開設するといった周辺領域における新規事業にも挑戦。そして2014年にはマザーズに上場する。そしてその1年後にはなんと東証一部への市場変更を実現。大躍進を遂げている。

同業他社とは一線を画すスノーピーク。その強みは「徹底してユーザーの立場に立った製品の開発と販売、そしてアフターケアを行なう」姿勢にある。

創業者自身がいちユーザーであったという沿革も関係しているのであろう。ユーザー目線の製品開発だけでなく、フィールドで実証することにより品質を磨くことをものづくりの理念としている。
またほとんどすべてのアイテムにおいて、購入後の永久保証を約束しているのも大きな特徴だ。例えばテントの故障や破れ等は頻繁に起こると思われるが、それが経年劣化やユーザー自身の過失等でなければ、なんとアフターサービスの一環として何度でも修理を受けることができる。だからこそ顧客は「良い商品」を「長く」使い続けることが可能になるのだ。ことアウトドア製品は使用環境が厳しく壊れやすい状況下にあるため、これならば多少値が張っても、スノーピーク製品を使いたくなるだろう。

同サービスからわかるように、その思想は一貫している。ブレずに思想を貫くことができるのは、自分達が自らに対して「自然と共に生きることにより、人間性を回復するアウトドアライフスタイルの提案」をミッションと課しているからだ。

同社は、現代人が自然とかけ離れた環境で生きていること、また家族や友人とのコミュニケーションの希薄化が進んでいることを危惧している。そのような現代社会が直面する問題に対して、自分達の製品が解決の一助であってほしいと強く思い続けているのだ。そういった「自然と人のつながり」や「人と人とのつながり」を大切にする思想を根底に持ち続け、商品を通し「ライフスタイルの提案」に挑戦し続けているからこそ、愛好家だけではなく一般の顧客層にも支持されているのではないだろうか。

成功している企業の多くは、このような「商売を超えた何か」を追い求め続けている。例えばApple。同社は「すべてのクリエイターが活躍できる世の中」を目指し、個人に力を与える創造的な商品を発表し続けた。あるいはTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ。「カルチュア・インフラをつくっていくカンパニー」とコーポレートサイトのTOPページに掲げているが、事実レンタルビデオ屋で終わることはなく、自治体との提携やTカードの普及等を通し、人々がより生活しやすい環境づくり、ひいては文化づくりに挑戦し続けている。

売上は企業活動の源だ。しかし、単にそれを追い求めるだけで、30年、50年、100年先を生き残る企業をつくることが出来るのだろうか。一見、目先の売上とは遠いところにある「社会にとってどんな存在でありたいか」「自分達が大切にするものは何か」といった根源的な問いに対して、明確な答えを持っている企業が最後は生き残っているように思う。

現代では3年先のビジネス環境も予測できない。しかし、環境がいくら変わっても「不変なもの」を根底に持ち続け、それを体現し続けている企業こそが、次世代のエクセレントカンパニーとなるのではないだろうか。

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