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コンプライアンス対応の向上は、企業風土の変革にあり

2016/08/01(最終更新日:2021/12/20)

興味深いデータがある。東京商工リサーチは、2015年度(15年4月-16年3月)にコンプライアンス違反を要因とし倒産した企業は190件にのぼったと調査をまとめた。この数字は法令違反や粉飾決算、偽装などを起因とした倒産案件を主に指す。本件、前年度は216件だったので昨対比で12%ほど減少しているのだが、内訳をみると、不正な会計処理や虚偽の決算報告書作成などの「粉飾」による倒産数が昨年度よりも増加している。景気回復の兆候が見られるなか、粉飾を要因とした倒産が今も多く起こっているのだ。またこういった経営陣の判断とは別に、従業員の行動がコンプライアンス違反となり倒産につながるケースもある。「うちは関係ない」「違反する社員なんていないから大丈夫」といった姿勢で捉える組織人も多いが、決して問題が起こらないという保証はどこにもない。いつ自社が対象になってもおかしくはないテーマなのだ。

そもそも、コンプライアンスとはなんだろうか。その言葉が日本で使われ始めたのは2000年代前半からとされている。不況で企業の業績が思うように上向かないなか、法令に抵触するような業務活動、虚偽の報告や粉飾決算などが社会問題として取り沙汰されるようになった。そういったなかで、企業は法令や規則をきちんと守り活動を行っていくことが大切であるという意見、すなわち「企業の法令尊守の徹底」が社会から求められるようになり、それに該当するコンプライアンスという言葉が使用されるようになっていった。今日ではコンプライアンスを強化することは組織の価値やイメージ向上にもつながるため、重点的に強化する企業も増えている。

しかし、言葉の認知度と広まりに逆行するかのごとく、違反を犯してしまう企業は後を絶たない。最近では東芝の不適切会計などが記憶に新しい。結果的に倒産には至っていないものの信用は急落しているのはご存知の通りだ。またある調査では7割以上の企業が、経営幹部や社員、関連企業や海外子会社の社員についてはコンプライアンス施策の管理対象としているが、内定者や下請け業者を管理対象としている企業は3割程度にとどまるという。自社が対象としていないところから問題が起こらないとは限らない。ベネッセの顧客情報流出問題なども、派遣社員の不正が原因となった。

またこういった法的違反の行為に加え「倫理や社会道徳」に反するような行為を行うことで、顧客や取引先などの信頼を失ってしまうケースも多い。軽微のコンプライアンス違反でも最悪の場合、法律に抵触せずとも信頼を失い、事業継続が困難になることもあり得る。

これらの問題は思いもよらないところから起こる場合もある。「違反の種」はそこら中に転がっているのだ。なぜ、こういったことが起こってしまうのだろうか。またどのようにして、未然に防げばよいのだろうか。

問題を起こさないように「ルールを厳格化する」のは1つの手である。コンプライアンス研修を催したり情報管理体制をより厳格にしたりするのは、よく講じられる手段だ。しかし、これらは有効な手立てではあると思うが、本質的な問題解決につながっているのかと問われると疑問が残る。研修やテストのマンネリ化はどこの企業でも生じているし、管理体制を強化したとしても、前述の「軽微の違反」などは防ぐことができない。個人の行動を決めごとで律するには、限界があるだろう。

それよりも、本質的な問題解決を望む、すなわち経営陣や従業員の倫理観そのものを高め違反が起こらない状態を維持することを志向するのであれば、規則で縛るのではなく「しようとも考えない、しない姿勢」「自律的に行動を抑制する姿勢」を組織に育むのが、一番効果的なのではないか。ルールよりも、会社の文化や雰囲気が、現場で働く人々に大きな影響を与えるものである。言ってしまえば「違反しないカルチャーの醸成」が一番大切だと筆者は思うのだ。

例えば経営陣が現場に対して、達成が非常に困難な営業目標を設定していたとしよう。また達成に対するプレッシャーが非常に大きなものであったら、受注数字の操作などの不正が起こりやすくなることは予想しやすい。これは「負の企業文化」と言ってもいいかもしれない。達成しなければ罰せられるといった風潮が強ければ強いほど、コンプライアンス違反は起こりやすくなる。
また顧客情報の管理などがずさんであるとベネッセのような事案も起こり得るが、現場のメンバーはずさんだと感じていない場合も多々ある。その企業のカルチャーとしては当たり前なので、モラルや意識が低いことに気づかないのだ。「固有のルール」はどの企業にもあると思うが、それが正当なものかどうかは量る機会は案外ないものである。

こういった「負の企業文化」を払しょくし、自分たちの行動を改めたり、また互いに注意喚起しあったりするような「正の企業文化」の醸成が、結局はコンプライアンス違反を防ぐ最良の手立てなのではないか。ルールで縛り付けるだけでなく、社員のモラルそのものを向上させ、それを受け継いでいくような風土の醸成が大切なのだ。
実際、倫理的な企業文化を有している企業は、経営層が従業員とのミーティングにおいて、日常的に倫理やコンプライアンスに関する問題提起を行っている割合が高いという。またそれと併せ倫理的な行動を推進するうえでの重要な要素として、行動規範の作成や社内のレポーティング体制などが挙げられている。日常から倫理的な行動をとらせるよう舵を取るのが大切なのだ。

こういった文化の醸成は一朝一夕にできるものではない。しかし、経営陣の努力や現場の改善努力によって、必ず実現できるものだ。ただ自社単独では何がどう間違っているのか、どこに違反の種があるのか、判断しかねる場合もあるので、外部の専門家に協力を頼むのも1つの手段である。余談だが、我々のようなカルチャー創造のプロフェッショナルがお役立ちできる点でもある。

企業のコンプライアンス尊守。それはどんな組織にも密接に関わる問題である。あらためて自社を見回してはどうだろうか。「うちは大丈夫だ」と思っていたとしても、問題が噴出する可能性は潜んでいるのだから。

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