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業界にブレークスルーを起こす、ブランドの創造

2016.10.03

#イマジナ・ブランディングニュース

「BABYMETAL」という音楽グループをご存じだろうか。10代の女性3名で構成され、その名にもある「ヘヴィメタル」をうたう。結成は2010年。従来の「ボーカルグループ」でも「アイドル」でもない、独自の路線を突き進む新進気鋭のアーティストだ。その人気は国内だけでなく海外にまで及び、単独でワールドツアーを行ったり、海外のアーティストから共演の依頼が数多く舞い込んできたりしているほどだ。

その人気の秘密は音楽性にある。10代の彼女たちは一見するとアイドルのような可愛らしい容姿をしているがステージに立つと雰囲気は一変。黒ずくめの衣装をまとい、男性ミュージシャンをバックにヘヴィメタルを熱唱する。今までにないそのコンセプトが、世界同時並行で「大ウケ」しているのだ。

従来、ヘヴィメタルと言えば男性ミュージシャンの専売特許であり、重く速いリズムに、攻撃的な歌詞をのせるのが定説であったが、彼女たちはそのイメージを一蹴する。ヘヴィな演奏そのままに、恋する女性の気持ち、また学校で起こるような「イジメ」などをテーマとして独自の目線で歌を制作。ステージ上では「叫ぶ」暑苦しさはなく、女性ならではの可憐さを残した振る舞いをし、曲中では民謡のような「合いの手」がはいる。今までにない「アイドル×ヘヴィメタル×日本的曲作り」という独自の世界観を確立したことが人気の秘密だ。

既存のモノや価値観を融合し、新しいモノやコトを世に送り出す。これはなにも音楽業界に限定された話ではない。ビジネスの現場でも頻繁に起こっている変革手法で、うまくサービスに活かすことができれば、アイディア次第で他社の追随を許さない、独自のブランドを形成することも可能になる。

古い事例だが、今では世界的なヒット商品となったSONYの「ウォークマン」も、アイディアの組み合わせで作られたサービスの1つだ。今から37年前、盛田昭夫会長の肝いりで始まった同製品の開発プロジェクトだが、発足当時は「こんな商品売れるわけがない」と多くのメンバーが反対していた。再生のみに機能を絞ることで小型化を推し進めたが、巻き戻しのできない機器に価値があるのかと疑問を持たれていたのだ。

そんな中、盛田氏だけがヒットを確信していた。すでに存在するテープレコーダーに「小さくて持ち運べる」というアイディアを掛け算する。その着眼点は斬新で「音楽の再生機器」の枠を超え「音楽を持ち運ぶ」というカルチャーの創造までも成し遂げた。その後世界中で爆発的に売れ、同商品がSONY躍進の一翼を担ったのは言うまでもない。

このような掛け算発想は、独自の商品開発やブランド創造の鍵となるだろう。ヒット商品と言っても新しい技術や資本をふんだんに使っているのではなく、誰もが持ちあわせているような既存の知識の融合で成り立っているケースは多いのだ。

しかし「そうはいっても、新しい商品やブランドはつくることはどんどん難しくなっている」と感じる人は多いのではないだろうか。成熟社会に突入した日本では内需の成長が見込めなかったり、またアイディアが陳腐化するスピードも早まったりしているので、目新しい着眼点を見つけるのは非常に困難だと。だが、本当にそうだろうか。

例えば食の世界。外食は先進国では成熟産業であるが、和食という日本文化に目を付け、それを現地の味覚や文化と融合させることで今までになかった商品をつくる取り組みが行われている。「ONIGILLY(オニギリ)」もその1つだ。

ONIGILLYはサンフランシスコにある、日本人である兼松氏が創業した「おにぎり屋さん」である。文字通りおにぎりを売っているわけだが、ただ単に日本食を持ち込み、店舗を構えたのではない。日本のおにぎりでも、ましてやカリフォルニアロールでもない、現地の趣向に合ったオリジナルのおにぎりを氏は開発。商品の目新しさだけでなく「健康づくり」と関連付けたブランディングを行い、販売に成功しているのだ。

今から10年前の06年、氏はアメリカに渡った際、寿司を提供するレストランは多くあるのに、おにぎりを提供する店が全くないことに驚いた。おにぎりには長い歴史があるし、寿司より手軽に食べられるにも関わらず、である。

その驚きに加え、氏がアメリカの小学校で見た昼食風景がビジネスを決定づけた。用事があり氏が地域の学校に訪れると、ちょうどランチタイムが始まった。何気なく生徒が持ってきたランチボックスを見ると、その中身に愕然とする。それは非常に簡素なもので、とてもじゃないが成長期の子供に見合う量や栄養を含んでいなかった。それも1人の生徒ではない。多くの生徒がそのような食事を持参していたことに、氏は衝撃を受けた。

この体験を機に「手軽で栄養が取れる食べ物」として、おにぎりの提供を心に決める。その後、共同創業者の長谷川氏とともにどんなおにぎりが受け入れられるか検討を重ね、商品化を推進。09年に販売にこぎつけた。

Onigillyは独創性に富む。お米は栄養成分が豊富なブラウンライスを使用し、寿司との違いを明確にするために、大豆でできたカラフルなソイペーパーを巻く(真っ黒な海苔の代わりだ)。名称も「無国籍のおにぎり」という理念に沿い、日本的語感である「onigiri」表記ではなく「Onigilly」とする徹底ぶりだ。具材もバリエーション豊かで、野菜・肉・魚介類から選べるのも大きな魅力となっている。

それは未知への挑戦だったが「簡単に健康的な食事がとれる」と、Onigillyは大人気。同社は16年現在、サンフランシスコで4店舗を構える規模になった。
「夢は全米500店舗のおにぎり屋チェーン」と語る同氏。ゆくゆく「日本発の健康食」として、おにぎりが全米に浸透する日がくるかもしれない。

業界を問わず、ビジネスを取り巻く変化のスピードはだんだん早くなっている。しかしその中でも他社との差別化を実現し、新しい商品やブランドを創造、ひいては文化の創造を実現することは決して不可能ではない。現に冒頭のBABYMETALは市場の減少が見込まれている音楽業界において、今までにないコンセプトの音楽を創造し、世界中のファンを魅了し続けている。

正解が見えない現代のビジネス環境だと言われるが、反対に言えば、自らの手で正解を作り出せる環境なのではないだろうか。その道は決して平坦ではないが、新しいサービスをチャレンジングに創造していくことが、長きにわたって愛されるブランドの創造に不可欠なのだろう。

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