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シビックプライドの醸成がブランドを形づくっていく

2017.10.10

#イマジナ・ブランディングニュース

10月に入り、めっきりと秋めいてきた。乾いた風が肌をかすめ、どこからか金木犀の香りが漂ってくる。少し前までは汗ばむほどの陽気を感じていたのに、いつの間にかシャツ一枚では外出できない季節になってしまった。
秋口の東京では、多くの地域で「神輿」を担ぐ掛け声が聞こえてくる。一年に一回、神様を神輿に乗せてまちを練り歩くことで、その力が振りまかれ災厄や穢れを清めてくれるとか。祭礼によって様々だが、これが神輿を担ぐ一般的な理由だそうだ。

筆者も昔、祭礼に参加したことがある。参加者はもちろん周辺の住民とその地域で働く人々。皆自身が住むまち、働くまちを誇りに思っており、率先して盛り上げ神輿を担いでいた。

自身が地域の構成員であると自覚し、さらに良い場所にしていこうとする想い。これを意味する言葉として「シビックプライド」がある。近年これが、あらゆる場面で聞かれるようになってきた。昔から存在する言葉ではあるが、本格的な流布は地方創生が話題になった頃からだろう。「郷土愛」とも少し違う。まちに愛着を持つだけでなく、その良さを深め、整理することで内から魅力を発信していこうという意思が、この言葉には内包されている。

シビックプライドという概念が広く認知されるようになった先駆けは19世紀のイギリスだと言われている。当時同国では、北部イングランド地域から中部にかけて工業や商業が急速に発達。多くの周辺の村が近代都市へと変化していった。産業の発達は他地域からも人を呼び寄せ、地縁以外のつながりや、それまでになかったビジネスを軸としたコミュニティ形成がなされていく。

発展は都市の繁栄を促した。人を多く呼び込み、住民や就労者を増やすことに成功した都市は活性化していく。そこで、それまで地域のシンボルであった教会などの宗教施設とは別に、財を成した市民が資金を提供し、市役所や図書館、公園などを建設。その地域だから感じられる「住みやすさ」「働きやすさ」を練り上げて外部に発信していったという。これがシビックプライドの原点だ。

イギリスではこのような歴史的背景もあってか、シビックプライドキャンペーンといわれる取り組みが行われることがある。土地への想いという曖昧なものを、イベントなどの活動を通じて形にすることで、自身が暮らす場所の良さを再確認できる機会を生み出しているのだ。

日本では現在、主には自治体を中心となり、多くの地域が移住者や観光客などの「人」を集めることに躍起になっている。少子高齢化が進み、人口減少による経済衰退が避けられない問題として降りかかっているからだ。そのため、たくさんの組織が地元の良さを知ってもらおうと外部に目を向けプロモーションを行なっている。

その活動は多様で様々な工夫が凝らされているが、見かけを取り繕っているばかりでは派手さや目新しさだけを重視してしまい、本質的な魅力が理解されなくなる事態も生じかねない。外部への発信と同じくらい、内部にいる人々が自主的に誇れる地域をつくっていくことが、独自のブランド形成を考える上で大切だろう。

実際に、住民とまちが一緒になって地域の良さを再確認していくことで外部からの集客に成功した事例がある。新潟県の上古町(かみふるまち)商店街の取り組みがその1つだ。

新潟市内にあるその商店街は、老舗小売店が多く並ぶ商業地域の一角にある。かつて商店街は活気に溢れていたが、昭和以降ホームセンターなどの大型店舗が周辺地域に進出。生活の場が郊外へと移行していく。また同時に、商店主の高齢化による廃業等で店舗減少が加速。時代の流れとともに、まちへの求心力がだんだんと低下していった。そのような衰退に歯止めをかけるべく、2004年に「上古町まちづくり推進協議会」が地元で発足。かつての商店街の輝きを取り戻そうと活動が開始された。

同協議会はNPO法人などの力を借り、まちづくりをどのように行なっていくかを学習。その後、シンボルマーク「カミフルマーク」制作や情報誌「カミフルチャンネル」を発行し、さらには商店街が運営するホームページの開設などを行った。また地域に足を運んでもらうためのきっかけとして「上古門前市」や「かみふるまち食の福袋」など、衣食住に関連した独創的なイベントを実行している。

それだけではない。住民にアンケートを取り、さらに通いやすい商店とすべく老朽化したアーケードを改築したり、歩道の各所に街歩きマップの「上古町小路地図」を置いたりなど、環境を改善するような取り組みも積極的に実践していった。
結果的に人々の流入数は増加。商店街の空き店舗率は年々減少し、08年には24.7%だった数値が11年には3.6%にまで回復したという。また特筆すべき点は、まちの雰囲気に憧れた若者が商店街で開業するケースが増えたこと。シャッター商店街の問題が注目される今、これは非常に珍しい事例だろう。現在では旅行者がわざわざ訪れに来るほどの観光名所としても賑わっている。

そこに住まう人々が積極的にまちを盛り上げていくことで、人々が住みやすく、また憧れる地域へと変えていく。これはまさにシビックプライドがなせる技であり、独自のブランド戦略の第一歩であると言えるだろう。

ブランディングを考えた際に、方向性が曖昧なままでは他と差別化がされていなかったり、似通った施策を行ってしまい二番煎じと感じられたりすることも少なくない。であれば、まずは自分たちが住む地域にはどんな長所があるのか、まちに住む人は何を求めているか、内部からてこ入れすることで様々な活動を実践していく姿勢が大切ではないだろうか。

自分たちが関わる地域に誇りを持ち、たくさんの人々が憧れるまちを創造していく。闇雲に外部に情報発信していくのではなく、内部から物事を見つめ直す取り組みが今、地域のブランド戦略には求められているだろう。

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