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ブランドマネジメントが、事業の成長と多角化を左右する

2017/10/24(最終更新日:2020/07/28)

ブランディング

「ライザップグループがアパレル買収。M&Aで新たな展開を目指す」。先日、このようなタイトルのニュースを目にした。
今ではその名前を知らない人はいないだろう。ライザップと言えば、多くの人が「フィットネス業界を中心に躍進を続ける成長企業」という認識を持っている。同社も積極的にCMを中心とした広告活動を行い「結果にコミットする」を合言葉に、理想の体づくりを実現させるパートナーというブランドイメージを人々の頭のなかに築いている。

そんなライザップだが、実はグループとしてはフィットネスクラブ経営を行うだけでなく、様々な業界で事業展開しているのをご存知だろうか。
その領域は多岐にわたる。特に最近では、冒頭にある通りアパレル企業を相次いで買収しており、ファッション衣料通販の「夢展望」、補正下着の「マルコ」、カジュアル衣料専門店の「ジーンズメイト」などをグループ傘下に置いた。フィットネスからアパレルへと領域を広げる同社がどのようなビジョンを描いているのか、その意図を読み取ることは難しい。
しかし、現在の業績は非常に好調であり、多くの事業が収益化しているとのこと。その成長性と独自の戦略には、たくさんの人々が期待を寄せているだろう。

最近では自社事業のみに注力するのではなく、M&Aを積極的に経営に活かす企業も増えてきた。M&Aには技術や人的リソースの確保、その市場におけるブランドの活用など様々なメリットがある。今後も多くの企業が非連続的な成長を志向し事業買収を行なっていくと思えるが、実際の問題として想定した以上のリターンを得ることができず、M&Aが失敗に終わってしまうケースも少なくない。
懸命に計画を練り買収したが、既存事業とのシナジーを生むことができず赤字に転落。買収先を数年後には売却してしまう、なんてことも珍しくはない。多角化経営をしてしまったがゆえにグループ全体の評価が低下し、株価下落を引き起こす現象を「コングロマリットディスカウント」と呼ぶが、この状態に陥ってしまう企業は意外と多いのだ。

なぜこのような事態が生じてしまうのだろうか。その要因のひとつに「ブランドマネジメントの欠落」があると言われている。M&Aにおいては会計上の数字や市場の成長性などが非常に重視されるが、実はこれだけでは足りない。各事業が最大限の相乗効果を発揮するためには、経営戦略と描くビジョンに沿ったブランドマネジメント、そして事業展開と連動したブランドストーリーの構築が必要不可欠なのだ。
この点を軽視したがために、M&Aがうまくいっていないケースは多々あるように思われる。「個々のサービスは強いが、コーポレートブランドとつながりがない」「ひとつのグループになっても横の交流もなく文化も違う。互いに連携が取れておらず、結局は組織が各々独立した活動をしている」など、組織内外におけるブランドの悩みは尽きない。M&Aは契約を締結してからが本番。そこに属する人間とサービスが一枚岩となって活動をしていくためには、確かなブランド戦略が必要なのだ。

この悩みをうまく克服した好個の例として、IBMが挙げられる。同社はITを中心にコンサルティングからハードウェアやソフトウェアの開発、販売まで、幅広く事業を行っている。過去に倒産の危機を迎えながらも、ビジネスモデルを変革し成長を実現している巨大企業だ。

IBMが危機の渦中にいる1997年、当時のCEOであるルイス・ガースナー氏はインターネットの爆発的な普及を見込んで「e-business」というスローガンを掲げる。これはインターネットを企業の業務処理全般に活用していこうという、新しいコンピュータの在り方を定義したものだ。すでにこの当時、現在では当たり前となった電子決済やオンライン上での膨大なデータ管理技術の確立なども予見している。IBMはインターネットを使ったあらゆる分野において、リーディングカンパニーとなることを約束した。

また2008年には、そのコンセプトを「Smarter Planet」へと進化させる。これは「地球をより賢く、スマートにしたい」という想いを言葉にしたもので、同社の「顧客企業および社会とともに、世界中で変革の実現を支援する」という事業スタンスに結実している。時代の流れを読み取り、常に一歩先をゆくスローガンを掲げることで、IBMはV字回復の成長を確かなものにした。
特筆すべきは各事業領域を貫く言葉の表現だろう。食であれば「Smarter Food」、クラウドコンピューティングであれば「Smarter Clouds」という調子で「Smarter ○○」ブランドを展開している。またロゴも「Smarter Planet」を基軸に一貫性あるデザインを使用。買収先が独自のブランド力を持っていたとしても例外なくこの法則を適用し、単なる名称を超えたスローガンに対する覚悟を表している。

ルイス・ガースナー氏は「IBMでの約10年間に、私は企業文化が経営のひとつの側面などではないことを理解するようになった。ひとつの側面ではなく、経営そのものなのだ」とメディアで語っている。企業文化は経営そのもの。この言葉には、どれだけの含蓄があるだろう。

単一事業の育成も、M&Aによる多角化も、大切なのはその企業の意思であり文化、すなわち「どうありたいか」という想いだ。これをないがしろにして「儲かりそうだから」「うまくいきそうだから」といった理由で事業展開を行なっていたら、その成功は短期的なものに終わるだろう。
自社が描くビジョン、そして経営戦略はどうだろうか。ブランドを考えることは、経営を考えること。今一度、その在り方を考えることで、新たな成長を模索していきたい。

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