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違反のない企業文化を創造するために大切なこと

2017/11/09(最終更新日:2021/12/10)

ブランディング

米サンフランシスコにあるシリコンバレー。知らない人はいないだろう。ソフトウェアやインターネット関連企業が多数生まれ、IT企業の一大拠点となっている地域だ。AppleやFacebookなどもそう。世界を席巻するアイディアを携えた企業たちが日進月歩の成長を遂げ、独自の経済圏を形成している。

そのシリコンバレーで生まれた企業の一つに「Uber(ウーバー)」がある。同社もこれまでになかったビジネスモデルを創造し、爆発的な成長を遂げている。
Uberが提供しているのはスマホ一台で配車から決済までを行うサービス。簡単なアプリ操作で、好きなときに好きな場所で車を呼べるというものだ。日本ではタクシー配車のみを実施しているが、米ではなんと一般ドライバーが運転する車も対象内だという。これは「ライドシェア」と呼ばれる形態で、他人の車に相乗りする行為を指す。米で急速に伸びている市場だ。同社は市場を牽引するリーダーとして圧倒的な成長を実現し、創業から6年目の2015年にはBMWとほぼ同額の時価総額を記録。創業者のトラビス・カラニック氏は時代の寵児ともてはやされた。

その成長は順風満帆に思える。しかし17年現在、同社への信用は地に落ちてしまった。その原因は企業文化の退廃。爆発的な躍進の裏では、倫理なき社員のふるまいが横行しているのだ。

その中身は日本で言うところのセクハラ、モラハラなどが中心。これらが発生するだけでなく誰もがそれを止めようとせず、自浄作用がまるでないという。すでに退職したある女性エンジニアはセクハラを受けたと人事部に訴えても全く相手にされなかったとブログで告白。またそれに追い打ちをかける形で、なんとトラビス・カラニック氏が自社の運転手と口論し、罵倒する映像がネット上に公開されてしまったのだ。この有り様に投資家は激怒。カラニック氏は謝罪し反省を誓ったが、他にも噴出する問題を対処しきれず今年の6月に辞任した。現在ではCEOにExpedia(エクスペディア)元CEOのダラ・コスロシャヒ氏が就いたが、超巨大組織に根付いた悪しき文化はもはや改革できないのではと再興に懐疑的な声も上がっている。

短期間でこれほどまでの浮き沈みは珍しいかもしれないが、セクハラやモラハラの発生は他人ごとではない。主観性が強い違反のため「何をやってはいけないか」というボーダーラインが曖昧であるし、人員の増加に伴いその実態は把握し難くなっていく。またこのような問題が起こると、現代の情報化社会ではすぐに外部に情報が漏洩し信用問題に発展してしまう。前述のカラニック氏の事例もその典型で、その内容に関わらずCEOが自社の従業員を罵倒しているという映像は、人々にショックを与えるには十分すぎるものだった。

このような行為を起こさないためには積極的な対策が必要になってくる。「起こってから考える」では遅い。違反行為を未然に防ぐ対策が大切なのだ。

一般的に違反の背後には「不正の三原則」が存在している。それは「機会」「動機」「正当化」だ。機会は不正を犯すチャンス。動機は不正を犯す理由。そして正当化は、不正行為を正しいことだと思い込む思考の動きを表す。これら3つは互いに連動し合っている。どれか1つをきちんと抑止することができればそれは同時に他2つを抑え込むことにもつながるのだが、そのためにはどのような対策をとることが望ましいのだろうか。

機会に関しては、多くの企業が人事労務の見直しや社内制度の制定などで撲滅するように図っている。しかし、決まりごとだけで縛り付けるのでは難しい側面があるのも事実だろう。日本でもハラスメントなどの不正は度々話題になるが、ルールを破るものも現れてしまうのが実情だ。
次の動機だがこれも抑止は難しい。動機は人間の欲求に結びついており、その欲求を仕組みで抑え込むことは困難だからだ。
正当化はどうだろう。これに関しては正しいステップを踏むことで抑止が可能である。実際に不正を犯した当人に話を聞いてみると「悪いことをしているという自覚はなかった」と答えるケースが少なくない。こういった認識の変革を、社内カルチャーの醸成によって促していくのだ。上から押さえ込むのではなく、そもそもの認識や意識のあり方など抜本的な部分から変えていくのである。

またこの正当化は、企業文化の組織への浸透度合と深い関係があり、その関連性を把握する一つの指標として「品位係数」が挙げられる。
品位係数とは倫理観に対する企業文化を可視化したもの。この数値が高いほど品位がある、言い換えれば企業文化が浸透していると捉えられるのだが、高数値の企業は社内での不正発生頻度が低い傾向にある。逆に係数が低い、すなわち企業文化が浸透していない企業は不正の起こる頻度が高い傾向にあるのだ。

実際に、文化を形成するよう尽力している企業は不正を起こすことが少ない。例えばトヨタなどがいい例だろう。同社は古くから他社に先駆けて、工場の朝礼などにおいて遵守事項の確認と徹底、また不正事項や非常時の対応確認などを朝礼などで行なっていたという。

今年に入ってからは労務の部分で独自の働き方改革を推し進めるべく、残業時間に問わず残業代を月17万円で一律支給する制度を導入することが決定した。残業代未払い、また残業の過多が話題になっている昨今において、これは革新的な取り組みだ。このような大胆な意思決定が行えるのも、組織としてのあり方を常日頃から考えているからだろう。「トヨタの社員であったらどう振る舞うべきか」と一人ひとりが考えることが、各部署、ひいては会社全体での高い意識の醸成につながっている。

「悪い文化」はどの企業にも生まれる可能性があるし、それは組織の宿命として避けられないことかもしれない。しかし、いかに早くその芽を摘むか、また育たないよう対処をするかが重要だ。前述のUberのようになってしまったら、どんなに良いビジネスモデルを企てても本末転倒である。何も問題が起こってないと思える時ほど積極的な対策を講じることで、違反を未然に防いでいきたい。

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