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100年続く老舗ブランドの販売戦略とは

2018.01.09

#イマジナ・ブランディングニュース

年が明けてから10日が経った。正月気分もすでに過去のもの。ほとんどの会社が通常通り仕事をスタートしているだろう。政治や経済環境は日々目まぐるしく変化するが、今年はどんな1年になるのだろうか。多くの方々が気分を一新して年初に目標を掲げ、新たな一歩を踏み出していることと思う。

今年は平成30年だが、明治元年から数えて満150年になるメモリアルイヤーだという。151年前には大政奉還が行われ、江戸から明治へと時代が大きく変わった。当時の日本政府は欧米列強に打ち勝つため、政治形態や学問などを一気に輸入。経済環境、商習慣なども大きく変化していく。また日本が資本主義を取り入れるとともに会社設立ブームが到来。日本経済の礎を築かれていった。

当時設立された会社のなかで、今でも継続的に活動を続けているものがままある。例えばお菓子メーカー森永の創業は明治32年。誰もが知る「森永ミルクキャラメル」ができたのも同年だという。今年でなんと、誕生から119年。創業時に立ち上げたブランド名と商品がそのまま現代に残っているのは驚嘆に値するだろう。
またアサヒ飲料が販売している「三ツ矢サイダー」の元である「三ツ矢シャンペンサイダー」は明治42年に販売開始。こちらも100年以上の歴史を持つブランドであり、国内発の炭酸飲料において不動の地位を築いている。

どちらもあまりに有名なため「あって当たり前」という印象を持つが、今日に至るまで数えきれないほどの浮き沈みを経験してきただろう。100年以上続く老舗ブランドは時代に合わせて形を変え、独自のポジションを形成しながらその地位を確固たるものにしていく。決してこれらは運良く生き残ったのではない。その歴史を紐解くと、絶え間ない地道な努力が隠されていることに気づかされる。

その一例が花王の石鹸だ。その始まりは今から128年前の明治22年。当時の国内石鹸は粗悪品ばかりで、良質なのは外国産の高級なもののみだったという。この状況を変えたいと思った創業者である長瀬富郎氏は石鹸開発に没頭。満を持して販売を開始する。一つひとつをパラフィン紙で包み、能書き(効用などを記したもの)と証明書とともに桐箱に収納。細かなところまで高品質を追求した、他にはない石鹸を作り上げた。

また長瀬氏は創業当時から東洋のブランドを作ろうと考えていたため、能書きに東洋で花の王として愛されている牡丹を描画。また美と清潔のシンボルとして月をモチーフにしたロゴも開発し「月のマークの花王石鹸」を展開していった(これは現代の花王のロゴにも生かされている)。

長瀬氏は販促にも工夫を凝らす。「よいものは、人に知られてこそ」を信念として、発売当初から積極的な宣伝・販売活動を展開。ポスターや新聞広告以外にも歌舞伎など劇場の引幕、蒸気船の屋根、湯船に浮かべる浮き温度計などにも広告を貼り、他社が到底やらないようなことをやり続けた(そのなかでも東海道本線沿線に掲げられた野立て看板は国内鉄道広告の第1号だとか)。こうして花王石鹸は全国に広められていったのだ。
このような販促戦略における独創性は現在の花王にも受け継がれている。花王石鹸ホワイトという商品において、年末年始に「干支デザイン」版が販売されているのをご存知だろうか。「新しい年を、新しい石けんで気持ちよく迎えてほしい」という思いを込め、その年の干支にちなんだデザインの石鹸を平成10年から毎年販売している。花王の石鹸と言えば知らない人がいないほどのロングセラーだが、ブランド力の維持には今でも余念がない。

また同じく明治生まれで業界のトップを走り続ける企業に、殺虫剤で有名なKINCHOがある。明治23年、同社創業者の上山英一郎氏が蚊取り線香を発売。そこから「除虫」をテーマに様々な商品開発を進めていく(ちなみに除虫関連商品を作り始めたのは、明治18年に上山氏がアメリカの植物会社社長H・E・アモア氏に面会し、珍しい植物種苗の交換を約束したのがきっかけだとか。翌年、ビューハク(除虫菊)を含む各種の種子が届き、研究がスタートされたという)。
現在でも同社は殺虫剤メーカーとして業界の先頭を走っているが、注目すべきは花王と同様、他に類を見ない販促戦略だろう。
KINCHOの広告は独創的なものが多いと評されている。CMではかつて「亭主元気で留守がいい」という独特なキャッチフレーズを発信。この言葉とともに「タンスにゴン」という商品名を一気に広めていった。また最近では新聞に大量の直線が引かれた広告を掲載。これは実は折り紙となっており、完成すると「ある害虫」が出来上がる。この仕掛けはSNSでも話題になった。

加えて販売店とのコミュニケーションに、独自の手法を取り入れているのも大きな特徴だ。同社は商品ごとに「店頭陳列コンテスト」を開催。薬局やスーパーなどの販売店を対象に「いかに消費者の目をひく陳列ができるか」を競い合うコンテストを行なっているのだ。各販売店は優勝を目指してPOP作りや配置などに工夫を凝らす。このイベントは販売店のモチベーション向上だけでなく、結果的に他メーカーを差し置いた陳列の実施につながるため、消費者への訴求も兼ねることができる。

老舗企業の販促手法は様々である。「有名ブランドは知名度が高いから勝手に売れるんだ」と言う人は多いが、成長理由はそれだけではない。それぞれのブランドにあった戦略を考え抜き、地道な努力を続けているからこそ、競合に勝ち続けることができるのではないか。

日本が近代化に舵を切り150年。これから200年、300年と歴史を重ねるなかで勝ち続ける企業は、どんな企業だろうか。10年先も読めない経済環境のなか、その予測をするのは容易ではない。しかしどんな環境でも生き残るのは、他社にはない独自の戦略を立案し、着実に実績を重ねていくことのできる企業である。これだけは間違いないだろう。本年を、長い繁栄の礎となる年にしていきたい。

【参考】
花王 コーポレートサイト
http://www.kao.com/jp/

 

KINCHO コーポレートサイト
http://www.kincho.co.jp/

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