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デジタルの時代だからこそのストーリーテリング

2018.02.07

#イマジナ・ブランディングニュース

近年のIT、またデジタル技術の進化には目覚しいものがある。そのなかでも特に「人口知能(AI)」は大きな盛り上がりを見せており、業種を問わず様々な分野で研究と開発が進められている。また最近では「シンギュラリティ」という言葉があらゆる場所で聞かれるようになった。これは「技術的特異点」と呼ばれ、一般的には「AIが人間の知能を超えるポイント」として知られている。一説によるとそれは2045年頃に訪れると言われており、シンギュラリティを迎えた時、ビジネスの環境は激変するというのだ。
またこれに付随して「AIの台頭でなくなる仕事」といった話題も度々ニュースになっている。自分の職務はどうなのか、不安と興味を持っている方も多いと思うが、これは個人のキャリアだけの問題ではない。「AIの台頭で必要とされなくなる事業」も存在すると考えるのが自然だろう。技術の飛躍的な進化が10年、20年先の未来にどのような影響をもたらすのか。専門家の間でも意見が分かれているが、ビジネス環境が大きく変化するのは避けられない事実なのかもしれない。

AIの発展はあらゆる分野で応用されている。例えば広告やマーケティングの領域では昨年「ドールのフルーツカクテル缶をAIが売り切った」ニュースが話題になった。

ドールはフィリピンにて、フルーツの缶詰のデジタルキャンペーンを実施。その際、AIに目標と予算を入力して自身で管理を行うよう設定したところ、自動的にデジタル広告の入札、出稿、クリエイティブの最適化を実行。目標を上回る成果をあげたというのだ。目標達成における広告の最適化はベテランの人物でも難しいものがあるが、AIは必要事項を入力するだけでそれをやってしまったのだから驚嘆に値する。「人間心理を相手にするマーケティング領域でもAIは力を発揮する」という、学びの多いニュースであった。

では様々な仕事がAIに置き換わっていくなかで、人間はどのような役割をこなし、事業を展開していけば良いのだろうか。はっきりとした答えをここで出すことはできないが、どんな仕事にも共通する「人間だからできること」の一つに「ストーリーテリング」があると思う。

「ストーリーテリング」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは文字通り「物語を伝える」ことを指している。人間は太古から、道徳や規範など生きていく上で守らなければ行けないこと。犯してはならない間違いを物語に変えて伝えてきた。神話や昔話には含蓄や教訓が含まれている場合が多いが、これはストーリーテリングの代表例とも言えるだろう。大切な教えを物語にして伝えてきたのだ。

人間はある事象に関して、一つひとつを切り離して記憶するのではなく、要素同士を関連づけて記憶していくことは最新の脳科学でも証明されているが、神話や昔話はこれをうまく応用している好個の例である。単に「盗みをしてはいけない」と言葉で教えるのではなく「盗みをして後悔した人物の物語」を聞かせることで、教育にストーリーを活用してきたのだ。

ビジネスの文脈で「ストーリーテリング」を使う場合、「相手に印象付けたい点」を物語として活用するのが一番良いとされている。例えば、ルイ・ヴィトン。今では誰もが知るブランドだが、同ブランドを高級ブランドに押し上げたのは一つのストーリーが背景にあった。

それは1912年のタイタニック号沈没事故。この一件は映画にもなっているので多くの方がご存知だと思うが、事故があった際に、ルイ・ヴィトンの旅行トランクにつかまり助かった人がいたと言われているのだ。さらには事故から数十年後、沈没した船内の遺品を引き上げたとき、ルイ・ヴィトンの旅行トランクも一緒に引き上げられた。その時中身を調べてみると、全く浸水がなく、荷造りされたままに荷物が残っていたという。

ルイ・ヴィトンの「安全・丈夫な旅行カバン」というイメージは、このストーリーに起因していると言われている。もちろんそれ以前から旅行カバンとして知られていたが、このストーリーがブランドの地位を確固たるものにした。これ以降、富裕層を中心に購入者が増加。現在のブランドイメージを持つに至ったとされている。

この話は実際のところ、本当かどうかわからない。しかし、この具体的なストーリーがブランドの補強をしていることは一つの事実なのだ。「タイタニックの話、知ってる?」というふうに、昔話のように人から人へと伝えられてきたのだろう。一般的にビジネスのストーリーテリングでは「イメージが想起されやすい」「共感されやすい」「覚えやすい」が大事だと言われているが、このエピソードはどの条件も満たしている。シンプルで力強いメッセージが、ブランドの魅力を作り上げているのだ。

日々の業務で行うプレゼンやマーケティング、そしてリクルーティングにいたるまで、あらゆる場面でストーリーテリングの手法は応用できると思うが、これは「AIにはできない、人間ならではの仕事」ではないだろうか。AIは過去のデータから最適解を見つけ出すことに圧倒的な強みを持っているが「ストーリーを介してブランドの魅力を伝える」という一見不合理な選択は、不慣れだと思うのだ。それにストーリーは人間同士で言葉が交わされ、感情に訴えかけるからこそ説得力を持つという不思議な側面を持ち合わせている(前述のタイタニックの話を聞いた時に「データや根拠がないから全く信用できない」と考える方は少ないだろう)。

日進月歩のAIの進化。今後のブランド戦略はAIだからできることと、人間だからできることの掛け合わせと見極めが非常に重要になってくるだろう。「自分の仕事や業種が奪われる」と悲観するのではなく、応用をすることで、新たな事業の発展につなげていきたい。

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