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CSRと経営を合致させ、新たなファンづくりを目指せ

2018.03.06

#イマジナ・ブランディングニュース

先日、「グリーン・オーシャン大賞(株式会社オルタナおよび一般社団法人CSR経営者フォーラムが主催)」という賞を、化粧品ブランドのLUSH(ラッシュ)が受賞した。「グリーン・オーシャン大賞」とは、社会課題を起点にしたビジネス創出を実現した企業や団体の事例を表彰するもの。本賞の審査基準は課題解決力(ソーシャル・インパクトへの期待)、発展性(ビジネスとしての発展性)、協働力(NPOなど外部他者との連携)である。

LUSHは2016年に、東日本大震災の被災地である、福島県南相馬市の南相馬農地再生協議会が栽培・搾油した菜種油「油菜ちゃん」を使用して石鹸を開発。「つながるオモイ」という商品名にて、数量限定で日本全国に販売展開した。また、2017年3月11日には世界49の国と地域で、定番商品としての販売を実現したというのだ。

福島県生産の商品に対する風評被害は、完全に消え去ったとはまだ言い難い。安全が確認された商品でも、原発の影響で購入が控えられるというケースも少なからずあるようだ。そのような状況を改善すべくこのような企画を立案し、実行。自社のビジネスと社会問題の解決をつなげようとするLUSHの姿勢が、今回高く評価されることになった。この取り組みは話題を生んだだけでなく、消費者に対するLUSH自身のブランド価値を引き上げるものになったと言えるだろう。

現在、自社のビジネスとCSR活動を同様のベクトルで捉え、事業の成長と社会問題の解決を並行して行なっていく新たな経営スタイルが、徐々に浸透しつつある。CSRとはCorporate Social Responsibility の略で、日本語では「企業の社会的責任」と訳される。「イメージアップのために企業の営利活動の『片手間』で行うもの」と捉えている方々は多いかもしれないが、そのような考え方はすでに古いものとなりつつあるのかもしれない。LUSHのようにCSR活動を事業の方向性と一致させることで、自社独自のブランド価値を底上げし、業績向上につなげることもできるのだ。

このような「CSRと経営の一致」という考え方は、日本よりも欧米の方が進んでいる傾向にある。2011年にはハーバード大学マイケル・E・ポーター教授らが「CSV」という新たな考え方を提唱した。CSVとは「Creating Shared Value」の略で「共通価値の創造」を意味している。その趣旨は「社会問題を企業の事業戦略と一体のものとして扱い、企業の持つスキル・人脈・専門知識などを提供しつつ、事業活動として利益を得ながら、社会問題を解決。企業と社会の双方が、その事業により共通の価値を生み出していく」というもの。これはまさに、LUSHが行なっている活動と同様の理念であるだろう。

またEUの政策執行機関である欧州委員会(EC)では、2011年にCSRの定義を変更。「企業が社会に与える影響に責任を持つこと」と再定義し「法律、社会的パートナー間の労働協約の尊重は前提の上で、社会、環境、倫理、人権、そして消費者の懸念を企業活動と経営戦略の中核に統合していくこと」と発表している。すなわち、CSRは単なる「社会的貢献性を帯びた活動」にとどまるのではなく「全部含めて経営戦略の中核に統合されるもの」という認識になりつつあるのだ。EU加盟国ではこの考えを元にビジネスが展開されているが、日本ではまだ馴染みが薄いだろう。

実際に、そのような経営方針を取り入れることで成長を果たしているグローバル企業がある。スイスに本社を置くネスレだ。ネスレは前述のCSVを経営思想に取り入れ、実際の経営計画を立案している。
ネスレは世界189カ国で事業を展開。本社のあるスイスでの売上は全体のわずか2%。売上の98%はスイス以外での売り上げだという。そのため、進出した先の地域の課題についても積極的に向き合い、解決を目指した事業活動を行なっているという。

ネスレのコーポレートサイトを見ると「共通価値の創造を基盤として」というページに「未来に向けて、共通価値の創造はネスレの事業活動の指針となる基本的な原則であり続けます」とはっきりと書かれている。それと関連して同社は「栄養」「水資源」「農業・地域開発」の3分野において価値創造を促進。どれもが世界的に重要な課題だが、真正面からこれら諸問題と向き合うと同時に、新たな事業機会を模索している。
実際に同社は、2016年に母乳代替品メーカーとして初めて「FTSE4Good(フィッチフォーグッド:社会的責任の遂行状況を判断要素として投資をする際の世界的指標)」に5年連続で選出。他にも数多くの指標でその活動が評価されている。

これらがネスレの資産、すなわち長期的なブランド価値を築いていることは言うまでもないだろう。ネスレは世界有数のグローバル企業のため「資金力や開発力があるからこそできる」という意見もあるが、そもそも社会的責任の遂行を企業経営に組み込もうという意思がなければ、このような成果は決して生まれない。新たな経営の舵取りを実践することで、新たなブランドの構築、そして新たなファンの創出を、同社は実践し続けているのだ。

21世紀に入り、企業のあり方は大きく変わりつつある。経済的豊かさだけを追い求めた20世紀型の「戦い方」はもう古いものになりつつあるのかもしれない。社会問題の解決と自社の経営的目標を近づけるかが、ひとつの大きなトレンドになりつつあるのだ。そして実際にそうすることに成功した企業が、本当に愛される企業、商品、そしてブランドとなっていく
このトレンドを、自社はどう受け止めるべきだろうか。「自分たちは関係ないから」という姿勢では、いつの間にか時代の流れに取り残されている、なんてことにもなってしまうかもしれない。

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