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企業の本音を伝えることでブランドを確率させる「メッセージ広告」の役割

2018.04.19

#イマジナ・ブランディングニュース

4月10日、ある広告が読売新聞朝刊に掲載された。「親愛なる安室奈美恵様」というタイトルで始まり、代表取締役社長ルーカス・セイファート氏の直筆サインで締められるその文面は、なんとアパレルメーカーの「H&M」が安室奈美恵氏に実際に宛てた手紙。便箋が広告として掲載されたのだ。
「安室奈美恵」というアーティストを知らない方はいないだろう。老若男女を問わず、多くの方々から支持されている日本を代表する女性歌手の1人だ。10代から芸能活動をはじめ、今年の9月に芸能界引退を発表したことで話題となった。H&Mはこの引退を前に、「商品のコラボレーションをしたい」と、手紙でラブコールを贈った。

手紙を新聞広告で公開するのは、H&Mにとって初めての取り組み。その狙いを「(通常であれば新聞広告には)できあがったイメージを公開するのが普通だが、安室さんにご出演頂きたいと思ったその『思い』の部分を、皆さまにお伝えしたいと思った」と、H&Mの広報担当者はメディアで語っている。
その願いが通じたのか、安室氏サイドはオファーを快諾。日本からアジアへブランドを発信する企画「Namie Amuro x H&M」が両者の間で立ち上げられた。本企画は安室氏がキャンペーンアンバサダーを務め、4月後半からトップス、ボトムス、ワンピース、ジャケットなどの限定コラボレーションアイテムを、全国の店舗とオンラインストアで販売開始するという。

ここ数年、H&Mに限らず、企業が新聞広告などを通じて、自社のメッセージや意見を発信するケースが多くなっている。今年2月14日のバレンタインデーには、チョコレートメーカーのゴディバジャパンが「日本は、義理チョコをやめよう。」と題した新聞広告を掲載。職場や学校などで一種の「強制的風習」となっている義理チョコのプレゼントをやめようと、チョコレートメーカー自らが呼びかけた(こちらの広告にも同社代表のジェローム・シュシャン氏のサインが書かれている)。
またこのような広告は日本だけではなく海外でも行われている。アパレルメーカーのパタゴニアは自社の商品写真に「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」というキャッチコピーを加えた広告をニューヨークタイムズ誌に出稿。各所で話題となった。パタゴニアは環境問題に積極的に取り組む企業としてブランドの姿勢を確かにしている。「このジャケット1着を作るために大きな資源が使われている。本当にこれが必要か、自分の購買欲を満たすためだけに買っていないか、よく考えてほしい」というメッセージを、新聞広告を通じて消費者に発信した。

このような広告メッセージの発信は一昔前ならば決して見られなかっただろう。H&Mはまだ交渉がまとまっていない段階でのオファーの手紙であるし(当たり前だが、表に出ることはない情報だ)、ゴディバジャパン、パタゴニアの広告は、自社の商品の売上低下、ひいてはマーケットの縮小につながりかねない広告である。普通であれば、「義理チョコを贈ろう」や、「今年の防寒対策にもう1着」を合言葉として、新聞広告やテレビCMなど購買意欲を喚起する各種広告が展開されるはずだ。しかし、それとはあえて真逆のメッセージを発信することで話題を呼び、多くの賛同者を獲得。それどころかTwitterやFacebookなどのSNSで「バズ」り、Webメディアに取り上げられるなどの相乗効果も巻き起こした。

企業として自分たちの姿勢、メッセージを発信する。しかもそこに綴られる言葉は、ブランドの飾らない本音だ。このような「組織の秘めたる思い」を広告で発信するのは少数ながらも行われたことがある。話題になったものとしては、2000年に新聞に掲載されたユニクロの「ユニクロはなぜジーンズを2900円で売ることができるのか」という広告。こちらは文字のみのシンプルなデザインで、自社のビジネスモデルを説明、史上最低価格を目指しているというビジョン、またシンプルを愛する人にだけ着てもらえればいいという思いを言葉にしている。しかし、これに続く施策を行うブランドはいなかった。広告を通じて本音をさらけ出す潮流ができたのは、ここ数年のことだろう。

この流れは、現代が「嘘がつけない」時代になりつつあるというのが背景にあると筆者は考える。脚色性に帯びた広告を掲載しても、企業が意図せずともその広告と反した行動をとってしまえば、それらはネットを通じて一気に拡散されてしまう。情報が広がれば広がるほど、「裏切られた」と感じる消費者は増えていくのだ。それならば、かえって自社のスタンスや理念を徹底的に示すことで、自分たちを愛してくれる顧客との絆を深めればいい。もちろん細心の注意を払わなければ誤解を招くかもしれないし、場合によっては同業者を敵に回してしまうかもしれない。ゴディバジャパンやパタゴニアの例はまさにその危険をはらんでいるだろう。しかし、その企業姿勢に共感する新たな顧客が生まれる可能性もあるのだ。これまでチョコレートを提供してきた企業が、「義理チョコはあげなくていい」という解を提示することで、悩んでいた女性を救うことができるかもしれない。それはまさに、問題解決や課題解決といったビジネスの本質を突くと同時に、自社のブランドアイデンティティを強化していると言えるだろう。

足早に、企業広告のひとつの動向を見てきた。もちろんメッセージの発信は予算のかかる新聞広告だけでなく、自社で発行する冊子やコーポレートサイト、商品紹介サイトなどからも行うことが可能だ。あえて企業の、ありのままの思いを言葉にすることで、自社の立ち位置を確立すると同時に、顧客との繋がりを深めることができる。企業と消費者のこれからのコミュニケーションは、脚色ではなく「本音」を伝えることから始まるのかもしれない。

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