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そのM&Aに、ブランドストーリーはあるのか

2018/11/20(最終更新日:2021/12/13)

ブランディング

「結果にコミットする」。インパクトのあるキャッチコピーとともに、一気に売上を伸ばして成長を実現している企業がある。完全個室のプライベートジムを中心とした事業を運営する、ライザップグループだ。

同社の創業は2003年。創業当初は健康コーポレーションという社名で、健康食品等の通信販売を手がけていた。2007年には、ダイエット食品がヒットし、売上100億円を突破。そして2012年4月には現在の主力事業となるプライベートジムをスタートする。その後の成長は、多くの人が知るところだろう。健康志向の高まりや、有名人のダイエットのビフォーアフターを示したテレビCMが大きな反響を呼び、開始3年から同事業の売上が100億円を突破した。

 

それまでジムといえば、「運動する場所」「運動器具を提供する場所」という認識であった。しかしライザップはここに、コンサルティングの視点と人と人のやりとりを掛け合わせる。「専門のトレーナーによる、徹底した指導と管理」という付加価値をつけ加えることで、同社は新たなビジネスモデルの確立を実現した。「ジムに通い、ハードワークをして痩せる」ことを、ときには「ライザップする」と表現されるほどに(そのジムがライザップでなくとも)、同社の知名度とブランドは、飛ぶ鳥を落とす勢いで広く深く浸透していったのだ。

 

しかしここにきて、その成長に暗雲が立ち込めている。今月14日、2019年3月期の連結業績予想を修正し、最終損益が当初の159億円の黒字から、70億円の赤字に転落すると発表。記者会見で決算内容を説明したライザップグループの瀬戸健社長は、「期待を大きく裏切る結果となってしまいました。この場をお借りして、お詫び申し上げます」と、深々と頭を下げた。

 

同社が赤字に転落した大きな理由として、「積極的なM&A」がある。多くの企業を合併・吸収し、事業ドメイン、そしてグループの規模拡大を推し進めていった同社だが、グループ企業の経営改善が遅れてしまったことが今回の赤字につながった。前述の個人ジム事業は好調だが、それ以外の買収した企業の経営再建がうまくいかなかったのだ。

 

ライザップグループの連結子会社を見てみると実に多様な業種があることがわかる。衣料品販売を手がけるジーンズメイト、地域密着型のフリーペーパーを発行するぱど、北海道でアミューズメント事業を営むSDエンターテイメントなど。様々な業界の企業があり、その数はなんと30近くにもなる。買収した企業のなかには赤字会社も多く、それらの再建に関してもたくさんの期待が寄せられていた。しかし結果は、前述の通り。「結果にコミットする」とうたってきた同社だけに、今回の結果は多くの関係者が残念だと感じるものであった。しかし、伸びしろは大きくあるのも事実。業績への期待、将来への期待は、より大きなものになっていると言えるだろう。

ライザップグループに限らずここ数年、日本企業のM&Aが盛んだ。国内のM&Aはもとより、日本企業が海外の企業を買収する国外のM&Aも活発に行われている。今年の1~10月の海外企業買収は件数、金額とも過去最高を更新したというニュースも流れた。この背景には、日本の低金利、好景気という資金調達がしやすい環境が関係している。将来への投資も含め、今のうちにグローバル展開をしようと考える企業が多いのだ。
このような傾向はここ数十年のことで、新たな展開を考える際に、M&Aはひとつの戦略として定着してきたと言えるだろう。M&Aを行う際、また新たな組織を作る際には、会計面の数字やビジネスモデルに注目が集まり、それが納得のいくものだったら買収に踏み切る、というケースが多いのではないだろうか。
しかし、本当に大切なのはそれだけではない。組織文化の統合、各ブランドの統制といった「人」に関わる部分もしっかりと注意を払い、「目に見えない部分」にもエネルギーを注がなければ、本当に意味でのM&Aは完了しないのだ。

 

ライザップは多くの企業を買収して、事業ドメインの拡大を実現してきた。しかし、業界は様々。そのため商慣習も違えば、組織の文化も違うので、グループを統括する経営陣の舵取りが難しくなってしまうのは容易に予想できる。経営を再建するためには、会計やファイナンスにおける目論みと合わせて、カルチャーや人の意識の統合、ひいては組織のブランディングがとても重要になっていくのだ。

なぜブランディングが重要なのか。それは上記のように舵取りをより確実に行うために加えて、親会社や主流事業とのシナジーを発揮できる可能性が高くなっていくからだ。
M&Aで積極的に業績を伸ばしている企業では日本電産が有名だが、同社は徹底的に買収候補を調べ上げ、自社が買う意味があるかどうか、また自社の文化に合うかどうか、というのを見極めているという。反対にいえば、それに当てはまらない企業であれば買収をしないということ。自社が買う意味があるか。すなわちそこに、理念や想いをベースとして、企業文化やビジネスモデル、会計、ファイナンスをすべて含めて、買収に至るまでの1本のストーリーがあるか、という点を非常に重視しているのだ。

 

ライザップに限らず、M&Aを考えている企業は多いだろう。しかし、そのときに一度、企業文化の違いや、意識の統制、といったものをじっくり考えてみてはいかがだろうか。その差異や、各会社の創業者の想いに、今後の組織の方向性やブランディングのヒントが隠されていることと思う。M&Aにおいても、矛盾のない1本のストーリーが出来上がった時、本当のM&Aは形になるのだと思う。

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