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ブランディングの種は、「今の組織」に潜んでいる

2019/01/11(最終更新日:2021/12/09)

ブランディング

「平成最後」の1年が終わり、新たな時代へと突入した2019年。すでに仕事も始まり、「今年はどんな年になるだろうか」と、期待に胸を抱きながら働いている人も多いだろう。

ここ数年、ビジネスの現場において、顧客に提供すべきモノ・コト、すなわち企業が生み出す付加価値の「あるべき姿」は、大きく変わりつつある。かつてモノが足りていない時代は、ひたすらモノをつくるだけで、ビジネスが成り立っていた。
しかし時代の流れとともに、あらやる産業における商品のコモディティ化が加速。コモディティ化は、「市場に流通している商品が個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの商品を購入しても大差がなくなる状態のこと」と説明される。市場投入時には高付加価値として知られていた商品でも、時間が経てば他社の追随があり、低付加価値商品へと変わってしまうのだ。
また現在はモノに溢れている時代。そのため、「商品の機能だけでなく、その会社から何かを購入したとき、もしくはその商品を使ったときに、どんな感情が芽生えるか」という「体験」が重視されるようになってきた。極端に言えば、「あなたの会社の商品を使うことで、私は良い気持ちになれますか」ということ。ポジティブな気分や気持ちになったものは、その記憶が引き継がれ、人々の口の端にのぼり、多くのファンをつくっていく。たんなる「利便性」だけでなく、使用者の「気持ちのあり方」まで変えられるような商品・サービスが求められているのだ。

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もちろんこのような商品・サービスを即座に開発し、顧客体験を劇的に変えるというのは至難の業である。しかし、組織が大切にしたい想いをきちんと整理し、育てていくことで、「あの会社、他とは違うな」「あの会社、なんかいいな」と周囲から思われるようになることは、決して不可能な作業ではない。そしてそのような形で組織が変われば、生み出す商品やサービスの内容も変わっていく。このようなコモディティ化しにくい自社の特長に立脚した差別化への取り組みは、他社が追随できない強みとなり、その会社独自のブランド形成につながっていくのだ。

事実、ビジネスモデルが他社と似通っていても、自分たちの想いを差別化要素まで落とし込み、他とは違う独自性を発揮している企業は多くある。
例えば北海道を拠点とするコンビニチェーン「セイコーマート」はその一例だろう。コンビニは寡占化が激しい業界であり、差別化が難しい業態。そのため大手とその他のシェアは圧倒的な差が開く傾向にある。しかし、セイコーマートは大手を抑えて、道内で圧倒的シェアを誇り、JCSI(顧客満足度指数)コンビニエンスストア部門の6回の調査において、5度の1位に輝いている。全国での知名度はないが、地元の人から愛されているコンビニなのだ。

セイコーマートの強みは、北海道を知り尽くしている点にある。例えば価格帯。東京の所得と北海道の所得を比べると差があり、道内特有の経済の流れもある。北海道に本社を置き展開する同社は、そのような事情を察知しやすいポジションにいるため、道民に合った価格帯で商品を提供することができる。これは全国一律で展開する大手コンビニチェーンではできない施策だろう。
また商品数の多さも大きな強みだ。同社はプライベートブランドとしてお弁当や惣菜などを多く扱っているが、店舗数が大手に比べて少ないため、少量多品を提供することができる。また作りたてを提供すべく、店内調理を多くの店舗で行っているのも大きな特長だ(これは離島に住む人にも美味しい料理を届けたいという想いで始めたとのこと)。このような「規模の小ささ」を活かした戦略を取ることで、地域に密着したビジネスを成功させている。
もともとセイコーマートの始まりは、「どうやったら地元の自営業者が生き残ることができるか」を考えたことがきっかけ。「地域で生まれ育った人が地域で仕事をし続けるために、自分たちが存在している」という思想が、根底に流れているのだ。この想いを今でももっているからこそ、地元の人から愛されるブランドと、ブレのない戦略をつくることができるだろう。

差別化やブランドづくりというと、「何か新しい商品・サービスを開発しなくては」と考える人は多い。しかし実はその種は、創業者や会社の想いや商品・サービス、ひいては現在の組織のなかに潜んでいる。ブランディングを行う上で大切なのは、「今ないものを、どこからか持ってくる」よりも、「手持ちの資産のなかで、きらりと輝く部分を見つけ、磨いていく」ことが大切なのだと常々思う。セイコーマートは「地元への想い」を大切にし、活かすことを考えたため現在の成功があるが、地元をなおざりにしていたらどうなっていただろう。

2019年はどのような年になるだろうか。「独自の付加価値」が切に求められる時代において、自分たちのビジネスの「本質」を捉え、潜在的な価値を引き出していく作業は、あらゆる組織にとって不可欠になっていく。今ここから、次の10年、20年に続くような企業とブランドをつくっていきたい。

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