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日本企業がグローバルで活躍するブランドをつくるには

2019/03/14(最終更新日:2022/01/14)

ブランディング

先日、ブランドの評価、ならびにブランドの有効活用のコンサルティングや支援に取り組んでいる世界的企業インターブランドの日本支社であるインターブランドジャパンが、ブランド価値ランキング「Best Japan Brands」2019年版を発表した。
これは、本体である米国のインターブランドが公表している、グローバルブランドを評価する「Best Global Brands」の国内版。「Best Global Brands」は海外売上高比率が30%以上あるブランドを取り上げる「Japan’s Best Global Brands(JBGB)」と、30%未満の「Japan’s Best Domestic Brands(JBDB)」 の2つで構成されているが、評価手法は全ランキングともに同じ。そのためこれらを見比べることで、様々な気づきが得られると思う。

まずグローバル版である「Best Global Brands」に関して見てみよう。こちらに関しては2018年のバージョンが最新である。ランキングトップ10の社名を1位から順に並べると、以下のようになる。

 

・アップル
・グーグル
・アマゾン
・マイクロソフト
・コカコーラ
・サムスン
・トヨタ
・ベンツ
・フェイスブック
・マクドナルド

次に国内のランキングである「Best Japan Brands」の、海外売上高比率が30%以上あるブランドを取り上げる「Japan’s Best Global Brands(JBGB)」を1位から順に見てみよう。こちらは2019年版である。

 

・トヨタ
・ホンダ
・ニッサン
・キャノン
・ソニー
・三菱UFJ銀行
・パナソニック
・ユニクロ
・ニンテンドー
・スバル

このような順位になっている。

年度に違いはあるが、評価手法は一貫して「将来どれくらい収益を上げると予想されるか」というのが一つの基準になっている。それらを構成する指標として、ファイナンス、ブランドが購買意思決定に与える影響力、ブランドによる将来収益の確かさという観点を列挙し評価。価値を金額で算出している。
これら指標はすべてブランドを形作る「信頼」に関わっているため、本企画は企業の「総合的なブランド力」が試されるものだと言えるだろう。必然的に知名度の高い企業がランクインするため、ここに記載されている企業名は多くの方が知っているものになったのではないだろうか。

 

このランキングを見ると、日本企業が抱える様々な問題が見えてくる。
まず、グローバルのランキングのなかで、日本企業がトヨタの1社のみであることがわかると思う(他は7社がアメリカ、韓国とドイツがそれぞれ1社)。日本企業が次にランクインするのは20位のホンダ、その次は40位の日産、55位のキャノンとなっており、上位50社のうちに日本企業のランクインは3社のみなのだ。「Best Japan Brands」上位の企業でもグローバルランキング100位内に入っているのは、ほんのわずかである。

 

次にわかるのは、どちらのランキングにおいてもITやテクノロジー関連の企業が全くランクインしていない点だ。これはグローバルブランドランキングの10社中5社はIT、テクノロジー関連企業であることと対称的だろう。
またランクインしている日本企業は歴史ある企業が多く、新興企業やベンチャー企業と言えるものは全くない。上記のなかでもっとも近年創業されたのはフェイスブックの2004年、次はアマゾンの1994年であるが、そのような「年次は浅いが勢いのある」企業が日本には少ないことがわかるだろう。

 

これらから見えてくるのは、日本は新興企業やベンチャー企業のブランド力が高くはないということ。また業種はメーカーが多く、評価されるITやテクノロジー関連企業はないということ。そして何より、グローバルにおける日本企業の存在感は小さなものであるということだ。これは端的に言ってしまえば、「日本企業の勢いが衰えている」とも言えるだろう。

果たしてこのような状況をどう変えていけばいいのだろうか。ひとつ、ヒントになるものの見方がある。「企業の生産性」に関する見方だ。
生産性向上は各所で叫ばれているが、生産性を3つの要素に分解してみる。
1つ目は人的資本。これは雇用人数とその稼働日数などで算出できる指標。2つ目が物的資本。端的にいうと設備や機械などへの投資である。そして3つ目が全要素生産性と呼ばれるもの。これは、人的資本と物的資本の活用だけでは説明がつかない要素のことを指し、技術、ブランド、デザイン、工夫、教育などが含まれる。同じだけの人的資本と物的資本をかけた同一機能の商品があっても、全要素生産性に差があれば、価値に差がつき、成長速度にも差がついていく。

 

これらの要素において、日本企業は3つ目の全要素生産性が際立って低いと言われている。確かに日本人は勤勉で優秀だと言われているし、設備も世界基準で言えばトップレベルのものが揃っている(人的資本、物的資本が高い)。しかしそれでも競争力が弱いのは、全要素生産性が低いからだろう。これは裏を返せば、企業または商品の価値をあげる工夫が弱く、グローバルで戦えるようなブランドが育っていかないことを意味している。反対にこの点を強化すれば、業種を限らず世界に名だたる企業が増えていくことは容易に予想される。

日本企業のブランド力が弱いのは前述のランキングから判明しているが、「なぜ」を考えていくと、「ヒトもモノも悪くない。しかし、それらを価値に変える力が弱いのでは」という一つの仮説が見えてくる。
「良いものをつくれば市場で受け入れられる」時代はとうに過ぎて入いる。これからは良いものを作りながらも「ヒト・モノへの投資」の先にある「投資対効果を意識的に価値に変えていく=ブランドの育成」を、真正面から考えていかなければならないのだ。

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