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「未来への可能性の発信」が、魅力的な組織をつくる

2019/07/18(最終更新日:2021/12/09)

ブランディング

今年度に入り、2020年度新卒採用の選考が解禁された。新卒をはじめとした若手人材の採用は、すべての企業にとって成長の要である。5月、6月までに内定を出し早々に採用活動を切り上げる企業もいたり、今現在も選考活動を続け、ひとりでも多くの学生と出会おうと尽力する企業もいたりと、その状況は様々だろう。

2019年(2020年卒)の就職前線は、例年以上の売り手市場と言われている。新卒・中途採用関連サービスを提供するディスコによると、本年6月1日時点の内定率は71.1%。前年比で5.4ポイント上昇した。その一方で採用活動を順調に行っていると回答した企業は25%、苦戦していると回答した企業は48%となっている。実に新卒採用を行っている企業の2社に1社が、採用がうまくいっていないと答えているようだ。

実際のビジネスの現場でも「人を採用できない」という声を聞くことがままある。景気の変動に加えて社会環境の変化が、採用活動の厳しさを助長しているようだ。
その変化のなかでももっとも大きな問題は、「少子化による学生の減少」だろう。この問題が取り沙汰されて久しいが、その影響の大きさは計り知れないものがある。例えば、少子化問題に詳しい横浜銀総合研究所主任研究員である遠藤裕基氏は、メディアのインタビューにこう答えている。
「22歳人口は2000年代を通じて減少傾向で推移した後、10年代はほぼ横ばいでした。それが20年代になると再び減少トレンドになります。22年以降は毎年数万人ずつ減っていきます。ここ数年、新卒採用は売り手市場が続き、企業は計画通りに学生を採用するのに苦慮してきましたが、これからはさらにきつくなるでしょう。ここまでを人材不足時代だとしたら、人材枯渇時代の始まりです」。

「人材枯渇時代」という衝撃的な言葉が述べられたが、問題はそれだけではない。少子化のようなマクロの変動だけでなく、ミクロの変動、すなわち就活生一人ひとりの価値観の変化も今後は考慮しなければならないだろう。近年は掲示板やSNSの発展にともない、個人が企業の情報を容易に手に入れられるようになった。そのような社会環境において、ポジティブなイメージをまとっている企業はプラスの心象を与えることができるが、そうでない企業はゼロかマイナスの心象を与えてしまう、という状況になっている。しかもこのイメージは段階的に上下をするのではなく、いわゆる「SNSの炎上」などで一夜にして地に落ちることもある。就活生や若手人材は規模の大きさだけで企業を見ているわけではない。大手企業、有名企業というブランドがあるからといって採用活動が安泰かといえば、決してそうではないのだ。

このような逆風が吹く反面、ポジティブなニュースもある。例えば、テクノロジーの発達により、日本全体で見れば大きな可能性が広がっていることも事実だ。

とくにAIやIoTの発達は、その最たる例だろう。政府は少子化による人材の減少などを含めた社会環境変化への対応として「Society 5.0(ソサエティー5.0)」を掲げており、政府サイトでは以下のような説明がなされている。
「『Society 5.0(ソサエティー5.0)』とはサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)の次にあたる時代を「ソサエティー5.0」と呼ぶ。IoT社会やAIを活用した、人間とロボット、またデジタルサービスが共存するような社会だ。このようなテクノロジーの発達は、日本社会のみならず、人材不足に悩む企業を助けることも大いにあるだろう。

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またテクノロジーの発達とは別に、自社の事業を見つめ直し、未来に向けて新たな可能性を見出すことで、新たなビジョンを描いた企業も存在する。建築系廃材の処理を行う石坂産業という会社は、そのひとつだ。
埼玉県にある石坂産業は、かつて周辺住民に訴訟を起こされたこともある企業だ。1999年頃、「所沢周辺の野菜がダイオキシンに汚染されている」とメディアで報道される。後日、この報道は誤りであると分かり、いったん騒動は収束したように見えたが、多くの農家が風評被害を受け、さらにこの騒動の原因は、「近くに産廃処理施設があるからだ」と考える人も多くいた。2001年には、近隣住民が埼玉県に対して、石坂産業の産業廃棄物処理業の許可を取り消す訴訟を起こす事態にまで発展したという。

このような事態において、2002年に社長に就任した石坂典子氏は会社を改革することを決意。本来ならば「ゴミの処理」という社会にとって良い事業をしているはずが、うまくそれが社会に伝わっていないため、このような状況が生じていると考え、様々な変革に取り組んだ。

もっとも大きな変革は業務形態の変更だ。焼却炉を廃止し、廃棄物のリサイクル化や原料化など、社会的価値の高い事業を強みとした形態にシフトすることに注力。取り組みが評価され、2013年には経産省から「おもてなし経営企業選」に選出され、事業の展開や組織力の高さが注目を集めた。
また組織内部では、自分たちが将来、社会に対して何を行っていくことができるかを可視化する取り組みを実施。そのひとつが、「ビジョンマップ」の制作だ。
これは50年後、石坂産業がどのような社会を作っているかを1枚の絵にまとめたもの。石坂産業は「『人と自然と技術の共生』で実現する エネルギーエンタープライズ”Ishizaka2067!”」と題し、石坂産業の事業によって変化した街・社会の模様を描いた未来図を制作。高品質なリサイクル技術によって廃棄物を再資源化する。さらに、その処理によって生まれた排風、振動、騒音をエネルギーに変えていく。石坂産業は廃棄物そのものをなくすことで、「自然との共生」という未来に向かって邁進している。

採用をはじめとした組織の運営における環境の変化は、厳しさを増している。しかし、政府や石坂産業の取り組みは、どのような逆境においても明るい未来を描き、組織を魅力的なものに変えていけることを教えてくれる。
これからは、どんな状況にあっても明るい未来を描き、成長を確かなものにしていく企業が生き残っていくだろう。反対に、ビジョンがない企業は、企業体力があっても魅力的な企業になることは難しい。将来を描き、社員とともに共有することで、変えられることがある。様々な人材とともに組織を作り、未来を実現する企業として、次の一歩を踏み出していきたい。

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