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SDGsをブランディングの起爆剤に

2019/11/13(最終更新日:2020/06/30)

ブランディング

「SDGs」が話題となっている。SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、「持続可能な開発目標」と訳される。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における、各国が取り組む2016年から2030年までの国際目標だ。その目標数は17。貧困、飢餓、保険から始まり、気候変動への対処や平和について、また陸・海洋における資源についての言及など、現在生じている社会・環境問題・経済格差などをテーマに目標を策定し、一定の成果を上げることを目指している。
日本ももちろん、このSDGsを推進する一国だ。政府では関係省庁が連携し、2016年5月に、内閣に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を立ち上げたという。

SDGsについては国だけではなく、2017年、2018年頃から一部上場企業などの大手から始まり、最近では未上場の中堅〜中小企業なども取り組みを表明するようになった。その度合いは様々だが、実際に自社の事業に取り入れて、関連する商品やサービスをつくるケースも増えているようだ。2019年後半の現在も急速にその影響は広まっているため、これからより多くの企業がその輪に参加することが予想される。

国家間の取り組みに対して、企業が積極的に取り組むのは珍しいことのように思える。しかしここまで急速に広がっているのには理由がある。ひとつは株主や生活者の意識の変化だ。
これまでは良い商品を作れば売れて、業績がのび、株価が上がり、再度商品に投資をするという循環が続いてきた。しかし、今の時代は良い商品をつくるだけでは難しい。マーケティングももちろん重要だが、そもそも情報を発信するにおいてもっと根本的な部分、つまり商品づくりに対する姿勢や思想、また企業の経営姿勢までもがステークホルダーに見られるようになった。方法ではなく、その会社が将来に向けて何を目指し、どのような姿勢で、何を提供しているのか。一連のストーリーが強さを持つようになったのだ。会をくれるきっかけであるように思う。

そのような時流があるなかで、SDGsを事業に取り入れることで、自社は持続可能な企業であること、将来にわたって地球と人のことを考えていると伝えることができる。株主や生活者も、「そのような姿勢の企業であれば」と安心して、債権や商品を購入することができる。
またその影響は従業員にも及ぶ。従業員は、自社が課題と真正面に向き合っていることを知り、共感することで、「自分ごと」として事業とSDGsを見ることができる。現代において従業員を惹きつけるのは、給料ではなく動機。価値を提供するのは従業員自身なのだから、従業員を巻き込むことはとても大切なのだ。

しかしSDGsを自社の既存事業とうまく連携している企業は稀だろう。「あえて目標を設定しなくとも、本業における企業努力が社会課題の解決につながっているからいいのでは」という思いがあるのかもしれない。しかし、前述したとおり、改めてこのタイミングでSDGsと向き合い、考えることが、自社の独自性を育むことにつながり、ブランディングやマーケティング、そしてリクルーティングも含めた企業活動に影響するのは確かなのだ。

SDGsに限らず、社会貢献を大切な理念のひとつとして掲げ、企業と事業の価値向上につなげている企業はグローバルで見ると少なくない。例えば、ネスレとユニリーバはその代表といえるだろう。
ネスレは「経営に関する諸原則」という形で、栄養、健康、品質保証などを掲げ、ユニリーバは「未来のための変化を起こす」「(環境負荷の削減や持続可能なビジネスにおいて)継続的なコミットメント」などを掲げている。いずれも経営陣がよりどころにしているのは、創業時の想い。ネスレは「粉ミルクで赤ちゃんを救いたい」という想いから出発しているし、ユニリーバもせっけんによって社会に衛生観念を生むことを大事にしている。会社の目的や、存在意義を考えるブランディングに力を入れており、企業の経営姿勢そのものがCSRやSDGsと直結する形となっているのだ。
そして、そのことがよく従業員に浸透しているからネスレやユニリーバは商品開発でブレることがない。採用においてもそのことがわかっている人材を獲得するから、ミスマッチがないという循環を生むことができる。

重要なのは、給与やネームバリューではなく、理念そのものが人を惹きつける本丸の要素となっており、関わる誰もが自分ゴトとして、会社と社会の関係性をとらえるきっかけとなっていることだ。結果的にSDGs等とつながっているだけで、背景にはこのようなしっかりとした土台があるから、どこを切り取っても「ネスレらしい」「ユニリーバらしい」ヒトとモノがある。だから、「信用ができる企業」としての認知が加速する。ネスレやユニリーバ自身はSDGsを特別視していないように思える。なぜなら、普段から自分たちが事業として行っていることだからだ。当事者や従業員に聞いたら「今さらなにを」という反応さえ返ってくるかもしれない。

SDGsをはじめとした社会貢献を普段の事業に加えて考えるとなると、余計なものが増えたという気にさえなるかもしれない。しかし、その発想自体が違っているのだ。なぜならそれらは、常に一貫しているべきだから。
今後支持をされる企業は、事業の目的に社会貢献を含んでおり、それを明示しながら、しっかりと本業で利益を上げる企業だ。これは間違いない。そして、このような企業は日本にはまだ少ない。
「社会への提供価値」「社会貢献」という言葉を軸に、あらためて自社の提供価値を考えてみるのはどうだろうか。企業にとってSDGsは、そのような機会をくれるきっかけであるように思う。

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