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ブランディングは、リアルとデジタルの統合から生まれる

2020/03/04(最終更新日:2021/12/10)

ブランディング

ブランディングは、リアルとデジタルの統合から生まれる

「体験ブランディングが重要だ」と言われている。

生活者の求める価値がモノからコトへと変わっていく中、体験の価値がいっそう重要みを帯びており、ブランディング 、マーケティングを設計する上でとても大切なものになっている。
しかもそれは、「リアルな」場面だけではない。オフライン・オンラインのどちらも重要になっており、両者を統合した施策が今後は一層重要になっていくだろう。

 

体験の基本は「そこ」でしかできないもの

市場全体が成熟化し、コモディティ化が進んでいる。そのような中、現在伸びているビジネスや業界では「体験」の重要性がとても増している。単に商品を提供するだけではなく、そこにいかに付加価値をつけることができるのか。感性に訴えかける、そこでしかできない体験をいかに創出し、周囲の人々にシェアしてもらうのか。そのような商品・サービス設計をすることが、自社のブランド構築につながっていく時代なのだ。

数年前、アベノミクスの一環で地方創生がスタートしたが、その時も様々なメディアで「体験の重要性」が取り上げられていた。観光による経済成長を目指す中で、旅行者に対していかに「そこでしかないできない」体験を提供できるのか、というテーマである。
「体験」は非常に主観的な尺度であるため、提供している本人たちが気づかないほど、意外なものが差別化要素になることがある。
その好例が渋谷のスクランブル交差点だ。いくつもの信号、車道、歩道が入り乱れているのに、信号の変わり目に合わせて、自動車も人も整然と行動する。日本人にとっては当たり前の光景だが、大変多くの人と車が交差する中、信号無視や事故が全く起こらない光景が外国人観光客に大ウケした。
これはまさに、そこでしか体験できないもの。現在でもスクランブル交差点の模様をカメラに収めようとたくさんの観光客が集まっているが、体験が集客につながる事例だろう。

 

デジタルで一層の重要性を増すUI/UX

実はこの体験は、「オフライン」だけでなく、Webサイトやスマートフォンのアプリケーションといった「オンライン」でも重要になっている。
UI/UXという言葉を聞いたことがあるだろうか。UIとは、「User Interface(ユーザーインターフェース)」の略で、直訳すると「ユーザーとの接触面」。もう一つのUXとは、「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略で、直訳すると「ユーザーの体験」となる。
ユーザーとの接触面、すなわちスマートフォンやパソコンで言えば操作画面をどのようにデザインし、心地よい体験を提供するのか。もちろんオフライン(リアルな場面での商品・サービスの提供)でもこれらは大事なのだが、日々進化するテクノロジー業界において技術が発展を遂げるにつれ、これらの重要性が特に叫ばれるようになった。

数年前、ANA(全日本空輸)が作ったANAマイレージクラブのスマホアプリが、UI/UXにおいて非常に先進的であると話題になった。
マイレージを管理するためのアプリだが、たんにデザインが良いだけではない。説明なしでもストレスなく直感的に使える操作性、タッチしたあとの細かな動きの心地よさなどが、多方面で高評価を得た。
この「つぶさに配慮されたアプリの使い心地」は、ANAの接客に対する姿勢を表しているかのようで、ANA自体のブランド価値向上にも間違いなく役立っている。
もしアプリ開発の指針が、「ポイントカードのように、ポイントを貯めるという使用の目的が達成できるだけでいい」というスタンスであれば、これだけボタンのモーションにこだわるアプリが生まれただろうか。この使い心地は、当時の「出張で飛行機を多く使うが、スマホアプリに不慣れな中高年ビジネスマン」もしっかり取り込んだ。
本アプリは一度使用しただけで、高度な技術と多くの予算が投入されていることがわかるが、ANAのここ数年の飛躍と隆盛を見ていると、その判断は正しかったように思う。

 

オフラインの行動データ取得が、ブランドの改善につながる

リアル(オフライン)の場面での体験、またデジタル(オンライン)での体験がどちらも重要であることを考えてきたが、果たしてこれらはどのように統合していけばいいのか。これまではリアルであればユーザーアンケートで顧客満足度を図る、デジタルであればサイトやアプリの訪問回数、滞在時間、クリック数を図る……といった手法が採用されてきたが、最近ではオフラインの行動データを、テクノロジーを使い集計することで、リアルとデジタルの境目を無くしていくという動きも見られている。

オフラインの行動データは取得が難しいとされてきたが、最近では、センサー技術とGPS技術を掛け合わせ、カメラによる表情や動きの修正、位置、購入履歴などを組み合わせて、総合的に解析を進めるベンチャーも生まれている。またすべてのモノがインターネットとつながるIoT化が注目を集めているが、これが本格化すれば、ユーザーの体験だけではなく生活者の動向もすべて集計できるようになるだろう。かつては、「これからはデジタルだ」「いや、リアルなコミュニケーションが大切だ」といった議論が続けられてきたが、どうやら「デジタルもリアルも関係ない」未来が訪れそうだ。

 

まとめ

「体験」をキーワードに、リアル・デジタルでのブランディングを見てきた。今後はどちらかに注力するのではなく、「どちらも」注力することが非常に大切になってくるのではないだろうか。
どんなに実際の商品や接客が良くとも、アプリやWebサイトの使い心地が悪ければ顧客が離れていってしまうこの時代。どんなものに、どれだけの予算や工数、人員を投入するかは、様々な経営判断が絡むところだが、時代の流れが急速に早まっていることだけは忘れずにいたい。

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