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【第5弾】選ばれる企業が身につけている「ブランド力」の本質【新書籍発刊記念特別コラム】

2020/07/15(最終更新日:2020/09/30)

●選ばれる企業が身につけている「ブランド力」の本質

インターネットの普及やデジタル化の進展で、どの分野でも日々イノベーションが起こり、新しい製品が毎日のように市場に投入されています。今後ますますグローバル化やデジタル化が進むにつれ、企業間の競争がますます激化していくのは避けられません。その中で生き残るのは、BtoCであってもBtoBであっても、「ブランド力のある企業」だと、われわれは考えています。

●「自社が大事にしているもの」を伝えるのがブランディング

せっかくいい製品をつくっていても、ブランド力が弱ければ、顧客からの支持を集められず、そのような企業は市場から退場を余儀なくされてしまうでしょう。
たとえば、ある企業がルイ・ヴィトン製とまったく同じ素材を使い、本家に匹敵する技術でバッグをつくって、ルイ・ヴィトン製と同じ価格で市場に提供するという戦略をとったら、同じだけの売上を確保できるでしょうか? おそらく、ほぼ不可能でしょう。
ルイ・ヴィトンのバッグを買う人は、素材や製法にだけ惹かれて選んでいるわけではありません。「ルイ・ヴィトンというブランド」に価値を感じているから、高いお金を払ってでも、それを自分のものにしたいと思うわけです。

では、ブランドというものは、どうやって構築すればいいのでしょうか?

簡単に言えば「うちはこれを大事にしています」というものが、お客さまや市場にきちんと伝えられればいいのです。しかし、これは容易なことではありません。企業のトップにこういう話をすると、「そんなことなら当社でもとっくにやっている」という答えが返ってくることがよくあるのです。たとえば、次のような言葉が出てきます。

「当社は企業理念に『顧客第一主義』とあるように、お客さまのことを大切にする会社を目指している」
「当行は金融機関なので、パンフレットでも信用と信頼を常にアピールしています」

その言葉は、伝えたい相手に果たして届いていますか? 実際のところ、まったく届いていないのではないでしょうか。それなのに、伝えている側は、その事実に気づいていないのです。

●なぜそのメッセージは相手に届かないのか

「企業理念に『顧客第一主義』とうたっているから、この会社は客を大事にしてくれるのだ」
そんなふうに好意的に思ってくれる人ばかりなら、誰も苦労はしません。もし、企業が発信した言葉を、お客さまがすべて丸ごと信じてくれるのなら、「このペンは最高の書き心地です」「このワインなら必ず満足してもらえるはずです」のようなPOPを店頭に飾っておくだけで、ペンもワインも飛ぶように売れなければおかしいはずです。もちろん、実際はそんなことにはならないのは、誰もが知るところです。

同様に、社長室の壁に飾ってある企業理念やミッションの類は、たとえそれが社長の本心から発せられたものであったとしても、そのままでは、誰の心にも刺さりません。つまり、ブランドにはなり得ないのです。

それに、「顧客第一主義」や「信用と信頼」というのは、考えてみればどの企業にとっても当たり前のことだと言えないでしょうか。顧客や信用・信頼を大事にしない企業など、この時代にやっていけるはずがありません。それをあえて言葉にしてアピールしてみたところで、説得力もありませんし、他社との差別化にもならないのです。

それでも、「いや、うちは他のどの会社よりもお客さまのことを本当にいちばんに考えている。その点こそが自分たちの最大のセールスポイントなのだ」と自信を持って言えるのであれば、それを否定するつもりはありません。

ただし、単に「言葉で発信するだけ」では足りないのです。

お客さま自身が「確かにこの会社は、いつも他社にはない、かゆいところに手が届くサービスをしてくれる」と納得するような施策に、全社を挙げて取り組む。ここまでやって、ようやくブランディングと言えるのです。

●お客さまに「自然に想像していただく」のがブランディングのゴール

このときに決して間違えてはいけないのは、その企業が本当に顧客第一主義かどうかを判断するのは、「発信する側」ではなく、あくまで「受け取る側」のお客さまだということです。
これを言い換えると、お客さまの頭の中に、「あの会社は顧客第一主義だ」というイメージを醸成するのが「ブランディング」ということになります。社名を見ただけで、お客さまが「ああ、顧客第一の会社だ、きっとうれしいサービスをしてくれるに違いない」と自然に想像してくれるようになることが、ブランディングにおけるひとつのゴールなのです。

しかし、お客さまは、そう簡単に企業側が望むようなイメージを持ってはくれません。だから、みなブランドづくりには苦労するのです。

たとえば、先ほども少し例に出したルイ・ヴィトンでは、店員はショップで自社の製品を触るのに、必ず手袋を着用します。生鮮食品ではないのだから、素手で持ったところで問題はなさそうです。それでも手袋をするのはなぜでしょうか?それは、「私たちの売り物であるカバンや財布は、それぐらい丁寧に扱わなければならないものなのだ」ということを、わかりやすくお客さまに伝えるためなのです。そうすると、お客さまは、「やっぱりルイ・ヴィトンというのはものすごい高級品なんだ」と感じて、その製品を持っていることで自分もステータスが上がると想像してくれるようになるのです。
アメリカの二大オートバイメーカーの一角を占め、世界中に愛好者がいるハーレーダビッドソンも、ブランド力を持っている企業の好例です。重低音が響く独特のマフラー音は、ハーレーのこだわりのひとつです。音といえばベンツも、ドアの重厚な開閉音を徹底的に追求しています。
よく考えたら、マフラーやドアの音は、オートバイや車の機能と直接的には関係がありません。ですが、お客さまは「そんなところまで神経を使ってつくる余裕があるのだから、エンジンや安全性といった大事な部分の完成度は相当なものだろう」と自然と想像してくれるのです。

このように、何をどうすればお客さまが想像力を膨らませて、自分たちや自社製品に好ましいイメージを持ってくれるか、知恵を絞って考えていくのが、ブランディングにおける戦略なのです。

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