imajina

“モダン”に響く、日本の伝統

2016.05.16

#イマジナ・ブランディングニュース

先日、新宿にあるビームスの路面店「ビームスジャパン」がリニューアルオープンした。
同社は今年で設立40周年を迎えるのだが、これを機に「ビームスチームジャパン」を結成。「日本のモノ・コト・ヒトをキュレーションする」ことを目的として日本の名品や文化を紹介するプロジェクトを始動させた。その拠点として新宿店が大改装されたのだが、店内はまさに日本文化一色。各フロアは、雑貨、洋服等の区切りではなく「日本の洋服」「日本のポップカルチャー」「日本の洋食」といったテーマで構成されており、ビルそのものがカルチャーの集積地となっている。セレクトショップとしての選球眼を活かした商品を紹介していくのだろう。

 

近年、日本文化を見直し再発信する動きが高まっている。その背景は様々であるが、一つは訪日外国人観光客数が右肩上がりで増えていることがあげられるだろう。日本「ならでは」の文化を発信していくことで、プレゼンスを高めると同時に、外国人の購買と消費を促していきたいところだ。
政府も安倍首相自らが旗を振り観光客数の増加に関して明確な目標を設定している。「観光は成長戦略の大きな柱の一つであり地方創生の切り札。世界が訪れたくなる日本を目指し、観光先進国という新たな高みを実現していく」と述べているほどだ。訪日観光客のインバウンド消費は、成長戦略の一つとして決して外せない要素である。

 

そのような状況下で日本企業はどのようなサービスを提供していくべきだろうか。先ほどの例にある「文化のキュレーション」は一つの答えかもしれない。「日本がすでに持っているもの」を見直し、それらを「現代風に加工や編集」し提供する。このような発想が大切になってくるのではないか。

 

印傳屋(いんでんや)という会社がある。「印伝」という鹿革に漆付けする独自の技法を用い工芸品を作り続けているのだが、同社は創業から400年以上の歴史を持つ。その真似のできない素晴らしい工芸品たちは、戦国時代には甲冑の一部として、江戸時代には巾着や煙草入れ等として愛用されてきた。特に同社が受け継ぐ甲州印伝という技法は、87年に経済産業大臣から伝統的工芸品認定を受けている。日本の革工芸の文化を伝える担い手として、現代でも活動を続けているのだ。

 

その印傳屋の職人たちだが、彼らは伝統を守るだけでなく、現代の価値観にあった商品づくりを行い挑戦し続けることで活躍のフィールドを広げている。

例えばスマートフォンケース。「最新のテクノロジーを400年の伝統で包む」をコンセプトにオリジナルケースをつくり、4月に販売を開始した。手帳型に加工された朱色と黒色の鹿革製品には印伝ならではの伝統柄があしらわれており、芸術性と実用性の両方を兼ね備えている。その繊細な柄は日本の美を象徴しているとされ、ハイセンスな欧米人から多くの注目を集めているようだ。聞けば同社は、過去にもティファニーやグッチといったラグジュアリーブランドともコラボしているとのこと。甲州から世界へと和のテイストを持った商品を発表し、伝統を引き継ぐ重圧に臆することなく果敢にチャレンジを続けている。

 

今後多くの会社があらゆる面で日本文化を見直し、世界を市場としたオリジナリティあふれる商品づくりを展開していくと予想されるが、勝ち残るのはきちんと資産の価値を見つめなおし、現代のテイストに合った商品やサービスを提供している組織だろう。また必ずしも伝統工芸を用いらなければいけない、というわけではない。柔軟な発想で「日本らしさ」をうまく取り入れることで、世界を視野にいれたサービスを展開することも可能なのだ。

「桃太郎ジーンズ」という日本生まれのアパレルブランドがある。同ブランドを運営するジャパンブルー社は2006年にサービスを立ち上げ、2009年には海外販売を開始。大々的なPRもなくサービスを開始したのにも関わらず、現在では国内だけでなく海外26か国に販売店を持つ。

 

実はアパレル業界の中でもジーンズはとりわけ低価格化が進んだ分野だ。特に輸入品の圧倒的な安さの前に国内メーカーは太刀打ちできないケースが相次いでいる。数年前に1,000円以下のジーンズが大量輸入され、価格破壊が起こったのは記憶に新しい。その煽りを受け、実際にいくつかの国内メーカーは経営破綻に追い込まれた。
ただそんな中、岡山でアパレル素材を取り扱う卸業を営んでいた現ジャパンブルー代表の眞鍋氏は「ジーンズというジャンルには、日本のモノづくりに対する強みが活かされていない」と感じる。そこで同社は質が高いことで有名な岡山のデニム素材を用いたジーンズづくりを開始した。

「桃太郎ジーンズ」は、製作を全て自社で手掛けることによる質の担保と、他社が企てない高価格化戦略が強みである。実は同ブランドの中心価格帯は22,000円と決して安くはない。しかし高くても良いものを履きたいという国内外の消費者の心理をつかみ、その質の高さと相まって他ジーンズメーカーとは一線を画す高品質高価格のブランドを形成した。またアフターサポートも徹底しており、直営店で購入すれば10年保証という姿勢も差別化要因の一つとなっている。地元の名産とアパレル業界のノウハウ、そしてメイドインジャパンの強みを掛け合わせて新領域でのビジネスを成功させた好例と言えるだろう。

 

「ブランドは複雑なシンボルである。それは、商品の属性、名称、パッケージング、価格、歴史、評判、そして広告手法の目に見えない集合体である」と語ったのは広告界の巨人ディヴィッドオグルヴィだが、特に歴史と評判に関しては、ジャパンブランドは一級の資産であると言える。
メイドインジャパンがブランドとなる今の時代。うまく「日本らしさ」を取り入れ事業を展開することは、どんな領域でも可能なのではないかと感じる。自社の事業の本質的な強みを見直し、新たな分野へのピボットを模索してはいかがだろうか。

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