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成熟市場こそ、ブランドは創出できる

2016.05.02

#イマジナ・ブランディングニュース

国内で少子高齢化が叫ばれ久しいが、2015年10月1日、ついに日本の人口は減少に転じた。総務省の発表によると、同日時点で約1億2710万人。5年前と比べ約94万7000人と0.7%減った計算になる。1920年に国勢調査が始まって以来人口増が続いてきたが、ここにきて初めての人口減となった。詳しく見ていくと、昨年の日本の出生数は厚労省の推定で約100万人。死亡者数は約130万人となっているから、マイナス30万人。この差分も過去最大なのだとか。これでは実に2年に1つ、鳥取県(の人口規模)がなくなる話になる。
これは産業界にも大きな打撃を与えると考えられている。政府は移民の受け入れやロボットの活用を画策しているが、その議論は膠着し抜本的な解決策を見いだせていない。生産人口と消費人口が減少することであらゆる業界の市場そのものが縮小すると予測されるが、果たして有効な手立てはあるのだろうか。

 

パイの奪い合いが予測される中で、組織が生き残るにはどんな方法があるだろう。既に大手企業は海外進出やM&A等を積極的に行っており、新市場や他分野への進出を画策している。では、中堅・中小企業はどうだろうか。大手のように事業の買収や人員の増大を行うケースもあるかもしれないが、全ての企業がそのような施策をとれるかと言うと疑問符がつく。

 

実は中堅・中小企業こそやるべき、新市場の開拓方法がある。既存の商品にひねりを加え、新サービスや新ブランドを創出することだ。それは多大な資本と時間が必要な新規事業とは違い、既にある商品を見直すことで新たな活路を見出すチャレンジである。

 

例えば、文鳥社という会社がある。こちらの会社はクライアント企業のブランド開発やデザインコンサルティングを行っている会社なのだが、なんと新サービスとして文学の取り扱いを主とした出版業を立ち上げた。多くの人が知っている通り、出版業界は紙媒体の発行部数が減少し、先行きが暗いと言われている。特に文学はその最たる例だろう。一般的に見たら、新規参入はまず考えられない業種である。

文鳥文庫のホームページはこちら

 

 

 

同社の牧野代表は、文庫本の「重くて読むのに時間がかかる」ところに着目し、これを改善できないかと考えた。そこで同氏が開発したのはなんと、1冊16ページ、かつ1枚の長い紙に文字が印刷され折込まれた「蛇腹」の体裁をした、糊止めがされていない形態の本だった。現在のところ作品は文字数が少ないものが選出、発刊されており、太宰治の『走れメロス』や坂口安吾の『堕落論』、宮沢賢治の『注文の多い料理店』等、日本近代文学の8作品が第1弾セットとして売られている。
同文庫は本ではなく、「作品」を持ち歩くという視点で再開発された。確かにこれだとかさばらず、取り出し、広げることが億劫にならない。それに見た目も洗練されている。手に取ってカバンに入れたくなる装丁だ。同氏はこれを開発した際、出版社から「やられた!」と嫉妬されたそうだが、まさに問題(正確には今まで当たり前すぎて誰も気にしていなかった特徴)を見出し、改善により新ブランドを創出した例だろう。

 

また「傘」業界で躍進を遂げている企業がある。「waterfront」ブランドを展開するシューズセレクションだ。同ブランドは市場の17%を占めており、最後発メーカーながらも業界トップを走っている稀代の企業である。
代表の林氏が同社を立ち上げたのは40歳の頃。すでに東洋医学の治療院や飲食店を多く経営し、実業家として名を馳せていた林氏は、ある時なんと全ての事業を売却。一念発起し傘メーカーを立ち上げた。
同氏はサービス業を展開しながらも常々モノづくりをしたいと考えていたそうだが、ふとした時に小さな頃、傘が貴重で憧れの品だったのを思い出したとか。これにより、市場云々よりも自身が本当に欲しい傘をつくろうと考えたのがきっかけだそうだ。

waterfrontのホームページはこちら

 

 

 

同ブランドは通常タイプから折り畳みタイプまで幅広く揃えられているが、注目すべきは価格とデザインである。ビニール傘と同じ値段で和傘のように通常の倍の骨数が使用されたもの。また最厚部でも2.5cmという薄さの折り畳みタイプ等、今までにないデザインの傘が販売されている。また店頭での見せ方も工夫され、色違いのものを数種類並列する「アソート方式」を取り入れ、今まで傘が置かれていなかったドラッグストアや雑貨店、本屋にも販売場所を確保した。これにより、晴れの日でも傘が消費者の目に留まるようになったのだ。

 

成熟市場に参入したサービスを紹介してきたが、これらに共通するのは必ずしも「最新技術」や「大資本」が使われていないこと。発想の転換やちょっとした工夫でイノベーションを起こすことも可能なのだ。しかもこういった類の挑戦は、大企業ではなく小回りの利く中堅・中小企業の方が取り組みやすいのも注目すべき点である。

 

「ポイントはゼロベース、かつよそもの視点で対象を見ること」。文鳥社の牧野代表はこう話す。顧客視点というと難しく感じるが、対象を冷静に見直し、素人ならではの素朴な疑問を持つことが大切なのではないだろうか。既存商品にひねりを加え、新しいブランドを作る。大事なのはモノを見る目で、多額の予算ではないのかもしれない。

 

ピンチはチャンスである。今の時代、市場の衰退を逆手にとってオンリーワンのサービスやブランドを売り込むことも十分に可能なのだ。
今一度、自社の商品を見直してみるのはいかがだろう。ひょっとしたら、貴社のサービスは新たな市場の創出さえも実現するかもしれない。

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