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新卒社員のインナーブランディング

2016/04/11(最終更新日:2021/12/09)

出会いと別れの季節だ。4月になり、企業によっては多くの新卒社員が入社したところもあるだろう。その反対に3月末には退職される方がいらしたかもしれない。異動等もあり、多くの企業が組織の形を変え、新しい季節を迎えていることと思う。
現在、採用市場が活況だ。とくに新卒採用においては、2016年卒の有効求人倍率は1.73倍までに上昇し、2012年卒から5年連続の上昇となっている。昨年12月時点での内定率も80.4%と高い数字を記録した。
待遇の面でも変化が見られる。製造業における傾向だが、金属労協の発表ではベースアップ平均額で中小企業が初めて大手を上回ったというニュースがあった。人手不足による危機感からきているものだろう。優秀な人材に対するニーズはどの企業でも高まっている。

 

決意を新たにし4月から入社をする方も多いが、その反面、早々に退職してしまう人材がいることも事実である。特に新卒に関しては仕事の勝手がわからず、入社して間もなく退社してしまうケースも少なくない。離職率は現在高い水準を示しており、マイナビの昨年11月の調査によると、大卒3年後離職率は32.3%に上る。実に「3年で3割が辞める」状況なのだ。
就職活動という大イベントを乗り越え入社したのにも関わらず、早い段階で退職してしまうのは何故だろう。様々な理由があると思うが、一番は思い描く会社像と現実のギャップに起因していると考えられる。具体的には「給与の額への不満」「仕事上のストレス」「自身のキャリアがイメージできない」等の意見があるのではないか。
新卒社員ははじめての会社勤めなので、様々な期待を抱いて入社するからか、想定と違うことがあると前述のギャップに苛まれてしまうのかもしれない。もちろん実際の仕事はきれいごとではうまくいかないため、思い描いていた姿と重ならないこともあるだろう。とは言っても、企業の立場からしたら、せっかく自社を選んでくれた人材を早々に送り出すのも苦い思いのする話である。採用に至るまで多大な時間と予算をかけているし、退職する立場からしても仕事の醍醐味を知ることなく旅立つのは、懸命な選択かと言えば疑問符がつく。「ミスマッチ」と一言で言ってしまえば簡単だが、できることなら長く楽しく一緒に働いていきたい。これらを防ぐ手立てはあるのだろうか。

 

もちろん仕事の醍醐味や面白味は、すぐに理解できるものではない。というか筆者個人の意見としては、入社してすぐにわかる仕事の面白味があるのなら、それは本質的な面白さと言えないのではと感じている。その企業に勤める先人が積み上げてきた、仕事を通じて得られる苦労、工夫、充実感は、そんな簡単に味わうことはできないだろう。

 

ただつらいことも多い状況下で、新卒社員にいきいきと働いてもらうには、今チャレンジしていることに対して「誇り」を持ってもらうことが重要なのではないだろうか。
「誇り」には様々な解釈がある。この業務を行う意味を理解している、理念に共感している、この組織に所属していることに胸を張れる、等々。極端な表現をすると、「つらいこともたくさんあるけど、今、この環境にいることは素晴らしい」と思える心持ちの醸成だ。自分たちのやっていることに誇りさえ持てれば、(面白味がないと感じがちな)研修や雑務においても将来性や意味を見出し、いきいきと取り組んでくれる可能性が高い。

 

逆に「誇り」が持てない状態が続くと、それはいつか「やる気の欠如」に変わるし、組織に対して疑念を持つことにもつながってしまう。こんなことをやって意味があるのだろうか、会社の方針が間違っているのではないだろうか、自分たちのやっていることは社会にとって正しいことなのか、等々。疑念は疑念を生む。こういったことが積み重なると仕事に対する意欲を失ってしまい、同じ業務を担当しているにしても、前者の社員と比べると成長スピードに雲泥の差がついてしまうだろう。

 

どうすれば、自分たちの業務に対して誇りを持てるのだろうか。筆者は社員が自社の「理念」や「思想」に共感してもらうことから、全てははじまると考えている。
組織の取る選択。それにはすべて意味があるし、判断の元となる考え方が必ずそこにはある。しかし選択の表層だけをとらえて社員に判断されてしまうと、勘違いが生じかねない。新卒の教育にしても、経営判断のひとつをとっても、その判断の背景にある理念や価値観の理解があるからこそ、与えられた業務に対して自発的に取り組むことができるのではないだろうか。

 

もちろん、理念の浸透や価値観への共感は、放っておいてできるものではない。言葉の表現も一部の人間だけでなく、今後組織に参加する仲間全員に理解できる形にしなければいけないし、社員が理と情で納得できるまで、伝え続けなければいけない。
これらは大変な作業である。ただもちろん、それに見合うリターンもある。理念への共感があれば、ゴミ拾いさえも輝きだす。ディズニーランドのキャストが仏頂面で掃除をするだろうか。組織の思想とブランドに深く共感しているから、裏方の業務に弾けるような笑顔で取り組むことが出来るのだ。

 

仕事の面白味がわからないのを理由に辞めてしまうのは、あまりにももったいない。会社側もそれを「しょうがない」と言って見送る前に、まだやることがある。
理念、思想に共感した上で、判断に納得できるからこそ、一見面倒な業務が意味を持ち、素晴らしい仕事に変わっていく。心持を変えることで、またそうなるよう指導を積み重ねることで、日々の業務にいきいき取り組むことが可能になっていくのだ。

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