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地方創生における、地域ブランドの醸成

2016/04/04(最終更新日:2021/12/10)

自民党有する現安倍政権の発足から3年3ヶ月――。
政界では3月末に、民主党と維新の党が合流し民進党が作られ大きな話題を呼んだ。同党代表の岡田氏は格差縮小等、経済面のテコ入れにも意欲を燃やしているが、現政権最大の取り組みであるアベノミクスの効果はいかほどのものか。その是非は現在もメディアを賑わしている。
またアベノミクスとあわせ、経済政策の一環として「地方創生」が掲げられたのも記憶に新しい。同政策が発表されたのは2014年9月。ローカル・アベノミクスとも言われ、地方に活力を戻すべく掲げられた。発表から1年半以上が経つが各所で結果が出始めているのか、メディアでも再び名前を聞くことが多くなってきた。

 

地方創生とは「地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策」を指す。日本全体で少子高齢化が叫ばれているが、それに加え東京など一部の都市を除いた地方は、人口減少の危機に直面している。そういった状況を打破すべく、何らかの手法を講じることで、若者が職に就け、住民が豊かになれるような暮らしやすい社会づくりを行い、地方経済を振興させていきましょうというのが同政策の趣旨だ。

 

人口減少、ならびに地域経済の振興といった課題をさらにブレークダウンさせると、「(経済の)東京一極集中の是正」「若い世代の就労、結婚、子育ての支援体制の構築」「地域特性に即した形での課題解決」といったキーワードが浮かび上がってくる。これらを実現、解決するため「まち・ひと・しごと創生法」では、自立性・将来性・地域性・直接性・結果重視という、政策5原則が掲げられた。
5原則の内容は、自治体や組織、個人が自立できる、ならびに継続性や地域特性を考慮した施策を計画すること。また、しごとの創出やまちづくりを直接的に支援するものを優先的に取り上げ、きちんと目標の設定と効果検証を行う等だ。
地方の特性に応じた施策、各自治体や住民の自主性、そして持続性や成果を重視している点が、今まで政府が講じてきた施策との大きな違いだろうか。これらが大枠の指針であるが、各自治体はこれらをどのように実現しているのだろう。

 

同法のサイトを見ると、事例のまとめが掲載されている。成功事例も少しずつ出始めているようだ。
例えば栃木県大田原市。同市は農業が盛んで、農業と観光を掛け合わせて地方創生を行っている。取り組みを牽引するのは株式会社太田原ツーリズム。同社はなんと、市が5,000万円を出資して設立された会社なのだ。市以外にも民間やマイクロファンドから資金を調達し、事業推進に充てている。市が会社設立に出資するのは全国でも稀だろう。
同社の実際の取り組みも面白い。農家民泊に加え、訪日外国人を相手にインバウンド観光の強化、また有休資産の活用として廃校に泊まり断食が体験できるというプログラムまである。

他には北海道帯広市。「真冬のマンゴープロジェクト」と題し、自然エネルギーを活用して宮崎県等の南国で作られるマンゴーを帯広で作ろうという取り組みだ。十勝の温泉エネルギー、雪氷、そして「十勝晴れ」と言われるほどの日光を活用し、なんと極寒の地でオリジナルブランドマンゴー「白銀の太陽」を作りあげてしまった。同地域は経産省の「世界に発信できる農業全国10モデル」にも選出されるほどに、注目が高まっている。

 

上記はどちらも市名や特産品の認知度向上等において、大きな影響を与えた例と言えるだろう。ただもちろん、全てがこういった成功事例ではない。各自治体が予算をつけ計画に取り組んだとしても、成果を出せないケースもなかにはあるのが実情だ。

 

例えば一部で問題視されているのが、既存事業の継続に対する予算割り当て。上記5原則に当てはまり既に効果が出ている事業を継続するのであれば問題ないだろうが、従来から効果を疑問視されている事業に予算が割り振られるケースがある。もちろん中身は変わってないので、効果は以前と変わらない。
また過去、国の補助金に頼ったメニューばかりで事業を構成してきた自治体は、そもそも事業を立案できる職員が育っていないということもあるようだ。考えてみれば地方創生とは、民間における新規事業立ち上げと収益化のようなもの。ハードルが高いのもうなずける。

 

各地方各様の地方創生。重要なのは、自地域の強みをきちんと把握すること。そしてそれを目に見える形でアウトプットに落とし込み、きちんと収益をあげるモデルを創造することだろう。そして利益を雇用や納税に充てることで、安心して暮らせるまちづくり、魅力あるまちづくりが現実になる。
いかに自地域の強みを見つけるか。その強みは未だ表面化していなくともかまわない。強みを見つけ形にするには、時には外部の専門家の力を借りるのも手かもしれない。その道のりは決して平たんではないかもしれないが、きちんと時間をかけて向き合えば、この先何十年、何百年と続く、地元を代表するブランドの創造も夢ではないのだ。(利用可能な資産は、どこかに必ずある。日光と温泉を用いて果物をつくることだって可能なのだから)

 

自身が持つ良さを見つめなおし、それを何らかの形にして、外部に発信する――。企業の新規事業開発やブランド構築とも、非常に近しい考え方だ。
地方が元気になることで、日本が活気を取り戻す。少しでも多くの地域が、自分たちにとって意味のある創生を果たしてほしいと切に思う。

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