imajina

既存の商品に、新たな価値を付け加える

2016.03.29

#イマジナ・ブランディングニュース

日本の伝統文化の「焼き直し」が盛んだ。
食や礼節の正しさ等、数百年にわたり培われてきた日本文化や姿勢そのものが、国内外を問わず再評価され久しいが、ただ単に文化を発信するのではなく「焼き直しをして発信する」という形の価値提供が目立つ。意外なところだとオモチャ業界。ケン玉やコマ回し等、昔からある遊びが、最新の技術を用いり新たな遊び道具としてひそかに再開発されているのだ。

 

 

先日、株式会社電玉がデジタル技術を用いたケン玉『電玉』を発表した。こちらは従来からあるケン玉に加速度やジャイロ等のセンサを搭載することで、リアルタイムでの対人対戦を可能にした代物である。例えばあるプレイヤーが技を決めると、攻撃として相手のプレイヤーに振動が伝わり、なんとプレイの妨害ができるのだ。またタブレット端末やスマホ等と連動することで、各メディアのスクリーン上にグラフの変化がゲーム画面としてあらわれ、プレイとは別軸で対戦ゲームが楽しめる。インターネット環境さえあれば、世界中のプレイヤーと対戦も可能だ。
開発者は、高齢者と若者がコミュニケートできるプロダクトを作りたいという思いで研究開発に乗り出したそうだが、まさに今話題のIoTの技術を用いており、伝統文化に新たな価値を付加し世の中に発信している。

 

もちろんデジタル技術を活用したものだけでなく、アナログ領域でも進化したオモチャが発表されている。例えば『CD独楽アルミ軸』という商品。こちらは名の通り、アルミ素材のコマの「軸」のみを売っているのだが、CDにこの軸を取り付けるとコマとして回すことができるのだ。アイディアの斬新さに加え、無地のCD-Rに自分で絵を描いて回す等の楽しみ方もある。今ではCDケースが埃をかぶって積まれてある家庭も多いと思うが、捨てる前の再利用も一興だろう。

 

こういった例はたくさんある。現代ではスマホや携帯ゲームでの遊びが主流だが、古来のオモチャに付加価値をつけ発信することで、子供たちの興味を惹くことも可能かもしれない。

 

またもちろん、オモチャだけが文化の焼き直しの対象ではない。例えば少し前から富山県の自治体と東京藝術大学が連携して、法隆寺の釈迦三尊像を3Dプリンタを用い再現しようというプロジェクトが進められている。同像の高精細な3Dデータを取得しプリンタで原型を作成。それをもとに鋳物と彫刻の職人技術を用い、そっくりそのままの仏像をつくろうという試みである。
まさに伝統文化×最新技術。完成は平成28年の秋頃予定とのことだが、これが実現できれば近い未来には、仏像に限らず世界中の工芸品をより身近に楽しむことができるようになるだろう。国外持ち出しが難しい国宝等も精巧な模造品を作成することで、同作品の世界同時の常設展示が夢ではなくなる。

 

冒頭の通り日本文化全体が再評価されているが、まだまだ世の中に眠っている価値の源泉は多くあるのではないかと感じている。それに加え、文化のみならずこの焼き直しの考え方は自社の商品開発等にも活かせるのではないか。

 

ここで一考すべきことは、ただ単純に文化や旧来からある商品を再度広告し発信するのではなく、アイデンティティを保ちつつも受け手に喜ばれるような現代風の価値を付加して発信すれば、より多くの需要を生み出せるのではないかということだ。
前述の『電玉』はケン玉の形や遊び方を変えることなく、ITを使った対戦というあらたな付加価値を提唱した。アルミ軸にしても、すでに手元にあるCDというものをコマに変えられるという新たな視点を提唱している。釈迦三尊像の事例はもはや、従来の芸術の常識を変えうる壮大な実験である。

 

そのまま元からあるものを発信するのでは、ケン玉を広めましょう、文化財をもっと知ってもらいましょうという単なる普及活動に終始してしまう。重要なことは、モノの本質を見抜き、それを尊重しながらも、受け手に好まれる表現に変えるという工夫なのではないだろうか。
普及活動だけでは、インパクトを与える領域が限られてしまう。本質的な価値を浮き彫りにし、創造の領域まで活動を高めることで、場合によっては今までになかった市場の創造やブームの火付け役となることも可能なのだ。

 

ここで大切なのは、再開発はさることながら、事前に何が対象の本質的な価値なのかをきちんと見抜くことだ。ここをはき違えてしまうと、最終的に創造されるコトやモノは、受け手が潜在的に求めるものとのズレが出てしまうだろう。手に取ったときに「なにか違う」と思わせないようにしなければならない。(実は意外とこういった間違いは多い。表面的な部分だけを追ってしまうと中身がなかったり、奇抜なリメイクをしただけになったりしてしまう)

 

まず行うべきことは、対象の本質を見抜き価値をきちんと理解すること。次に、目指す姿を組織内で共有し、あらたな価値をひとつひとつ具体化していくこと。どの工程をさぼってしまっても、良いものはつくりだせないだろう。
特に本質をとらえていく作業は、実は当事者だけではなかなか到達しにくい難しい作業である。提供者だけが価値を考えるのではなく、他者が対象に対して持っている印象や本音を聞き出すヒアリングの作業も場合によっては必要だろう。専門家の手を借りるべきこともあるかもしれない。特に商品や組織のリブランディングには、この作業が欠かせない。提供者が発信しているメッセージと受け手の印象には往々にして食い違いがあるものである。

 

日本の伝統文化や、自社が持つ商品ブランドの焼き直し。
今手にしている資産や商品を見直し、あらたな価値を付加し発信することで、世の中により大きな感動を提供できるのではないかと思う。

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