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キャラクターを活用したブランディングの可能性

2016/03/22(最終更新日:2021/12/20)

先日、愛知県の豊川市総合体育館で、全国のゆるキャラが集合する『とよかわまちおこしフェスタ2016』が開かれた。全国の自治体から73のゆるキャラが集結。運動会を通して、豊川の町おこしをしようという狙いである。内容は大玉ころがしやダンス、また市内の複数の飲食店が作り上げたいなり寿司の食べ比べ等、多岐にわたるイベントが行われた。主催の市観光協会によると約28,000人が来場。非常に盛況な催しとなったようだ。

 

「ゆるキャラ」という名称が確立したのは2002年頃。国や地方公共団体などがイベントやまちおこし、名産品の紹介等に使用する目的で作られたのが始まりだ。じわじわと人気が広がり、テレビや雑誌等におけるメディア露出が増えるとともにゆるキャラ自体の注目度が上昇。企業がマスコットキャラクターをつくるように、各自治体がこぞってゆるキャラを持つようになった。一部のそれは国民的な人気を獲得し、なんと企業広告にも起用されるまでになる。一時のブームに終わらず、ゆるキャラは国民の間に定着していった。

 

企業だけでなく、自治体までもが力を入れるキャラクターを介したコミュニケーション。アニメ等を含めると日本ではあらゆる場面でキャラクターを見かけることができるが、いつ頃から活用されるようになったのだろうか。

顧客との接点にキャラクターを用いる――。手法の起源は定かではないが、江戸時代にはその片鱗が垣間見える。江戸の町で商いを行っていた商店や飲食店は、自前で看板をつくり、道行く人に自店を宣伝することで集客を行っていた。特に看板は店のシンボルのような扱いだったため、実に様々な工夫が凝らされている。(博物館等で現存する当時の看板を見ることができる)
店主の思いが込められているのだろう。形を工夫するものもあれば、絵に力を入れているものもあり、そのほとんどが非常に高い完成度を誇っている。特に絵の表現においては、うなぎ屋ならうなぎの絵を、魚屋なら魚の絵を、コミカルかつキャッチーに描かれたものが多い。これらの表現はキャラクター活用の源流だと言えないだろうか。

 

その後、明治時代に入り、経済が成長するに伴い、広告の市場も大きくなっていく。
広告に使用されるのは文章に加え写真、もしくは絵やアニメーションだ。メディアの発展に呼応する形であらゆる表現手法が確立していくなか、キャラクターが使用される頻度も増えていった。
公式な記録はないが、例えば興和社の「ケロちゃん」や不二家社の「ペコちゃん」等は、マスコットキャラクターの元祖と言っても差し支えないだろう。誕生はそれぞれ1949年と50年。戦後まもなくに登場し、雑誌広告やポスター、テレビに起用されるだけでなく、小売店の店頭にも人形が置かれ、キャラクターそのものが社名やブランド名に勝るとも劣らない認知度を誇った。

 

このように、キャラクターを活用したPRやブランディングの歴史は古い。
だが組織の広報活動においてキャラクターを活用することには、具体的にどのようなメリットがあるのだろうか。

 

まずあげられるのは「親しみやすさ」だろう。コミュニケーションにキャラクターを用いることで、受け手に壁をつくらずに訴求することが可能になる。直接的にメッセージを発信するのではなく、ブランドを背負った愛らしいキャラクターに働いてもらうのだ。それに現代はテレビや雑誌等の従来型のメディアに加えSNSがあるので、活躍の機会は非常に多い。一連のコミュニケーションにキャラクターを介入させることで、受け手に肯定的な印象を抱いてもらえる。

 

また言語情報がいらないのもキャラクターの大きな強みである。情報を伝えるには一般的に、文字が不可欠である。しかし文字は読んでもらうための工夫が必要であるし、何より字が読めない子どもや、読む気のない人に伝えるのは難しい。そういった難題を解決する手段としても、キャラクターは活きてくる。「ここにおいしいケーキがありますよ」と文章で伝える代わりに、ペコちゃんに店頭に立ってもらうだけで、より円滑なコミュニケーションが実現する。もちろんこれは子供だけが対象の手法ではなく、大人も同様だ。

 

キャラクター活用は侮れない手法である。もちろんそれは対外的なPRだけでなく、組織内部へのメッセージ発信においても同様だ。
難しい言葉で経営者の想いを伝えるよりも、時にはよりわかりやすい表現で発信したほうが伝わることもある。実際に我々が作成しているカルチャーブックも、理念をよりわかりやすい言葉で表現しているし、またオリジナルキャラクターもふんだんに活用し作成している。「浸透のしやすさと深さ」を考えた際には、キャラクター活用もひとつの手だ。

 

だがもちろん、組織や商品の考えや世界観が反映されていないキャラクターをつくり上げても意味がない。「伝える」ためにキャラクターがいることを忘れてしまうと、なんのためのキャラクターなのかがわからなくなってしまう。せっかくの時間とコストをかけても、効かなくては意味がないのだから。

 

企業や自治体における、キャラクターを活用したブランディング。
一見するとお遊びのように感じるが、その効果は計り知れないし、つくり手の業種や業態、規模や地域さえも問わない。キャラクターは決して無意味ではなく、むしろ組織のコミュニケーション戦略の中核を担うこともさえもありうる、強力な手段である。

 

その価値を、あらためて見直したい。

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