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スターバックスに学ぶブランド構築

2016.02.08

#イマジナ・ブランディングニュース

筆者は、仕事の合間によくカフェを訪れる。
駅に着くとついくせで、入れるカフェがないか探してしまうのだが、自身を振り返ってみると一番多く利用しているのがスターバックスコーヒーだ。

 

「スタバ」の愛称で親しまれている同コーヒーショップだが、今では利用したことのない人の方が珍しいのではないか。現在その店舗数は1,000以上に及び、国内47都道府県全てに存在している。

 

レジでコーヒーを頼み周囲を見渡してみると、顧客層は若い女性がほとんどであることに気付く。統計があるわけではないが、おそらくユーザーの6割程度が20歳~35歳程度の女性ではないかと感じる。

 

以前一度、筆者の知り合い数人に、なぜ女性はスタバが好きなのかを聞いたことがある。質問を投げかけると、彼女らは少し考えた後に「ドリンクを好きにアレンジできるから」「店の雰囲気が好きだから」等、様々な答えを返してきた。なかには「スポーツ新聞をひろげて読むようなおじさんがいないから」と言う人もいた。
なるほど、確かにそういうおじさんはいない。言われてみれば、他のコーヒーチェーン店にいるような「中年のおじさん」ユーザーは少数なのだ。(いるとしてもビジネスの商談に使っている、もしくはパソコンで黙々と作業をしているような人物が多い)

 

これはとても興味深いと感じた。同社の躍進の背景には、「ある一定の顧客層が強烈に求める店づくり」を実現する、一貫した戦略があるのは明白である。

 

スターバックスの始まりは、1971年までさかのぼる。
同社の生みの親は、英語教師ジェリーボルドウィン氏と作家のゴードンボーガー氏だと言われている。2人はアラビカ種のコーヒーのおいしさに感動し、豆の選別や焙煎、抽出法等を学び、コーヒー豆の販売会社をシアトルに出店。店を切り盛りしていた。
その後81年に現在の会長であるハワード・シュルツ氏が同店に来店したところ、かつての創業者たちのように、コーヒーのおいしさにいたく感動し、なんと入社を決意。役員として入社してしまう。
同氏は業態を広げるべく豆の販売だけでなくカフェ経営を提案するが、周囲の合意が得られず断念。85年、苦悩の末に退社し、自身でカフェ経営を始める。
カフェ事業が軌道に乗り出した87年に、古巣であるスターバックスの店舗、工場、商標を投資家とともに買収し、念願のスターバックスブランドでのカフェ経営に乗り出す。
その後、同社は破竹の勢いで拡大していき、2014年には約60ヶ国に18,000以上の店舗数、全従業員数14万2千人という、世界最大級のコーヒーショップへと成長した。

 

なぜ、スターバックスは世界中の人々から愛されているのか。
その成功には様々な要因があるので一概には言えないが、理由の1つにマスを意識したマーケティングではなく、顧客1人ひとりに寄り添ったサービスを提供することを理念としたからだと考えられる。

 

実は、同社は店舗の拡大においてフランチャイズ(以下、FC)システムを導入していない。コンビニでもファーストフードでも、店舗ビジネスはFCにて拡販していくケースがほとんどなのだが、スターバックスはごく一部を除き、ほぼすべて直営店で運営されているのだ。
この決断は当初、株主から相当な非難を受けたらしい。直営にはコストとリスクが付きまとう。FCでの拡販は店舗ビジネスにおける定石なのだが、シュルツ氏はあえて直営店にこだわった。

 

なぜ直営店にこだわったのか。シュルツ氏がステークホルダーから非難されてでも守りたかったものは「従業員への教育」であった。
同氏は、FCシステムでは質の高い接客、ブランドの統一を実現することができないと判断し、より多くのコストを払い、余計なリスクを背負ってでも教育を優先したのだ。

 

もちろん、教育に重きを置いたのにも理由がある。それはただ飲料を売るのではなく、接客も含めた居心地の良い空間と、カスタマイズしたコーヒーとともに楽しむ個別の顧客体験を提供することを顧客に誓ったからであった。

 

同社は自分たちの提供する空間を、「サードプレイス」と呼んでいる。家でも職場でもない、第3の居場所を提供しているのだと。
従業員の接客、統一された店の雰囲気、コーヒーの品質、トッピング等、「スタバブランド」を徹底するための気配りが顧客の心に残り、信頼と親しみを獲得する。気配りの積み重ねがあるからこそ、顧客1人ひとりにとってのサードプレイスになることが可能になる。

筆者は、スタバ独自の「あの雰囲気」の要は、従業員にあると考えている。
もちろん店舗の内装や提供している飲食物も雰囲気づくりに関係しているだろうが、接客がなっていなかったら全てが台無しだろう。
そして、スタバのような接客、筆者は他のコーヒーショップでは受けたことがない。カップにメッセージを書いてくれるような個別の対応は、マニュアル化できない領域なのではないだろうか。

 

群を抜いて強いブランドの背景には、従業員への徹底した教育がある。
シュルツ氏の思い描いていたことが実現するまで膨大な時間がかかったかもしれないが、それが実現した暁には、スタバ独自の顧客体験を、全世界で提供することが可能になった。

 

一貫した哲学を持つことで、独自のブランドを確立することができる。
「サードプレイスの提供」という理念を従業員に浸透させることにより、人種の違い、宗教の違い、国の違いを超えて、一貫したブランドを展開できることを、同社は証明してくれた。

 

ブランドの要は人である。
人材育成とブランドづくりは、とても密接な関係を持っているのだ。

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