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Hot HR vol.151 – 社員のモチベーションを高め自律した働きを促すソーシャルウェブ型組織は実現可能か?

2014/04/21(最終更新日:2021/11/12)

当社の研修やセミナーでも何度も取り上げているが、アメリカのザッポスという企業をご存知だろうか。誰もが「成功しないだろう」と思われていた靴のオンラインショップというビジネスを、企業カルチャーを浸透させることで圧倒的なサービス力を実現し、驚異的な成長を続けているアパレル関連のオンラインショップを運営する企業である。
ザッポスの成長はめざましいものがあり、1999年の創業から10年後の2009年には売上高は10億ドルを超え、現在ネバダ本社の社員数は1500名を超えている。2009年アマゾン・ドットコムがその企業カルチャーと人材をどうしても手に入れたく、同社史上最大の金額となる12億ドルで、かつ独自ブランドや経営体制の維持という異例の条件で買収を行ったのも記憶に新しい。
このザッポスが、世界中の経営マネジメント関係者が注目する取り組みを行っている。今年に入りザッポスは、管理職、上司、会社役員などすべての階級、肩書きを撤廃すると発表したのだ。制度が完全に導入される2014年の12月までに、社内に400のサークル(上から下への一方的な命令系統ではなく、相互に働きかけ合うチームやプロジェクト)をつくり、ヒエラルキーでなく社員が自律的に運営する会社になるという。

 

ザッポスが目指す、階層のない管理体制は「ホラクラシー」と呼ばれる。「ホラクラシー」とは、ヒエラルキーの無い民主的な管理・組織システムを指す。ヒエラルキーが存在しないということは、課長や部長といった役職が存在せず、正にフラットな組織体制ということである。この「ホラクラシー」、もともとは米国IT・ソフトウエア企業で育まれた組織体制であり、Github、Valveなどといった企業でも長い間採用されているものである。
「ホラクラシー」は、「人」中心ではなく、「やらなければならない仕事」を中心に、会社を組織するのが特徴であり、その結果、社員には肩書きの必要性がなくなったのである。社員は、明確な目的を持っていくつかの職務を担当し、1つのチームや部署で働くのではなく、大抵は複数のチームの一員として、それぞれの場所で特定の役割を果たしている。企業の効率を大きく下げる「部署や役職によって複雑化した人間関係」を解消し、社員のフォーカスをオフィス政治からタスク中心に変えることで、大きな成果を生み出そうとする管理・組織システムなのである。

 

しかしこれまでも導入実績のある企業群は、スタートアップ間もないか、あるいはまだ成長途中の会社が多く、その規模は数10名から大きくても数100名規模の組織である。それに対してザッポスは、1999年創業とそれなりに歴史があり、事業が成功しているだけでなく、社員1500名という大組織である。
ザッポスはいかにしてこの取り組みを成功へと導くのであろうか。そのカギはやはり企業カルチャーの浸透と教育にある。管理職がいないということは、一人ひとりの働きや成果を見るのは一緒に働く他のスタッフメンバーとなるということである。この管理体制は多面評価制度と1セットになっているのである。多面評価では、教育を受けていないスタッフたちが相互に評価をしあうため、時に仕事に関係のない個人的側面を捉え、業務本来とは異なる評価を受ける可能性も指摘される。そこには本来の評価目的をしっかりと理解し、そして求められる働き方、その企業カルチャーを理解・浸透している社員たちが必要なのである。

 

ザッポスでは、社員が「ホラクラシー」のやり方のコツを掴むまでに6カ月、もしくはそれ以上かかるだろうと見ているが、米紙『ワシントンポスト』は、もっと長くかかるのではと指摘している。肯定的、否定的それぞれの意見や見解はあるものの、このザッポスの取組みに多くの注目が集まっている。世界中で企業カルチャーの浸透に取り組む企業のなかで、トップクラスの浸透成果を生み出しているザッポスである。
この取り組みが定着化すれば、より大きなメリット、高い目的意識や士気を維持したままでの組織の拡大、そして更なる事業成長という成果を得られるであろう。ザッポスの世界展開に向けた大きな布石にもなるはずである。ぜひ私たちもその成功と成果に大いに期待したいところである。

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