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Hot HR vol.138 「日本の評価・賃金制度の変遷」

2014/03/06(最終更新日:2021/11/12)

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5分でわかる最新人事トレンド
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「日本の評価・賃金制度の変遷」
従業員に対する評価と賃金への連動をどのように考えるか、今回はこの問題について日本の企業が制度設計上どのようなアプローチをしてきたかを確認してみたい。

 

■ 高度成長期にかけて機能した年功序列型賃金
戦後から高度成長期の日本において多くの企業が採用してきた賃金制度が「年功序列型賃金」である。これは日本経済が右肩上がりで、大量生産・大量販売による拡大が可能であった頃に最も機能した制度である。従業員は「同じ釜の飯を食う仲間」であり、報酬の分配も同列に考えられ、「現在を頑張れば明るい未来が待っている」という発想に基づいて設計されている。この制度は結果から考えても当時の日本企業に合致した制度であったといえる。

 

■ 国内の環境変化による制度疲労
しかし、国内成長の鈍化、市場競争の激化、日本企業のグローバル化に伴い、その制度は徐々に綻びを見せはじめる。特に企業内における労働人口の高齢化とポスト不足は大きな問題となった。ポスト不足は若年労働者の労働意欲の減退という問題も同時に引き起こし、人事制度は年功主義から能力主義へと移行していく。

 

■ 職能資格制度による「役職と賃金の分離」
能力主義を標榜する人事制度の中で考えられたのは「職能資格制度」と呼ばれるものである。職能資格制度においては「資格等級」という概念が導入され、年齢ではなく本人の能力の上昇に合わせて資格(賃金)を先行して上げることで役職不足を補い、同時に年功的な賃金上昇を抑える役割を果たすことに成功した。

 

■ 資格と成果のズレ
職能資格制度は当初は年功賃金の弱点を補うという意味で効果はあったものの運用が進む中で「資格等級と成果のズレ」が問題となってくる。また、当初の目的に反し年功的に資格等級を上げてしまう運用事例が散目され、企業の高コスト体質への歯止めとしては機能しなくなっていった。

 

■ 成果主義の登場
これらの問題の解決策として、またバブル経済の崩壊のタイミングとも相まって、日本の多くの企業はアメリカ型の成果主義の賃金制度を導入していく。この制度に於いては従業員の職務を定義し、その達成度合いを成果として評価し賃金に反映させる。しかしながら導入当初においては制度の誤った理解(人件費の削減目的のみによる制度の導入など)や、人事担当者や評価者の運用の習熟不足により、思うような成果を得られない企業も存在した。

 

■「職務」から「役割」へ
こうした中で、現在では個人の評価基軸を「職務」から「役割」へとシフトする動きが注目されている。これはいわば社内手続きとしてのノウハウである「職務」という概念から労働市場の中でも汎用性のある価値として認められる「役割」を評価していくという考え方である。「役割」とは、企業がその職位・職務に求める職責に加え、本人自らが環境の変化に即応し、職責の遂行に必要な要素を設定、実行していく力を指す。企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化し、国内外を問わず常にライバルからの競争圧力にさらされている現在の経営環境に於いては従業員に求められるのは各職務の遂行能力のみにとどまらず、自らの置かれた役割の価値を最大化するために如何に行動するか、ということになる。
評価基軸を定義する際に用いられるのが「職務記述書(job description)」である。役割毎に職務記述書を作成することで期待の範囲を明らかにし、達成基準も明快で納得性の高いものを作ることができる。また、役割を簡潔に定義することでそれに対する各人の更なる高次の目標設定を促し、いわゆる職務における「手段の目的化」を防ぐ効果もある。

 

評価制度は終身雇用・年功序列的に社員を丸抱えし、社内で通用するノウハウや経験の蓄積を重視していた時代から従業員個人の市場価値とそこから生み出される企業への貢献に着目する時代へと変化しているといえる。

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