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Hot HR vol.135 -シンガポールにおける報酬システムについて

2014/03/06(最終更新日:2021/11/12)

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5分で分かる最新人事トレンド
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シンガポールにおける報酬システムについて 「給料が高ければいいのか?」

 

■シンガポールにおける報酬システムについて
ビジネス環境で世界No.1であり、成長を続ける
世界の金融センター、シンガポール。
弊社にも問い合わせをいただくケースが多い国である。
その中でも特にご相談が多い「報酬システム」について、
今週と次回の2号に渡って見ていきたいと思う。

 

■最近の失業率
シンガポール人材開発省(MOM=Ministry Of Manpower)
の報道によると最近の失業率(2013年1月~3月:速報値)
では1.9%と通昨年通年の失業率とほぼ同じ低い水準であった。

 

日本が改善されているものの約5%近辺、ドイツが6%、
フランスが9.5%で、最近財政悪化しているギリシャでは
18%となっている現状を考えると世界的にも
いかに優れているかが分かる。

 

企業の充足率も相変わらず6割に達しておらず
労働市場的には引き続き「売手市場」が続いており
「人が企業を選ぶ」状況が続いている。

 

■退職につながるプロセス
弊社が提携しているシンガポールのコンサルティング企業における調査では、
日系企業の中でシンガポール人が転職する(今の会社を辞めたい)動機として
常に上位に上がるのは、(日本人)上司のマネージメント能力不足
(なんでこの人が上司なのか・日本人ばかりひいきする・英語ができない)や、
成長機会が少ない(トレーニングが全くない、日本人は若手社員ばかり)といった点だ。
これに加え「昇進の機会が少ない」(上のポジションは日本人で固められている、
頑張っても上には一生行けない)ことも挙げられ、
その延長線として「不適切な待遇・ベネフィット」につながり「退職」となる。
辞表を出された上司は「なんで?」と思うこともしばしば。

 

■それほど理想の会社はないものの
要は職場環境において、将来へのキャリアパス、自分が自己研鑽、
自己啓発できる上司と会社からの能力開発研修があれば、
「給料」への不満足には即つながらないとのことである。

 

また現在は「ワークライフバランス」重視の傾向が
若手社員の間で広がっており、フレックスタイム制による勤務開始、
勤務終了時間の柔軟性を持たせたりする企業も増えてきている。
これも社員にとっては大きな「ベネフィット」である。

 

この提携企業には6人のローカルスタッフがいる。
シンガポール国籍の他にマレーシア国籍、インドネシア国籍の社員がおり、
これに日本国籍の社員を加えても20人以下の中小企業であるが、
この規模でもシンガポールでは多国籍なのは当たり前である。
先般、このスタッフ全員を対象にベネフィット・サーベイを行った。

 

給料についての不満があるものは会社に十分な実績を出している社員で
個人の成績を重視する傾向にある。
但し、人間関係、その他会社のベネフィットには満足しており、
総合的にはすぐ転職につながるとは思えない。
しかし、一度人間関係にひびが入ったりすれば、
能力が有るが故に即、転職活動の動機につながってしまう。

 

「いつまでもいると思うな、有能な社員と親」
といったような揶揄があるように、
正しい報酬をバランス良く提供し
会社の業績につなげていくことは人事政策、
いや、人事そのものといっても過言ではない。

 

■「報酬システム」について
人事マネージメントを行う上で評価ももちろん大切であるが、
評価に見合った「処遇」=「報酬」につなげなければ評価の意味が無くなってしまう。
報酬システムとは、固定給与、インセンティブ(ボーナス)、
その他のベネフィットから構成され、
それを「評価」により社員に分配することである。

 

■では給料が高ければいいのか?
冒頭で失業率の話をしたが、報酬システムが企業の中で担う第一の機能としては、
従業員を組織に引きつけ定着させることである。
当たり前であるが労働市場より安い給料で、
面白くない職場(人間関係が悪い、上司が理不尽、勤務場所が不便)であれば、
他に行く場所が絶望的にないのなら別であるが、
シンガポールではまず辞職してしまう。

 

では高い給料だけ支払っていればいいのか
と言えばそれだけではないのだが、
少なくとも社員の引き留めにはつながる。
日系企業の人事担当者からは、
「優秀なローカル社員の満足度が気になり、引き留めには常に注意を払っている」との声も聞かれる。
また、転職希望者の転職動機の中に「仕事が少ない」というのがある、
給料額を見てみると市場的には高い方であり、
「額」だけ見ると満足につながっているように見えるが、
「仕事がない」=「労働の対価を正しくもらっていない」ことに
不満を持っている方がいるのも事実である。
「こんなに支払っているのに何で辞めるんだ?」とマネージメントは不思議に思うかもしれない。
重要なのは単に給料を支払うだけでなく、正しい報酬システムにより
組織の期待する行動をスタッフに示し、個々のモチベーションを高め
業績に連動させていくことである。
なぜならスタッフは行動して結果を出すことで
望む報酬が手に入るとき「満足」するからである。

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