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ブランド戦略を取り入れれば日本の大学もグローバル化できる

2015/01/14(最終更新日:2020/07/15)

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ブランディング

毎年正月恒例の箱根駅伝、今年は青山学院大学の初優勝、しかも総合タイム新記録という大きなご褒美つきという結果であった。

 

青山学院大学、つまり「青学」といえば、おそらくその立地が要因となって、昔から「(いい意味の)ナンパ=オシャレ」なイメージのある大学で、それが青学の「ブランド」ともいえる。そんな青学が「気合根性第一」ともいえる「硬派」なイメージの競技である箱根駅伝において、初出場から数年はまったく振るわない成績であったにも関わらず、数年前からいつのまにか常連校となり、今年はついに記録的タイムで総合優勝。これを20年前に誰が想像しただろうか。

箱根駅伝優勝は大快挙だが、青学のイメージとはやっぱり結びつきにくい。箱根駅伝出場以前の青山学院のイメージと、箱根駅伝優勝校としての青山学院のイメージがどうしてもブランドとして統一感を持ちにくいため、青学は今後しっかりと自己ブランディングをしていかないと却って大学のブランドイメージそのものにブレが生じる可能性すらある。それは今後青学に入学する学生の数に直結するほどの非常に重要なポイントになりうる。

 

日本の大学の「ブランドイメージ」というとみなさんはどういうことを思い浮かべるだろうか。たとえば、「偏差値が高く、入学が難しい」、「女子アナを多く輩出している」、「どのスポーツが強いか」、「立地が良い、良くない」など、日本の各大学の世間一般が持つイメージを決定している要素の多くは、実は大学側が努めて意識して形成したものではなく、かなりの面で「偶然そうなった結果、そのイメージになっただけ」というものが多い。

 

つまり、日本の大学のブランドイメージは、大学が戦略的に作り出しているのではなく、世間一般がかなり勝手に思い描いた印象に大学のほうがひっぱられた(もっというと、流された)結果としての「副産物的要素」に過ぎず、厳密な意味での「ブランド構築マネージメント」の成果によるものとは言いがたいのである。

 

一方でアメリカの大学を見てみると、これが日本と正反対である。アメリカの大学、とくにトップクラスとされる大学は、大学内に専門の部署を設け、完全に大学が自分自身で意識的に自分の大学のブランド構築を非常に戦略的にマネージしているのだ。

 

たとえば、ウェストコーストカルチャーの権化として日本で70年代に大ブレイクしたUCLA(University of California at Los Angeles = カリフォルニア州立カリフォルニア大学ロサンゼルス校)は今でも変わらず下記のとおり明確なブランドイメージを持っている。
1) 定評のある学部・学科 = 教育系、映像・シアター系(立地がハリウッドに近い)
2) スクールカラー = 水色と金色
3) 強いスポーツ = アメリカンフットボール(ローズボウルという有名なスタジアムをホームとしている)、バスケット、テニスは何人もの有名プロ選手を輩出している。(ちなみに、アメリカでは同じ大学のスポーツチームのニックネームは全部同じ。UCLAなら、フットボールチームもバスケチームもチアリーダーも、ぜんぶ同じBruinsである)

 

アメリカの大学のブランディングファクターは必ず上記の3つを含む基盤の上に戦略的に構築された非常に明解なもので、ほとんどのアメリカ人が(その属性によらず)UCLAと聞けばすぐに上記を即時に思い浮かべるほどに、各大学が全米はもちろん、世界的にブランドを発信・浸透させるというマネージメントとそれに必要な投資を常に行っているのだ。

定評のある学部はその定評が崩れるようなことがないよう優秀な教授と学生を世界中から確保し、強いスポーツについては世界中にスカウトを派遣して優秀な選手を集め続けている。一般企業やプロスポーツチームのブランディングとまったく同じことを大学がやっている。アメリカでは大学そのものが完全なるグローバルブランドビジネスなのだ。

 

日本においては大学などの教育機関は「聖域」とみなされているところがあり、それをビジネスとして捉えるとは何事か、という考えが強い(国公立ならなおさらであろう)。しかし実際はその昔の六大学全盛期の早慶戦はもとより、箱根駅伝など古くから日本でも大学のブランディングとしてのメディアは豊富にあるのだ。これをビジネス目線での積極的自己ブランディングに有効利用しないのは実にもったいない。

 

日本の大学のスクールカラーは一部有名大学の例外を除けば在学生か卒業生くらいしか知らないだろうし、体育会を大学PRのブランディングのツールとするなんてトンデモナイことであり、どの大学のどの学部学科に定評があるかなんてことはその大学の志願者でなければ興味すらないだろう。それほど日本の大学はブランディングなどとは無縁なのだ。

 

青山学院が果たして箱根駅伝を「ブランディング」の一環として捉えていたかどうかは定かではないが、日本の大学がもっと自己発生型のブランドマネージメントを推進するようになれば、国内外へ、とくに海外に向けてもっと日本の大学の存在をグローバルにアピールできるようになるはずである。

 

 

筆者プロフィール
野田大介
コンサルタント

 

略歴 
神奈川県生まれ 神奈川県立七里ガ浜高等学校
立教大学 理学部 数学科卒。
The University of Alabama MBA
経営大学院修了

 

14年半の米国在住後帰国。MBA修了後、米国にて建設会社でプロジェクトマネジャー、化粧品会社にて米国支社長、帰国後マーケティングリサーチ会社勤務。

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