イマジナインタビュー Interview

  • 組織づくり

#09-2 ブランディングと教育の未来を形作る

~革新的な教育哲学が次世代のリーダーをいかに育むか~

はじめに:ブランディングと教育が出会う場所 一見すると、企業のブランディングと教育は全く別の分野に見えるかもしれません。 しかし、その核心部分では、どちらも「価値を創造し、提供する」という同じ使命を共有しています。 企業が製品や哲学を通して自社の価値を伝え、顧客との信頼を築くように、学校は独自の教育実践を通して次世代に価値を提供し、社会の基盤を築いています。 これら二つの世界がどのように交差するのかを探るため、創立25周年を迎えた南池袋の革新的な教育機関、ニュー・インターナショナル・スクール・オブ・ジャパン(NewIS)のディレクターにお話を伺いました。このインタビューは、ビジネスと教育の表面的な部分だけでなく、今日の急速に変化する世界で個人や組織がどのように成長し、適応していくことができるかについての深い洞察を提供します。

運営会社:株式会社イマジナ

イマジナの視点:インナーブランディングと教育の連携

イマジナでは、ブランディングが私たちの仕事の中心ですが、そのアプローチは従来の広告の枠をはるかに超えています。私たちは、コーポレートブランディングとインナーブランディングという2つの柱を重視しています。コーポレートブランディングが組織のイメージや価値を外部に伝えるものであるのに対し、インナーブランディングは、従業員の満足度とエンゲージメントが最終的に企業の真のブランド価値を決定するという信念に基づいています。結局のところ、従業員は企業にとって最も強力なブランドアンバサダーなのです。

この哲学こそ、イマジナが経営者や管理職向けの教育プログラムに力を入れる理由でもあります。人材を育成し、組織文化を育むことはブランドを強化するために不可欠であり、教育はその達成のための最も効果的なツールの一つとして機能します。

学校の哲学:ミッションをブランドに変える

 

NewISは、創設者の19年間にわたるインターナショナルスクールでの経験に根ざした、オーダーメイドの教育機関です。そのミッションは、空虚な抽象論ではなく、学校が何を行うかを詳細に記述したものであり、単なる声明ではなく、そのブランドの本質そのものです。ディレクターが説明するように、学校のミッションにおける譲れない声明と学校の実践との一貫性が、CIS(インターナショナル会議)の認定プロセスを通じて検証されたように、この学校を際立たせているのです。

 

従来のモデルを超えて:バイリンガル教育への独自のアプローチ

 

ディレクターのスティーブン・R・パール氏は、インターナショナルスクールの従来の「英語のみ」のモデルに異議を唱えます。代わりに、NewISは英語と日本語が等しく評価されるバイリンガル環境を優先しています。各教室には、それぞれの言語を担当する2人の教師がおり、言語の使用に関する厳格な規則はありません。

 

この設計は、意図的に「境界のない」学習環境を作り出し、言語は単に学習する科目ではなく、思考と表現のためのツールとなります。ジム・カミンズ博士の共通の共有基底言語能力モデルに基づき、学校は言語を超えた概念の転移を重視しています。例えば、生徒は「蒸発」のような抽象的な概念を英語と日本語の両方で探求し、より深く、より柔軟な思考を育みます。

 

異年齢教育:世代を超えた学び

 

NewISは、厳格な学年別の区分ではなく、生徒を3年間のサイクルでグループ化する異年齢教育を採用しています。ヴィゴツキーの最近接発達領域に根ざしたこのモデルは、子供たちが異なる年齢の仲間から学ぶことを可能にし、協調と相互の成長を促します。

 

「発達の最近接領域(ZPD)」とは

発達の最近接領域(Zone of Proximal Development, ZPD)は、旧ソ連の心理学者 レフ・ヴィゴツキー(Vygotsky) が提唱した理論です。

この考え方では、子どもの成長や学びを理解する際に、次の2つの水準を区別します。

 
  • 現下の発達水準

 子どもが 一人でできること。

 例:すでに習得していて、誰の助けもなく解決できる課題。

  • 潜在的発達水準
 

 子どもが 一人ではまだできないけれど、他者の助けがあればできること。

 例:先生のヒントや、少し上のレベルの友達との協力があれば解ける課題。

そして、この 「一人でできること」と「助けがあればできること」の間の領域 を「発達の最近接領域」と呼びます。

 

標準的な教科書はなく、代わりに生徒は46,000冊以上の図書館の本、テクノロジー、校外学習など、さまざまなリソースを組み合わせて学びます。学校のカリキュラムはスコットランドのフレームワークに基づいており、年齢ではなく個々の発達段階に焦点を当てたその柔軟性のために選ばれました。

 

成長志向の評価とデジタルリテラシー

 

NewISは、評価に対して非伝統的なアプローチをとっています。生徒が互いにランク付けされることはなく、成績が日常的に家庭に送られることもありません。代わりに、進捗は逸話的なレポートやポートフォリオに記録され、生徒は自分自身の学習の道のりを振り返り、発表します。賞ではなく卒業証書が修了を認め、教育は競争ではなく内面の成長を育むべきだという考えを強化しています。

デジタルリテラシーもまた、単なる技術的なスキルとしてではなく、問題を複数の視点から見る能力として広く捉えられています。例えば、生徒は戦争について、異なる当事者の立場にたって学び、批判的分析と異文化理解を促します。教員の半分が日本人、半分が国際的な教師で構成されており、チームティーチングは価値観や視点の豊かな交流を育みます。

 

組織としての学校:コラボレーションを核に

 

NewISでは、教室は広々としており、そのような環境もミッションに組み込まれているため、必要に応じて学校は施設を拡張せざるを得ません。教師は講義者としてではなく、学習のファシリテーターとして機能し、生徒が積極的に問題解決に取り組むのを助けます。

ディレクターは、フィンランド発祥で、組織の対立を解決し、協力を改善するために使用されるフレームワークである、ユーリア・エンゲストロームの活動理論「三角形モデル」からインスピレーションを得ています。

引用:https://smart-r.co.jp/topics/0905

三角形モデルとは、個人の行動が集団の中でどのように影響し合い、その結果として組織全体の活動にどのように貢献していくかを説明する理論的枠組みです。

このモデルの中心には「活動する主体」「対象となるもの」「それを媒介する道具(手段)」が位置づけられており、三者の相互作用を通じて、主体の学習や自己変革が促されると考えられています。

また、この枠組みは単なる個人レベルの行動にとどまらず、社会的・文化的な背景を含めて捉え、集団全体がどのように関わり合うかを重視している点に特徴があります。

最終的には、組織や教育現場といった多様な集団の中で、学びがどのように広がり発展していくのかを明らかにすることを目的としています。

NewISは、大々的な広告の代わりに、PRと長時間のオリエンテーションに重点を置き、そのミッションに共鳴するスタッフや家族を引き付けています。採用では、スキルだけでなく、学校の価値観との一致も重視し、共通の目的を持つ文化を確保しています。

 

共通のテーマ:未来のための対話

 

イマジナとNewISは、その立場の違いにもかかわらず、重要な共通点を保有しています。

・ブランディングと教育は不可分である:企業にとって、ブランディングは価値観、文化、従業員のエンゲージメントから生まれます。学校にとって、ミッション主導の哲学がブランドです。

・コラボレーションが成長を促進する:イマジナは「シナジーマップ」のようなツールを使って組織のつながりを可視化し、NewISはチームティーチング、異年齢クラス、生徒主導のポートフォリオ発表会を通じてコラボレーションを育みます。

両者とも、個人や組織がパートナーシップを築き、問題を共同で解決し、急速に進化する社会で適応し続ける必要性を強調しています。

AIもまた、共通のテーマとして浮かび上がりました。AIが情報処理をますます引き継ぐ中で、ディレクターは、人間は批判的思考、創造性、問題解決能力といった高次のスキルを養わなければならないと強調します。イマジナもこれに同調し、この新しい時代で成功できる未来のリーダーを育てるために教育が不可欠であると考えています。

 

結論:社会変革の力としての教育

 

今回の対談は、ブランディングと教育がいかに密接に絡み合っているかを明らかにしました。イマジナは従業員の満足度と成長をブランド価値の基盤と見なし、NewISはバイリンガル、異年齢、成長志向の教育を通じてそのミッションを実践しています。両者とも、暗記よりも批判的思考、問題解決、コラボレーションを優先する教育哲学を取り入れています。

記憶に残る洞察としては、カリフォルニアのエリート寄宿学校の校長から直接聞いた「クラスの下半分の生徒たちに神の祝福を」という言葉に対する校長の組織的な考察や、「アイデンティティは間違いである」という彼自身の考えが含まれます。これらの視点は、成功の固定的な尺度に挑戦し、個性と絶え間ない進化への尊重を促します。

AIが私たちの世界を再構築する中で、コンセンサスは明確です。人間の価値は情報処理能力にあるのではなく、批判的に考え、創造し、共感を持って協力する能力にあります。ビジネスであれ教育であれ、この共通の哲学は、より適応性があり、革新的で、人間中心の未来を形作る力を持っています。

ニュー・インターナショナル・スクール・オブ・ジャパンについてもっと知る

 

■スティーブン・パー氏のプロフィール

ニュー・インターナショナル・スクールの創設者兼校長。

ブラウン大学で学士号、UCLAで修士号を取得。 

プリンシパルズ・トレーニング・センターから国際学校リーダーシップの、UCLAエクステンションから大学カウンセリングの証明書も取得。

2000年8月までの19年間、東京のインターナショナルスクールで管理者および教師として勤務。

その経験と多くの研修や学会への参加を通じて、「新しい学校」のアプローチが現代および未来の生徒にとって不可欠であると確信し、ニュー・インターナショナル・スクールを設立しました。『マルチエイジ教育』や『バイリンガル教育』といった特徴を持った学校です。

過去には、以下の役職を歴任しています。

・日本インターナショナルスクール協議会(JCIS)のセクレタリー兼副会長

・米国カリキュラム開発協会の日本支部(JapanASCD)の元会長

・東京インターナショナルプリスクール協会(TAIP)の元会長

会社概要
社  名
New International School of Japan
設  立
2001
事業内容
International School
従業人数
会社HP
https://www.newis.ed.jp/WELCOME
イマジナインタビューとは

イマジナインタビューとは、ブランディング領域で活躍するキーパーソンが「人事の未来」を語るWEBメディアです。人々の働き方や人材の価値が急速な変化を迎えている今、人事のキーパーソンとして真摯に課題と向き合う方々に「人事/HRの在り方」、「テクノロジーの活用」などを語っていただくことで、人事担当者が抱える課題を解決に導くヒントをお届けします。

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