Hot HR vol.152 – 米国にならう「従業員満足度」=「強い企業」の方程式
2014/04/28(最終更新日:2021/11/12)
米大手ビジネスブログメディア、ビジネスインサイダー(Business Insider)が4月15日に発表した「Best Employer in America」というランキングがある。
これはフォーチュン500※(Fortune500)企業リストの中から従業員のハッピネス(幸せ)に対する満足度、すなわち「従業員満足」を同社が独自に集計したランキング結果である。(※米フォーチュン誌が年1回編集・発行するリストの1つで、総収入をもとに米企業をランク付けしたもの。世界的に企業名と共に保有するブランド価値が高いとされ、影響力の大きい企業が名を連ねる。)
本調査における従業員の幸せに対する満足度は、仕事に対する充実感、職務に対する意義、職場での低ストレス度などの項目に基づき、集計されている。
このランキングにおいて2年間連続首位を誇るCelgene Corporationは設立28年と比較的若い企業で、がんや深刻な免疫・炎症性疾患の領域において、新薬の発見・開発・販売を行う。
「世界中の患者様により良い生活を送っていただくこと」が企業ミッションとして明確にトップから従業員に伝えられ、徹底的にその理念が従業員に浸透している。ほぼ大多数の従業員は研究・開発に携わっているにもかかわらず、従業員は自らの手掛ける治療薬の投与を受けている患者と接し、一人ひとりが患者様の「より良い生活を送っていただくこと」に影響が与えられる充実感を日々の業務から密接に実感し、5500人の従業員のうち93%が自らの仕事について、意義のあるものとし高い意欲をもって仕事に取り組んでいるという。
日本の若手・中堅従業員で「働き甲斐」があると答えた数字:たった20%(出典元:プレジデント 2010年5.3号)とは比較にならない高い数字である。
前述Celgene Corporationに関わらず、フォーチュン誌による世界企業上位ランキングや、経済・金融・通信・放送事業を手がける大手総合情報サービス企業のブルームバーグが集計する世界株式時価総額ランキングにおいて、トップ上位は常にグーグル、フェイスブック、ザッポス等の米企業が独占している事である。
これら米トップ企業に共通していることは、業種に関わらず、「どんな人と、どんな信念で、どんな組織を作るか?」という顧客や社会に対する企業の理念とコミットメントが明確に従業員に指し示され、あるべき企業の姿、カルチャーが明確であり、自然と企業と従業員が同じ指標を持ち、ベクトルを向いて、顧客満足、働き甲斐のある職場づくりを大切にしている事である。
米企業は、ロジカルシンキングや事業戦略等、合理性がクローズアップされやすいが、実は企業理念がきわめて重視されている。グーグルの理念は「世界中の情報を検索可能にする」、フェイスブックの理念は「世界中の情報を透明化する」、ザッポスの理念は「お客様のWow!!(驚嘆)を追求する」等である。
これらの米国企業が行き着いた結論は、「従業員満足」とは給与が高く、福利厚生を良くするということではなく、従業員が自社・自分の仕事に誇りを持ち、企業の理念に共感して仕事を通して自分自身の成長を実感できる職場こそが「働き甲斐のある職場」であり「従業員満足」であると考えているのだ。さらに、様々なビジネススクールの研究の結果において「従業員満足」度の高い企業は収益性も高いことも報告されている。
日本の伝統的なコミュニケーション文化で「暗黙の了解」というのがあるが、これから更に国境・人種・文化を越えた多様性のマネジメントが必要となる日本企業がグローバル環境で勝ち抜いてゆくためには、米国企業に習い、自分たちの企業がどんな信念でどのような組織を作ってゆくのか。企業として目指すべき方向性とミッションは何か。
これらを積極的に従業員に伝え、浸透させる環境と文化づくりが必要であり、最終的にそれが従業員のやりがい、達成感である「従業員満足」に繋がり、強い企業ブランドを生み出すのではないだろうか。