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Hot HR vol.134 人材という観点から見たシンガポールの魅力と留意点

2014/03/06(最終更新日:2021/11/12)

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5分で分かる最新人事トレンド
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■■人材という観点から見たシンガポールの魅力と留意点

 

(1)あらためて見直される「ハブ機能」

 

2012年のジェトロの資料によると、同シンガポール事務所へ相談件数は2009年の211件から、2011年にはその3倍以上にあたる735件に達したという。そのうち新規進出に関する相談が183件、しかもその6割弱がサービス業などの中小企業からだった。
また、最近では都市銀行だけでなく地方銀行も駐在員事務所をシンガポールに開設し、地方の中小企業の進出を支援する例が増えている。

 

①東南アジアの中心に位置する「地の利」(2013年世界空港ランキングで総合1位を受賞したチャンギ空港の利便性、世界有数の取扱量を誇る港湾設備など)
②国民の英語レベルの高さ、整ったビジネス・インフラ(金融・サービス機能の充実、安定した労使関係など)
③優遇税制。(法人税率が17%と低く、キャピタルゲインが非課税である)
④政治の安定性と・効率性・クリーンさなど

 

総じて、シンガポールが有する「アジアのハブ」としての充実した内容が、企業を引き寄せる魅力だといっていいだろう。ちなみに、ジェトロ、シンガポール日本商工会議所(JCCI)、在シンガポール日本国大使館が共同実施したアンケート調査でも、回答したJCCI加盟法人213社の約36%がシンガポールに何らかの地域統括機能(ハブ機能)があると答え、将来設置することを検討している企業を含めると約63%に達する(2012年)。
なお、日本企業の半数以上は、シンガポールのハブ機能がインドまでカバーしているとのことだ。

 

(2) 期待される「人事・労務管理・人材育成」機能

 

こうした地域統括機能として求められる内容はさまざまだが、なかでも重要視されているのが「経営の現地化」と「効率的な海外子会社運営」といっていいだろう。逆にいえば、アジアに進出した欧米企業に比べて、日本企業が不得意あるいは欠けているとされるのが、こうした点なのである。つまり、マネジメントが現場から離れた場所に据え置かれているわけだ。
ちなみに(2)の調査では、提供される地域統括機能として
・販売・マーケティング(71.4%)
・人事・労務管理・人材育成(67.5%)
・金融・財務・為替(62.3%)
などが挙げられているが、なかでも「人事・労務管理・人材育成」を提供する企業が前回調査(2007 年,43.5%)から急増しているのが目立つ。ジェトロはこの背景を、「域内グループの人事情報の一元管理や多国籍の従業員の階層別研修や幹部人材育成をシンガポールで行う企業が増えている」からと推測している。
日本企業がこうした人事領域を重要視しはじめたのは歓迎すべきことなのだが、ある意味では「遅きに失した感」があることは否めない。

 

(3) 日本企業への就労が不人気なワケ

 

というのも、シンガポールの求職市場では、日本企業の不人気ぶりがひときわ目立つのだ。優秀な人材であればあるだけ、日本企業で働きたくないという。なぜか? それを象徴するのがいわゆる「ガラスの天井」という人事制度だ。あるアメリカ人女性ライターは、1994年にはアメリカの日系企業にかけて「障子の天井」(rice paper ceiling)と呼んでいる。
「ガラスの天井」とは、昇進できる能力があるにもかかわらず、性別や人種などを理由にそれが阻まれている状態をいう。もとは女性に対する差別的待遇をいうのにもちいられた言葉だが、ここでは「現地のトップのポストが日本本社から定期的に派遣されてくる駐在員によって占有されており、現地のローカル採用の社員は、決してそのポジションに就けないこと」をいう。
いうまでもなく、日本には年功序列型人事制度がまだまだ根強く存在し、しかもそれをローカライズすることなく過去40年以上、現地に適用している企業が少なくないからだ。かつてはそれでも、「日本企業から多くを学ぼう」と優秀な人材が集まったが、現在は様変わりした。優秀な人材は最初から成果報酬型の外国資本企業に就労し、パフォーマンスを出せない人材ばかりが日系企業に残るという状況が現出しているのだ。
このことは何もシンガポールにかぎったことではない。そして多くの場合、問題は本社サイドにあるといっていい。本社の意志決定組織のなかに欠如しているのは、諸外国における多様な価値観の存在を理解し、かつそれを受容できる人材──つまり「経営の現地化」と「効率的な海外子会社運営」を推進できるだけのグローバル人材を雇う準備ができていないのだ。

 

(4)グローバル人事戦略を遂行する

 

日本では、給与、職の安定、会社の安定などを社員のモチベーションに繋げてきた。しかし、グローバル人材を引き付けるにはそれでは魅力がない。明確な企業のミッション、チャレンジングな仕事、明確なキャリアパス、業績に連動した報酬制度などを早急に実施しなくてはならない。これは、シンガポールに限ったことではなく、海外にでているすべての日系企業が実施すべき項目である。

 

グローバル人事へのステップとして
A)現状把握:社員データ管理(世界中にどのようなスキルセットの社員がいるかの一括管理)
B)実務の共通化:採用、福利厚生、給与などのグローバルでの共通化
C)現地での権限:業績連動型評価制度の現地での決定権(多くの日系企業が昇給、昇格の最終決定権を日本が持っている)
D)グローバル人事戦略の実行:共通の戦略を持ち、ローカルで実施する。

 

どれだけ、早くシフトできるかが、成功の鍵になるであろう。

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