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Hot HR vol.137 -東南アジアにおける報酬システムについて 「現地社員が自分の給料が低いと感じる時」

2014/03/06(最終更新日:2021/11/12)

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5分で分かる最新人事トレンド
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東南アジアにおける報酬システムについて 「現地社員が自分の給料が低いと感じる時」

 

■シンガポールの現在の様子、東南アジアにおける「職」の考え方
シンガポールの人口は2012年6月末時点で531万人である。
そのうち62%の328万人がシンガポール国籍である。
残りの38%がシンガポール国籍以外の「外国人」となるのだが、
この外国人比率は世界でも圧倒的に高い数値であり、
日本に比べ人口比で20倍以上も外国人が多いことになる。
また、「外国人」のうち、永住権を持つものは53万人のみであり、
残りの150万人が永住権をもたない「外国人」となる。
このほとんどがメイド(シンガポールではFDW=Foreign
Domestic Workerという)と建設業で雇われた労働者である。

 

■進む労働分配
シンガポールにおける仕事では、いい意味で<労働分配>が進んでいます。
例えばレストランでは、作る人、オーダーを取りに来る人、片付ける人、
皿を洗う人が全部違う、場合によってはそれぞれの国籍が全員違う場合がある。
この「区別」が普通であり、シンガポールの高度成長を支えてきた。
つまり「外国人労働者」を活用した高度な<分業>というインフラを作り上げ、
ホワイトカラーたちの夫婦共働きを支えてきたのである。
繰り返しになるが、この<分業>が当たり前の仕組みとして捉えられ、
労働者たちは自分の職務以外の仕事を決して広げようとせず、
その境界線を犯したりはしない。
ちなみに世界の多くの国が分業で仕事をする文化であり、
チームワークでの仕事はそれなりの指示が必要となる。

 

■先に「いくらくれるの?」
とある日系企業の社長から聞いた話であるが、
入社半年以上経った若手のスタッフに、
そろそろ新しい仕事を与えようとしたら、
”How much do you increase my salary?”と真顔で言われたそうだ。
これは「仕事にかかる労力や努力」を増やすのであれば、
まずは先に「仕事に対する対価・報酬」をも増やし、
「労力」=「対価・報酬」にしろということの表れだったのだろう。
日本人としては、先に努力ややる気を示してもらった上で評価を行い、
その後報酬を上げるつもりであったのだが、
ここでも日本と海外の人事の壁が存在する。
ほとんどの海外の従業員は会社の箱ではなく、
ジョブと契約している感覚なのだ。

 

■公平理論
1965年に経済学者アダム・スミスによって提唱された
「公平理論」または「エクイティー理論」によると、
人は、「自分の仕事への取り組みと対価としての報酬」と、
「他人の仕事への取り組みと対価としての報酬」を比較し、
その内容に不公平を感じる場合、公平性を感じるような状態に近づく
行動をとるように動機づけられるのである。
アジアを含め、日本以外の海外での報酬システムを考える上で、
「従業員は自分の報酬に対する満足・不満足を他人の報酬との比較の中で認識する」
ということを念頭に置く必要がある。
従業員は自分が認識する出力O(Output:給与、福利厚生や仕事環境など)を、
自分が投入したと考える入力I(Input:努力、能力 や経験など)との比でとらえ、
これを他人の出力Oと、入力Iの比と比較する。

 

■求められるマネジメント
他人との比較において、ある従業員が同じINPUTなのに
自分より他の人の給料のほうが高いと感じる時、不公平を感じる。
その場合、OUTPUTを他人に近づけるような行動をとるようになる。
その場合東南アジアでは、INPUTを小さくする、
つまり力を投じても得るものが少ないのであれば、
そもそも力を余分に入れないことにより、
OUTPUT(他人との比較による低収入)に合わせようとする傾向が強い。
日本人の駐在員たちはそもそも、彼らの「ジョブとの契約」という感覚や、
「I=O」という動機づけを理解しておらず、
これまで通りの日本式「報酬は後からついてくる」理論を押し付け、
「I>O」を強制しようとして、マネジメントで破綻をきたしているケースが非常に多い。
求められているのは、彼ら従業員の仕事に対する感覚や動機づけを理解し、
彼らと「交渉」のマネジメントを行うことである。
彼らにとって報酬は上司から言われ変えられないような絶対的なものではなく、
他人との比較の結果であることを理解し、
上手く「交渉」を進めていかなければならない。
やり方を間違えると、不満は拡大し、比較そのものをやめて、
最終的にさっさと会社を辞めてしまうことを選択してしまうのである。

 

次号では、さらに報酬システムについて考えを深め、単なる賃上げではない施策について
見ていきたいと思う。

 

<筆者紹介>
アジア人財カンパニー
グッドジョブ・クリエーションズ・シンガポール
代表取締役社長 斉藤秀樹

 

1966年生まれ。タイ国立マヒドン経営大学院卒。
93年~97年ヤオハン香港本社で人事畑を歩む。
98年~01年大手出版社で年間100人の採用実績。
2001年~06年日系人材紹介会社パソナ・タイ社長。
米系人事戦略コンサルタント会社ヘイ勤務を経て
07年にグッドジョブ・クリエーションズ設立。
今後は他の東南アジア諸国での展開を検討中
●E-mail: saito@goodjobcreations.com.sg
●URL: http://www.goodjobcreations.com.sg

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