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Hot HR vol.68 差をつけられた日本のグローバル化

2013/12/18(最終更新日:2021/11/09)

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5分で分かる最新人事トレンド
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差をつけられた日本のグローバル化

 

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◆◆日本のCEOが見る先は◆◆

 

IBMが今年5月に発表した「IBM Global CEO Study 2010」では、日本を含む世界中の
CEOや公共機関のリーダー1541名もの意見が反映されています。

 

そこで明らかになっているのが、今後3年間で自社に大きな影響を与える外部要因
として、「グローバル化」を強く意識している日本のCEOが多いという事実。

 

日本で41%がそう考えていることに対し、世界では23%に留まっています。
そこから予測できるのは、現在日本が必死にグローバル化を進めているのに対し、
世界ではもう既にグローバル化は起きており、適応してきているという認識がある
ということです。つまり、日本はグローバル化で遅れをとっているのです。

 

◆◆グローバル化で置いてけぼり?◆◆

 

一般的に企業のグローバル化は4つのフェーズに分けられます。

 

┏┓モノの輸出:現地市場への参入
┗①━━━━━━━━━━━━━━
┏┓コスト削減:現地でつくり現地で売る
┗②━━━━━━━━━━━━━━━━
┏┓国際基準の導入:経営の地域最適化
┗③━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏┓グローバル・ワン:経営のグローバル一本化
┗④━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

日本は、早くから製造業による製品の輸出でグローバルに成功し、より低いコストを
求めて、生産技術や工場管理の海外移転を行ってきました。ここまでがフェーズ②です。
ここまででも十分グローバル化していると思われていましたが、高い海外売上比率だけで
グローバル化とは言えません。
人材や人事機能などの基準を世界的に統一してこそ経営のグローバル化となるのです。
多くの日本企業はここ数年でフェーズ③へのステップアップを進めているかと思いますが、
世界にひしめく真のグローバル企業は既にフェーズ④に達しているのです。
フェーズ④は、どの国で働いていても、その企業が語る価値観を共有し、明確な戦略をもって
世界各地の優秀な人材を動かしながら目標に到達するという状態。
ようするに、グローバルな戦略を実行していくためには『グローバルな人材』と『グローバル
なマネジメント』が必要なのです。

 

実は、多くの日本企業はそのグローバル戦略を実行する基盤となる人材とマネジメントの
グローバル化になかなか取り組めていませんでした。そして現在になって、ようやくアクセルを
踏み始めた…と感じます。

 

◆◆アサヒビールがならって導入、サムスンの「地域専門家制度」◆◆

 

今や、日本の電機メーカーを抜いて世界で評価されているサムスン電子は、昔から人材の
グローバル化に余念なく取り組んでいます。
その取り組みの1つとして、世界各地での商品づくりやマーケティングに活かされている
制度が「地域専門家制度」です。毎年100~200名の選抜された社員が世界各地に派遣され、
その地域の言語や文化、ビジネス環境などを仕事そっちのけで学んでくるというミッション
を課されるというこの制度、1990年から実施しているというのだから驚きです。
その時蒔いた種がこの数年で豊かに実っていることが一目瞭然ですね。

 

サムスンのみならず、韓国の企業では積極的に海外で勝負できる人材の育成を行って
います。LGでは15年前から大学生を世界各地の現場を探訪させ、優秀な学生を採用
するというようなプログラムを行っていますし、ポスコも同様のプログラムを実施し、
世界を見据えた採用活動をしているのです。

 

こうした取組みをならってか、アサヒビールはグローバル・チャレンジャーズ・プログラム
と称して、現地の文化や言葉、商習慣を体得してくる選ばれし若手研修生10名を世界
各地に送り出しました。派遣期間は半年と短めですが、初めての試みであるためまずは
様子見というところでしょうか。海外事業に積極的に乗り出し始めているもののまだまだ
営業利益の9割以上が国内となっているアサヒビールだからこそ、これからが注目です。

 

◆◆グローバルな人材、グローバルな組織をつくるために◆◆

 

また、日本人がグローバル化していくと同時に、組織全体のグローバル化が求められて
います。国内外問わず優秀な人材を確保し、個性豊かな人材をチームとしてうまくまとめ
あげるマネジメントをしていかなければなりません。そのためには意思疎通を図るための
コミュニケーションは必要不可欠です。
2008年に日経ビジネスが行った読者アンケート調査で「外国人と日本人の意思疎通を促進
するために何か具体的な対策を取っているか」という問いに対して、「取っている」と答えたの
はわずか30%で少ない数値となっています。この結果から、おそらく多くの組織のマネジメン
トはまだグローバル化していないだろうと考えられると同時に、グローバル人材をマネジメント
できる管理職も育っていないとうかがえます。

 

GEやIBMなどといった世界的な先進企業では、世界共通の評価軸をもった人事制度が
なじんでいたり、世界各地の人材を集めて行うリーダーの育成などが積極的に行われていま
す。これらに共通しているのは、「コミュニケーション」を頻繁にとっているということです。
たとえば、従業員の意識調査で上司や人事とキャリアの棚卸をしたり目標設定・フィードバック
を行うことで人事考課に活かされていたり、各地から集まったリーダー候補が集まって議論
しあうことでその時々のチームと柔軟に働くことができるようになり、マネジメント能力もついて
くるのです。

 

いくら製品やビジネスモデルが秀逸でも、人が揃わなければ意味がありません。もともと日本
企業には「人を育てる文化」が備わっているはずです。しかし、本当に会社の強みになる人材
育成は上記にあげたような海外企業のほうが1歩も2歩も進んでいるような気がしませんか?
今や避けられないグローバル人材マネジメント、ステップアップしていきましょう。

 

 

参考
・「世界で戦えますか?」東洋経済2010年6月19日号
・IBM Global CEO Study 2010
・「日本企業のグローバル化、必要なのは語学力と意識改革 2010.9.20」Sankei Biz
・「加速するグローバル人材戦略」 IT media executive

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