Hot HR vol.18 – 2015年に向けた人材活用
2013/12/18(最終更新日:2021/11/12)
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5分で分かる最新人事トレンド
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2015年に日本の15歳~35歳の労働力人口は、2000年に比べ約25%減少する
と予測されています(リクルートワークス研究所調べ)。近い未来に人口
の4分の1がいなくなる、これは驚異的な数字です。この労働人口の減少傾
向は日本だけではなく、多くの先進国においても進んでいます。世界的な
人材獲得競争”War for Talent”の波に本格的に日本が飲み込まれるのも、
そう遠くはない未来です。
◆欧米でも始まった新卒採用◆
従来、欧米企業では即戦力になり能力のある中途を採用するのが一般的で、
新卒採用はほとんど行われていませんでした。職務経験がなくポテンシャ
ルが未知である新卒を雇用し、1から育てていくことは非効率的と考えられ
ていました。そのため欧米の学生はインターンシップで働き、経験を積ん
から、初めて能力を認められ雇用されるという就職方法を辿ってきました。
しかしその欧米企業ですら新卒採用を始めざるを得なくなってきました。
これは日本が新卒採用だけではまかなえず、中途採用を始めるようになっ
たのと同じく、それだけ人材獲得競争が熾烈になっているということを示
しています。
◆外国人、女性、高齢者を活かしきれない日本企業◆
現在、「労働力が足りない」と多くの企業が悩んでいます。しかし、まだ
多くの日本企業が活かしきれずにいる労働力マーケットがあります。それ
が「外国人、女性、高齢者」です。彼らを労働力としてどう活かしていく
ことができるか、そのことに日本企業の将来がかかっていると言っても過
言ではありません。
先にあげた先進国における労働人口推移の中で、例外的に労働人口が増え
ると予測されている国はありますが、特にアメリカ、カナダは外国人労働
者の受け入れを積極的に行っており、労働人口の増加が予測されます。
また、スウェーデンやノルウェーでは保育サービスや休暇制度、各種手当
の支給など国をあげて女性の労働人口拡大に取組んでいます。
高齢者の活用に対しては、多くの日本企業が定年延長制度を取り入れるな
どの形で取り組みを始めています。しかし、「本当の意味での高齢者活用」
つまり、「年齢に左右されない人材活用」にはまだまだ至っていないとい
うのが現状です。
「勤続年数の長い40歳以上の社員の給与が急に削減される」「昨日まで
第一線で働いていた能力のある人物が高齢であるために急にサポート役
になってしまう」など諸外国企業では考えられないことです。
「年齢でしか給与を決められない」「人材配置の基準がない」というのは
日本企業の大きな特徴です。これらの点について抜本的な改革が出来ない
限り、「外国人、女性、高齢者」の活用は難しいと言わざるを得ません。
◆職務を基準にした人事制度◆
欧米企業では“職務を基準にした人事制度”が一般的です。年齢・性別・
国籍・入社年数などに関わらず、同じ職務・能力の人材は同じ給料といっ
た具合に非常に明確です。
国際基準で見たボーダレスな人材活用を実現するためには、日本企業も職
務を基準にした人事制度を定着させる必要があります。それは、日本に定
着した「成果主義」という言葉で表現される、結果だけを見る評価報酬制
度とは根本から異なる考え方です。
この点を理解せずに「成果主義=日本企業にはなじまない」という印象が
日本で定着したことは、残念なことだと思います。日本の成果主義は「職
務定義」が曖昧なままに結果だけを評価しているという、世界的にも例を
見ない特殊な方法であり、制度だけが先行して導入されてしまいました。
それは、ひとえに「職務定義は日本のやり方にそれはそぐわない」という
考えによるものでした。
◆過去のやり方に固執していては成長できない◆
過去のやり方だけに固執して成長できる時代ではなくなってきました。今
一度、自社の現在、10年後、20年後の人材ポートフォリオを見直し、戦略
的な人事制度を構築する必要があると思います。
業界や職種によって年功序列型の人事制度が適しているケースもあります
し、弊社では「年功序列型の人事制度」を否定しているのではありません。
大切なことは各会社ごとに企業の理念や戦力に基づく最適な人事制度を構
築することです。
日本企業の人事戦略にはたくさん良い点があります。「チームワークを重
視する」「長期スパンで人材の育成を考える」などの日本特有の考え方は、
近年になって欧米企業から注目されているポイントです。しかし根本とな
る「年齢・性別・国籍によらない人事制度」がないままでは、何ら解決に
はなりません。
人材マーケットのグローバル化はどんどん広がっています。その労働力を
活かすことができるかどうかは、企業の人事戦略にかかっているのです。